心理系大学院の過去問はお早めに
過去問を見る段階ではない?
大学時代の試験対策では、よく過去問を受験の2-3ヶ月前からやる、というのを見かける。それまでは土台を作っておいて、その確認として過去問をやって力試しや課題を見つける、というのが常套である。なので、私は受験の約1年前に予備校に入った際、予備校の棚に並んでいた過去問には一瞥こそすれ、「まだそういう段階ではない」と半年はろくに見ることはしなかった。そもそもどの大学院を志望校にするかも決めてなかったし、見たところでわかるわけがない、いや実のところ、過去問を見てしまってそのハードルの高さを知ることが怖かったのかもしれない。
ただ、受験が終わった今、社会人からの院試受験という点で見れば、早い段階から過去問を見ることをお薦めしたい。受験を意識した初期の段階から過去問を見た方がよいと感じる。見た段階でちんぷんかんぷんでもまったく構わない。というのも、大学院によって、同じ心理学でも英語でも試験内容がまったく異なるということを知ることが第一歩だからだ。そして、過去問を見ることによって、その後の試験勉強のアンテナを立てることができる。
試験科目自体は、どの大学院も大きくは変わらない。ざっくり言えば専門科目(心理学)と英語、あと小論文がある学校が一部、それと面接である。ただ、その中味がかなり異なる。例えば、心理学で言えば、選択問題中心か論述問題中心か、用語説明問題の有無、それぞれの問題数、解答文字数。また基礎心理学系か臨床心理学系、混成系、実験や研究、事例や統計学の問題が出題されるか否か。英語でも、長文全訳、下線部訳、穴埋め、要約かなど。
ちなみに小論文と聞いて、私は予備校に入った当初は、「自分の意見を書けばいい試験」と思っていて、「そいつは楽だな」と高をくくっていた。
これだけ違う出題内容(例:心理学)
入手することで変わる院試戦略
これをザッと見ただけでも、出題分野も形式も大きく違うのがわかると思う。私の場合、試験内容にこれだけ違いがあることは、志望校をなんとなく決め出した、半年くらい勉強した段階でようやくわかってきた。
院試に向けて心理学全般を学ぶことには違いはないのだが、論述問題対策と選択問題対策では勉強戦略が異なる。一言で論述と言っても、用語説明は1語あたり200字、簡単な論述は400字くらい、大問だと600-800字、小論文という名の専門知識をベースにした長文論述は800-1200字。用語説明は必要なキーワードは暗記する必要があるが、論述は知識に加え概念的な理解力が求められる。選択問題のほうが簡単そうに思われるが、幅が広く深い。公認心理師試験や臨床心理士試験などの資格試験と同レベルの問題も出る。
大学院によって独自性があるのは、出題者である教授の専門が異なるからである。なので、過去問だからと言って、あまり昔の問題を解いても、教授陣が変わると出題傾向が変わることがある。また特に公認心理師の資格ができて以降ここ数年は、資格試験を意識した問題も出るようになってきた。
私の場合、夏までは論述と用語対策をやっていたが、志望校が変わったため、夏以降は選択問題中心に変更して、勉強スタイルの変更を余儀なくされた。私の知人は、志望校を早めに設定したので、その大学院の問題に対応した予備校を選んだ。
過去問入手方法
まずは志望校を決める前段階でも過去問を集めることをオススメしたい。基本的にすべて無料なので、入手して損はない。予備校にある場合はよいが、予備校は大学院から直接入手できないので品揃えはあまりよくない。少し手間になるが関心のある大学院のホームページを片っ端から見て、サイト内で「大学院 過去問」と検索するなどして、過去問の入手方法を見つけて欲しい。しかし、これがまたアクセシビリティが低く不親切な大学院が多い。大学院のサイトから過去問タグを開いても、いつの間にか大学の過去問になってしまったりして、結局ないのかよ!と何度かイライラした。
基本的に①HP上でDL可(直近年度〜3年分)②HPから事務局へ申込み(パスワード送付や郵送希望など)③大学院で配付④大学院で閲覧のみ(コピー・撮影不可)⑤配付なし、など。④⑤のような学校もある一方、東洋英和のように10年以上の過去問をDLできるような学校もある。また東京成徳が解答付なのは珍しい。
過去問を早めに解くことのメリット
自分の研究したい内容がある程度決まっていて、志望校が早めに絞れたら、その大学院の過去問をなるべく数年分入手する。併せて似たスタイル(選択問題系・小論文系など)の大学院の問題を入手する。そして早い段階で参考書を見ながらでも実際の問題を解いてみることで、日常の勉強に適度な緊張感(焦りとも言う)が出て、理解度も深くなり、予備校の授業を聞く時の意識が高まる。
私の場合は、それまで広く浅く全般的になんとなく理解していた“点”が、過去問を解くことによって“線”になり、ようやく院試の土台ができた実感が生まれた。