ほぼ漫画業界コラム183 【作家と編集者の関係】

当たり前のことですが、社員や特殊な契約を結んでいない限り、漫画家にとって編集者は上司ではありません。編集者は請負仕事の窓口であり、クライアントでもあります。

もちろん、新人作家にとって経験豊富な担当編集者はメンターのような存在です。また、連載作家にとって担当編集者は、自分の作品を世に広めてくれるプロデューサーであり、その手腕によっては作品が生む価値が何倍にも変わる重要な人物です。

しかし、だからといって編集者が上司であるわけではありません。経験や力量の差から上下関係のようなものが生まれることはあるかもしれませんが、業務上はあくまで対等です。

ただ、仕事をしていると、担当編集者から理不尽に感じる修正依頼や、心ない指摘が来ることもあるでしょう。それを高圧的に感じ、上司のように思うこともあるかもしれません。

僕はこれまでたくさんの作家を担当してきましたし、現在も自分の会社で作家に修正依頼をすることがあります。また、逆に僕が作家として出版社に所属し、担当編集者から修正依頼を受けることもあります。どちらの立場も知った上で、担当編集者からの修正依頼について思うことがあります。

正直、ムカつきますね(笑)

「絵も話も作れない素人が何を言ってるんだ?」って思いませんか? しかも、修正依頼が具体的でなく、担当個人の趣味に過ぎないだろうと思える場合は、非常に不愉快です。イライラしますよね。もうこの人とは仕事したくない、他の場所に行こうかと思うこともあります。そんな気持ちを持つと、つい作家は担当編集者を上司だと思い込んで、その気持ちを飲み込もうとします。上司命令だと思えば、機械的に修正することへの心的負担がかなり減りますからね。

でも、これは間違いです。担当編集者は上司ではありません。もし作品を良くしたいのなら、納得できない修正はどんどん担当編集者に反論すべきです。担当編集者は仕事相手なので、仕事を通じてしかコミュニケーションが取れないのです。むしろ、修正依頼はコミュニケーションを取るチャンスなのです。

そもそも、担当編集者と作家が修正について揉める理由の99%は、互いのコミュニケーション不足から来るものです。よくよく担当編集者の話を聞いてみると、「要するにこの人が言いたいのはこういうことなんだよね、それなら確かに直した方がいいなあ」ということがよくあります。その時は、担当編集者の指摘をありがたく感じることもあります。

ただ、お互いのことをまだよくわからないうちにガチャガチャと仕事を進めてしまうと、修正などが発生した際に高い確率で揉めます。だから、担当編集者がついた場合、修正依頼が出たときはチャンスだと思って、揉めることを恐れずに担当編集者に食い下がることも大切です。特に初期のうちはそうすべきです。もっとも、毎回やっていると面倒くさい人だと思われるかもしれませんので、そのあたりはバランスを見ながらですね。

大抵の人は、しっかり話せば分かり合えます。ただし、そもそも話す時間をまったく設けてくれない担当編集者とは、無理にやり取りを続ける必要はありません(メールやLINEでしか対応してくれないなど)。そういう相手は諦めて他社に行きましょう。

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