心理系大学院予備校選び②(河合塾編)
学費を払いこんでしまう前に
「心理系大学院予備校選び①」でお伝えしたように、心理系大学院受験予備校はそれほど選択肢はない。「心理学初心者の中高年を合格させてくれるところはあるのか」と、いくつかの予備校に連絡を取ったり、訪問したり、オンライン相談をしたり、動画サンプルを見たりした。
今にして思うと、院試自体の正体がわかっていないのに、“素人判断”で予備校に数十万の受講料を事前に振り込むというのは結構無茶だった。通常それくらいの大金の買い物であれば、ネットや知人などにいろいろ聞いてから意思決定をするが、ネットにはいい話しか書いていない広告しかなく、周りにも心理系大学院受験者は皆無だった。
鉄板は河合塾だと思っていたが
心理系大学院受験の鉄板と言えば、河合塾KALSだ。私は新宿校舎に行き、大学院受験ガイド入手のためにガイダンスの動画をDVDで見せてもらうことになった。DVD視聴ルームには、隣席と60cmくらいで間仕切りがある勉強机が30個ほど並んでいる。各机に古いDVDプレーヤーと液晶テレビ、そして使い古されたヘッドホンがあり、それでDVDを見る。手元は資料を置くだけで一杯になるくらいのスペース。この窮屈な閉所感が期待を萎えさせた。
河合塾KALSでは授業は教室での対面とWEB受講があり、対面は欠席してもDVDで補講を受けられる。それは便利でよいのだが、そのDVDを見るのがこの机な訳だ。うーん、ここでか…
その環境でミソがついた私は、ガイダンスの映像に対しても斜に構えて見てしまった。画像の質が悪い、講師が上から目線だ、など悪い点ばかり探してしまった。肝心の河合塾KALSのプログラムのクオリティを判断するリソースがその時の自分にはなかった。で、結局大学院ガイドだけもらって、その時の入塾は辞めた。
「統計学」のわかりやすさに衝撃
その後、私は別の予備校に入り受験勉強をする中で、「統計学」がまったく頭に入らず、予備校でもまったく教えてもらえず途方にくれていた。その時に、河合塾KALSの講座の体験視聴ができることを知った。受講を迷っている人は下記を是非見て欲しい。
この中の「統計学」の動画(1時間くらい)を見て、衝撃だった。「うわ、わかりやすい。これを最初から受けておけば良かったぁ…」と自分の判断の甘さを反省し、私は改めて河合塾のWEB講座で「統計学」を受けることにした。「統計学」は心理学初心者が必ずつまづく科目。いろいろな参考書を読んでみたが、どれも腑に落ちない。心理学と異なり、ストーリーがないので、用語ばかり頭に残るが、それがどうつながるかがまったくわからなかった。
それがこの講義ですべてつながった。現状の予備校に加えて¥12万の出費は痛いが、背に腹は代えられない。坂井先生の滑舌のいい講義に加え、河合塾KALS名物講師の宮川先生が作っている(彼のイラスト入り)テキストがさらにわかりやすさを補完してくれた。
河合塾KALSのお薦め度は
と、やはり鉄板に思える河合塾KALSだが、河合塾を多少経験したり、講座内容を一通り見た上での私の主観評価は以下の通りである。良い点は多いが、その分、物足りなさもある。すべてお任せにするのは疑問だ。
【○】
・講師の持つ情報量の多さ
過去問分析等を河合塾全体で実施していることもあり、
講義内で院試に出る・出ない、必要ある・ないは明確に言ってくれるのは心強い。ただ私は全講師を受講したわけではないので、全て講師が同じレベルとは限らない。
・講義の網羅性
院試に必要な受験科目や対策については、一通りカバーしてもらえるので、ワンストップ的には助かる。
・欠席やオンライン対応
欠席してもDVDで見ることはできる。また校舎に行かずともWEBだけでも受講ができる。
・定期的なアウトプット機会
毎回の講義ごとにテキストに練習問題と過去問が解答付で掲載されている。また定期的に模擬試験も実施している。
・合格者の体験記閲覧
合格者(年度はバラバラ・一部不合格者も含む)がアンケート的に答えた体験記が大学院(50校くらい)ごとにあり、勉強法や試験内容、面接の内容などの情報が入手できる。
オンラインで公開された「心理系大学院WEB進学フェア 『合格者座談会』」(2022年は3月実施)には社会人受験生を含む3名の方の勉強方法や試験の様子が、宮川先生のファシリテーションのもとで聞けて大変参考になる機会だった。
・オンラインでの情報公開
これは特に宮川先生の個人的な尽力にもよるが、YouTubeで無料動画を公開している(ただしこれまでは公認心理師系が多かった)。
【△】
・講義、テキストのわかりやすさ
「統計学」は私にとってはわかりやすかったし、基礎から学ぶ人にはオススメである。
「心理系英語」は「ヒルガード」(「勉強法」のところで説明予定)からの抜粋と過去問中心の授業で、英訳だけでなく、文法面や心理学についても触れてくれる。
「心理学概論(基礎心理学中心)」と「心理学(臨床心理学)」については、テキストが面白くない。院試に必要最低限の内容なため、頭に入れるべきことはわかるが、前後の話がないので、心理学自体を学問的に楽しいと感じられない。毎回用語の課題が出るが、2-3問なので、院試に必要な用語はとうていカバーできない。坂井先生の講義も統計に比べるとインパクトは感じない。
・過去問添削
解答がない過去問や小論文の添削は、受験生にとって重要な位置づけだ。「臨床心理学論述演習」「論述トレーニング」では課題に対する添削はしてくれるが、演習の範囲が限られるため、基本的な論述の練習にしかならない。個々の志望校に合わせた過去問の添削はしてもらえない。
・チューターへの相談制度
心理系チューターは3人(うち社会人卒業生は1名)いて、勉強法、志望校選び、大学院生活などをskypeや対面で相談できる。チューターによって異なるが週に数枠あり、事前予約制で30分程度。ただ、チューターはプロではないので、講師ほど情報はアップデートされていない。またメール等で気軽に相談もできない。
・受講費用
半年コースで¥30-40万、1年コースで¥50-60万くらいな感じ。単科コースは¥12-15万。パーフェクトコースでまとめて払えば安くなり、1講座あたりの単価は予備校の中でも安い。すべての講座が必要で、院試のために必要なことが網羅できるかは疑問。事実合格者体験記に「河合塾でやってないところが多数試験に出てるから、すべて河合塾任せではダメだ」と書いている合格者がいた。
【▲】
・過去問充実度
事務局に閲覧希望を出して、見せてもらえる。「いろいろな大学院の過去問最新版」と「大学院ごと複数年度版」と二種類ある。ただ最新版と言っても2年度前のもので、かつ大学院の数が少なくて、河合塾でこれしかないのか、とがっかりした。理由を聞いたところ、河合塾が大学院からは直接もらうことができないので、受講生頼みらしく、学校が限定されるようだ。
・校舎の環境
これは特に上記に書いたDVD試聴ルームのこと。また今の時代でも相変わらず資料閲覧、DVD貸し出しやチューター予約などの際に、役所のように申込み用紙を都度書く必要がある。
【注】上記の情報は2023年1月時点での個人的評価なので、事実と異なる場合はご容赦ください。また最新状況は直接
お問い合わせの上ご確認ください。