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ほぼ漫画業界コラム175 【創作地獄】

推理漫画のシナリオを初めて描きました。令嬢漫画の世界観で探偵令嬢が愛や欲望が絡んだ様々な事件を解決するという企画です。令嬢漫画のトレンドというわけではなく、かなり挑戦的な作品ですが、僕らはそういう会社なので挑戦します。

企画ができた経緯としてはですね、最初に探偵令嬢というキャラクターができて、これは面白そうとなり、「じゃあ誰かミステリー書いてよ」と。誰も書けない? 書いたことない? じゃあ、俺が書くよ(どうぞどうぞ)と僕がシナリオを書くことになりました。

ミステリー原作に初挑戦です。そして、めちゃくちゃ苦労しました。死ぬほど社内でボツを喰らいました。ネームになった後も整合性がつかなかったり、矛盾が見つかったりで何度も何度もボツ。弊社は社長の僕でもボツが出るんです。

弊社は3人の編集長&僕の全員がOKでなければシナリオもネームも通りません。今回は本当にみんな厳しく、何度も言い争いになりました。過去一のボツの多さに企画を投げ出したくなることも何度もありました。矛盾を潰していくと今度は、キャラが死んだり世界観が死んだり感情ラインが死んだり。そもそも読み切りでミステリーとか無茶じゃねーかと逆ギレしたり。でももう作画の真和しま先生(@mnk_shima)も待たせちゃってるし逃げられない。

というか先生にも何度も何度もネーム修正させてしまいました。本当にごめんなさい。だって難しいんだもん! 本当にごめんなさい。ミステリーなんかに手を出した僕が悪いんです。ごめんなさい。

なんたる創作の苦しみ、ここが地獄か。誰か助けて…

あまりに辛くてとうとう、コナンの担当経験がある小学館の先輩編集者(天才)に相談しました。そして、青山剛昌先生(もちろん天才)の制作手法をお聞きして。犯人、証拠、動機の出し方見せ方なんかを教わりました。なるほどさすが。ありがとうございます。

あと、女性の有名編集者(天才)にもネーム添削していただきました。その節はありがとうございました。そしてようやく僕もスコーンと頭の中が繋がって、古畑任三郎を無限ループで見ている弊社、宮口第二編集部編集長も巻き込んでなんとか第3章までのシナリオができました。

で、色々あってようやく公開。シーモア様での本格的な露出は来月15日なんですが、様々な事情から昨日ひっそりと公開させていただきました。売れるといいなあ。まあ、このコラムは個別の作品の宣伝をするつもりはないんですが、それぐらい大変だったという事を言いたくて前置きが長くなりました。

要するに言いたいのはですね、色々なジャンルに挑戦した方がいいよと。

僕は少年漫画の編集者でしたし、クレジットに入るような立場で書いたのはツヨシが初めて。そこからメチャクチャ沢山のジャンルを書きました。男性向けから女性向けまでなんでも。毎回もがき苦しむ。僕は生粋の作家じゃありません。そもそも作家を志したこともありません。毎回誰かが書けないとか頼まれて書くことばかり。でも逃げないでやる。調べてやる。興味がなくても書く。その創作が次の創作に生きると信じて。いや生きなくてもいい、書くしかないんだよ!

だんだん怖いものがなくなります。色んなことに詳しくなります。根性が付きます。そんで全ジャンル、全メディア共通の創作のコツみたいなのが分かってくるようになりました。創作のコツというのはですね……

苦しみです。苦しんで生み出すしかないってこと。そういう話。赤ちゃん産むって苦しいんだよ。その覚悟を持つしかないって話。覚悟があっても苦しいもんは苦しいし、痛いもんは痛いんですけどね。

あとコラム2本書けば200コラム達成。あと2本頑張るぞ!


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