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仕事の前にある2つのしごと

週末に一冊の本を読んだ。松浦弥太郎『松浦弥太郎の仕事術』(2010年3月 朝日新聞出版)。

著者は「暮しの手帖」の当時、編集長。わたしとほぼ同じ年代で、カバーの袖にある経歴をみると高校中退後、世界を股にユニークな足取りをされている。

そのなかに、あなたの仕事は? と聞かれたらこう答えているという一節があった。

第一の仕事は、健康管理。
第二の仕事は、生活を楽しむこと。
第三の仕事は、仕事をすること。

と。
なるほど、ふつうは「お仕事は?」と聞かれたら、彼の場合「雑誌の編集をしています」というのが答えだろうが、よい仕事をするためには、たしかに健康管理と生活そのものを楽しむことが欠かせない。
(苦境をバネに、ということもあるが、ずっと苦境続きでは折れてしまう。)

病気のときはもちろんのこと、体調がすぐれなければ、仕事に集中したり思ったように質の高い仕事をしたりすることはむずかしくなる。

そして、家庭や地域、また交友関係で良好な状態であることは言うまでもなく、趣味やそのときどきの興味関心に手を伸ばす余裕や感度がなければ、仕事に対しての切り替えがうまくいかない。あるいは創造性は、仕事そのものの周辺からやってくる。

良い仕事とは、仕事に向かったときに初めてできるわけではなく、その手前にこの大事な二つのしごとが控えている・・・そう思えば、ふだんの暮らしも毎日の仕事も一体となって感じられ、その一つひとつが自分を人生を高めるたいせつな一瞬一瞬であるように思えてくる。
ひいては、周りもしあわせにできる自分がそこにいる。

・・・これはなんだか、ホールネス wholeness 、全体性の話しに近づいてきたな。
そういえば、進化型マネジメントを説く<ティール組織>でも同様のことがうたわれている。

いずれにせよ、ふだんから身体の声に耳を傾けつつ、好奇心のアンテナを立てて日頃の生活を楽しめば、おのずと良い仕事ができるという、最近声高にさけばれるワークライフバランスにどうも違和感ぬぐえないわたしにとっては、我が意を得たりという一節であった。

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