ボディタイプやサイズ、ライバルから考えたシビックとはどんな車なのか
誕生50周年のホンダの看板車、シビック
1972年に初代が登場したホンダ・シビック、モデルチェンジを繰り返しながら生産が続けられ2022年に誕生50周年を迎えました。
先日の7月1日には50周年を記念するイベント開催と同時に e:HEV 車が投入されたことでも、話題になった車種となります。
またシビックは私自身も過去に8代目・FD2のタイプRを所有し乗っていたため、数あるホンダ車の中でも少し特別な感情を持っている車でもあります。
しかしシビックはポジティブな意見だけではなく、文句についても多く見られる車種のようにも感じます。
ここ数年のシビックに対してネガティブなコメントをする人の意見を纏めると大抵の場合
「コンパクト(5ナンバーサイズ)ボディの3/5ドアハッチバック」
「新車で200万円程度で購入出来る庶民的な楽しい車」
に行き着きます。
この手の主張はYahooのコメント欄やTwitterにも現れる意見であり、それを見る度に「現実見ろ」や「買わないのに文句は一丁前」といった形で的はずれなアイデアであると感じますし、なぜその価格帯の車を候補としていかないのか疑問に感じます。
これらの意見に付け加えて「(シビックに限らず他メーカーの)新車に買わないのに文句つける人」や「不満ばっかり垂れるオタク&無免キッズ」について多くの意見が飛び交うことがありますが、ここでは
・「コンパクト(5ナンバーサイズ)ボディの3/5ドアハッチバック」
・「新車で200万円程度で購入出来る庶民的な楽しい車」
といった文句が今のシビックにはなぜ的はずれなのかといった点について、自分なりに3つの手がかりから考えていきたいと思います。
手がかり❶.「シビック=ハッチバック」は先入観という考察
まず初めに考えていくのは、シビックという車はハッチバックという意見にかなり思い込みが入ったものなのではないか?というものです。
なぜならシビックにはハッチバックの他に下記のこれだけのボディタイプが存在する/過去にしていたからです。
シビックには
・セダン
・ステーションワゴン/ライトバン
・クーペ
・オープンボディ
・SUVタイプ
、と多くの派生したボディタイプがあることが分かります。
軽くですが簡潔に各ボディタイプにも触れていきます。
・セダン
シビックのセダンですが、その歴史は古く初代が登場した1972年からラインナップされていました。
日本では不振により2020年に10代目(FC1型)をもって生産・販売終了となっていますが、11代目(現行型)ではホンダのアメリカ法人によってコンセプトカーがハッチバックに先駆けて発表されていることから、アメリカでのシビックセダン人気の高さが伺えます。
・ステーションワゴン/ライトバン
続いてステーションワゴン/ライトバンのボディですがこちらの歴史も古く、初代からライトバンとしてラインナップされていました。
2代目をベースにしたシビックカントリーではボディサイドに木目調パネルを施すなど、アメ車風の雰囲気を醸し出したユニークな車両でもありました。
近年では欧州市場限定でシビックツアラーが販売されていましたが、現在では残念ながら生産終了となっています。
・クーペ
クーペについてですが、こちらは1991年登場の5代目(EG型)、通称「スポーツシビック」からラインナップされた形状です。
しかし日本での販売は振るわなかったようで2000年登場の3代目(EM型)からは北米市場専売の車種となり、それも2021年を持って歴史に終止符を打っています。
・オープンボディ
オープンボディについてですが、「ホンダ・シビック デルソル」という名称で北米にて販売されていたものです。
「CR-X デルソルの間違いじゃないの?」という声が聞こえてきそうですが、それは日本国内の名称であり北米では上記のシビックネームで販売されていました。
スイッチ操作で開閉可能な電動オープンルーフという、高級車に搭載されるような機構をコンパクトカーに搭載するという意欲的な車両ですが、大きな人気を獲得することは出来ず迷車扱いされてしまっていることに個人的には哀愁を感じます。
・SUVタイプ
最後にSUVタイプですが、先に触れたステーションワゴンのグレードにカンガルーバーなどのRV風装備を追加した「ビーグル」というグレードがありました。
この時期にホンダが販売していたOEM車同様、CR-Vといった本格的なSUVが登場するまでのつなぎ的存在でしたが、人気を博すなどその役割は十分に果たしたと言えるでしょう。
ここまでハッチバック以外の5つのシビックのボディタイプについて記してきましたが、これらのラインナップや歴史からその形状の多様さは分かると思います。
シビックのハッチバックは初代タイプR(EK9)が登場する以前からも、グループAといったレースで華々しい活躍をしていたことなどからコンパクトスポーツ車の扱いをされているのではないかと考えられます。
1990年代までのシビックを知らない世代(私を含)においても、前述のレースにおける活躍が特集された雑誌・ネット記事に触れていること、『頭文字D』や『ナニワトモアレ』といった漫画・アニメでの描写がシビックに抱く印象の由来だと考えられますが、それに端を発する「シビック=ハッチバック」というのはある種のステレオタイプではないのでしょうか。
手がかり❷.ライバル車との比較
手がかり❶.ではシビックのボディについて考えてきました。
ここからはボディのサイズについて考えていこうと思います。
よくシビックのサイズについて、5ナンバーサイズへ異常に拘る方を見かけることがあります。
5ナンバーサイズとは全長が4700mm以下、全幅が1700mm以下のサイズであり、そこから排気量によっては黄色のナンバーの軽自動車にも分類されていきます。
シビックでいえば7代目(EU型)までが5ナンバーのボディサイズとなっており、8代目は全長4540mm × 全幅
1750-1755mmという3ナンバーサイズに分類されることになります。
この代のシビック以降、「シビックはデカくなった」「昔のコンパクトカーとは違う」「こんなのはシビックじゃない」といった1部難癖じみた不満に繋がっているようです。
そこで深掘りしたいことはサイズが大きくなっていったのはシビックだけなのか?という点です。
この手がかりではシビックのライバル車種とされている車と比較しながら考察していきます。
まずヒントとしたライバル車はトヨタ・カローラです。
カローラは1966年より、当時販売されていたパブリカとコロナの中間に位置する車として登場して以降、グローバル展開されるトヨタの世界戦略車です。
多くのボディタイプや派生車種、高性能スポーツグレードも展開される点がシビックと共通している点として考えられます。
さてこの車、初代のボディサイズは全長3845mm × 全幅
1485mmという大きさでした。
では現行型(12代目)の大きさはどうかと言えば、全長
4495mm(海外仕様は4630mm) × 全幅1745mm(海外仕様は1790mm)となっています。
初代に比べて大型化しただけではなく、海外仕様車を基準とすれば現行型(FL1)シビックの全長4550mm×全幅1800mmとほぼ同サイズです。
つまりカローラもシビック同様モデルチェンジを重ねる毎に、サイズが大型化していった車なのです。
では海外の同クラスの車と比べた場合はどうでしょうか?
比較対象として、高性能スポーツグレードでニュルンブルクリンク北コースのラップタイムを競い合ったことや同セグメントに属していることから、フォルクスワーゲン・ゴルフとルノー・メガーヌを出してみます。
フォルクスワーゲン・ゴルフについてですが、上記のフォルクスワーゲンディーラーのブログから文章を抜粋させて頂きますと
「4代目ゴルフは1997年登場しました。翌年98年日本販売が開始されました。全長は4155mm、そして全幅がついに1700mmを超え1735mmと、日本において3ナンバーサイズとなりました。」
とあり、この代を境としてゴルフの日本国内基準におけるサイズに大きな変化が訪れたことになります。
またルノー・メガーヌは初代から全長4130-4165mm × 全幅1699-1720mmという5ナンバーサイズからは少々大きいものですが、現行型の全長4395mm(ハッチバック) × 全幅1815mmと比較すると、こちらも初代と比べて大型化していることが分かるでしょう。
車がモデルチェンジごとに大型化することの理由に「安全性の向上」や「スタイリングの追求」等々様々な理由があり、それはシビックに限らず同セグメントの車種や他の車種にも共通していることなのです。
そしてここで最後に触れておきたいのは、ここで名前を挙げた4メーカーのうちどれにも、元々のポジションを引き継いだ車が存在しているのです。
ホンダでは2001年に登場し、サイズに大きな変化がなく進化を続けているフィットがかつてのシビックの位置にいます。
トヨタにはヤリス、そしてハイブリッドのアクアがラインナップされています。
輸入車2メーカーについてもフォルクスワーゲンにはポロ、ルノーにはルーテシアがラインナップされ、それぞれゴルフとメガーヌのポジションを引き継いでいると考えられるでしょう。
つまりシビックが大きくなっていってもかつてのサイズに位置する車は存在しており、ホンダのコンパクトカーが欲しい方はそちらを選択して購入すれば良いだけの話ということです。
手がかり❸.200万円台の楽しい車とは
最後に ''新車で200万円程度かそれ以下で購入出来る楽しい車'' について考えていきます。
現状のホンダのラインナップで考えた場合は、N-ONEのRSグレード、そして2022年秋のマイナーチェンジで登場するフィット RSは挙げることが出来るのではないでしょうか。
N-ONE RSは6MTも搭載される走りを楽しめる軽自動車であり、希望小売価格上では200万円を切っています。
フィット RSについてはCVTのみとなる可能性が有力であるため1部の方はそれを理由に敬遠するかもしれませんし、まだ新情報が解禁されていないため価格はあくまで推測となります。
しかしRSの前任にあたるNESSのグレードの価格が e:HEV を含めて187.7万円〜242.5万円であることを考えれば、グレードやオプション選択によっては両車ともに1部のオタクが求める条件である「200万円代前半のコンパクトスポーツカー」になるのではないでしょうか?
ここまではホンダが好きでこだわりたい方向けに、同社の ''コンパクトで楽しめる車'' について考えました。
それではホンダ以外の他社にも目を向けた場合どうなるでしょうか
まずはトヨタですが、同社のコンパクトカーであるヤリスにカップカーというワンメイクレース仕様のグレードが用意されています。
価格は217.1万円〜238万円であり、200万円代前半という条件から考えると少し割高に感じられるでしょう。
しかし最大の特徴として新車の状態で既に6点式ロールケージに専用チューニングサスペンションセット、6点式シートベルト等が装備されていることを考えればコストパフォーマンスは良いと思われます。
また実用性もあるようでベストカーの特集によれば「カップカーを家族4人のファミリーで使用する人もいる」とのことであり、日常使いにも投入できる車とされています。
またスズキが生産するスイフトスポーツですが、こちらも全長3840mm × 全幅1695mmという車体に6速MTを選択可能という、かつてのシビックを彷彿とさせるコンパクトカーとなっています。
970kgという1tを切る軽い車重を活かした走りは高い評価を受けています。
このようにホンダに縛ってもそうでなくても、''200万円代前半で買えるコンパクトスポーツカー'' は候補がいくつも存在しているのです。
他にもボディタイプや駆動方式に執着せず、ハイブリッド車や軽トラックなどを使って走りやモータースポーツを楽しむ方もいますが、それについては上に添付した『今、手頃なスポーツカーの新車が出てこないのはなぜなのか』という記事に別視点かつ丁寧な情報が纏められているので、是非とも読んでいただきたいものとなっています。
つまりホンダのラインナップ上にも他者の製品にも、ほかのボディタイプ・駆動方式を加えても ''200万円代前半で購入可能なスポーツカー'' は存在しているのにも関わらず、シビックの名前に固執してお気持ち表明するのはある種の我儘なのではないかと考えます。
シビックらしさ、とはなにか
最後の〆として、シビックらしさとは何なのかについて個人的に考えたいと思います。
ここまでの文句について調べる中で、シビックに対して求めている/求められているイメージは「走りが楽しい車」の一言に集約出来るものです。
では現行型(FL1&FL3)のシビックはどうなのでしょうか
シビックは2代目から7代目モデルまでホンダが公式に定めたキャッチコピーがあり、現行型では久々にそのキャッチコピーが復活しました。
その通称は ''爽快シビック'' とされています。
そして様々な方のレビューに目を通す限り、''爽快シビック'' の名前負けしない、質の高く楽しい走りをドライバーに提供しているようです。
CVTの方は以前私も試乗させて頂きましたが、加速・ハンドリングともに追従性は高く思うように操ることが出来る車という好感を抱きました。
先日発売開始となった e:HEV についても高い評価を受けており、私も試乗/レンタカーで1度その乗り味を体験してみたいと感じています。
上記に参考資料として提示したレビューと私自身の試乗体験から、モデルチェンジを重ねても、ボディサイズが大きくなってもシビックは楽しい走りをしてくれる車でありそれは不変のものなのではないでしょうか?
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