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わたしと棚田じじい|米のまわりの人

<話し手>
新潟県佐渡市 岩首
イラストレーター おがわあつこ

佐渡島(さどがしま)は、新潟県の北側に浮かぶ小さな島です。人口は10年前と比べると5000人減って、今では約4万5000人。でも、実は移住者が年間500人もいて、わたしもその一人です。

わたしが棚田じじいと出会ったのは、東京にある多摩美術大学の2年生だった頃。サークルの同級生と一緒に『岩首竹灯りの集い』というお祭りに行こうと、初めて佐渡島に上陸したとき、初めて出会った佐渡人(さどじん)が岩首昇竜棚田(いわくびしょうりゅうたなだ)で米を作っている棚田じじいでした。

じじいは初対面でもよくしゃべるし、歳の離れた学生相手にも全く遠慮するところがなくて、「こんな人がいるんだ!」と衝撃を受けました。そのあと、じじいの作る米を食べて、「日本には、こんなに美味しいお米があるんだ!」と、2倍の衝撃を受けました。

旧岩首小学校を活用した交流拠点『岩首談義所(※2023年に閉館)』にみんなで寝泊まりして、お祭りのお手伝いをして、夜はみんなで飲んで、岩首の海を眺めて、岩首昇竜棚田を眺めて過ごしているうちに、わたしは岩首の人のこと、ここにしかない雰囲気や、風景が大好きになっていました。

それから、何度も岩首に「帰って」くるようになりました。わたしは東京で暮らしていたけど、棚田じじいやみんなが「あつこ、おかえり」と言ってくれるから、佐渡に来るときはいつでも帰ってくる気持ちになれたんです。

じじいは他にはいないキャラクターだと思います。裏表が全然なくて、物言いもはっきりめ。学生たちはみんな惹かれてしまうのか、じじいと長年交流を持っている学生サークルは多いんです。毎年、いろんなサークルの学生が、棚田やお祭りの手伝いをして、ここでしかできない体験をして帰っていく。異文化交流や離島交流系のサークルが多いですが、当時のわたしは多摩美の『アフリカ民族楽器部』に所属していました。

なんで佐渡島に行くことになったんだろう? たまたまだったんだと思いますが、棚田じじいにも出会えたし、佐渡島の大好きなお祭りや、島の文化を知ることもできて……ついに2020年に佐渡島に移住。わたしの人生のターニングポイントになりました。(笑)

佐渡島が大好きになったわたしは、イラストレーターとしても、岩首昇竜棚田や佐渡島の野生のトキをテーマにしたイラストやグッズをいくつも制作しました。岩首昇竜棚田の展望台から眺めたときに見える、人の手による手入れが行き届いた田んぼ、その合間を白い小さな軽トラックが登ってくる様子、その向こうに広がる海……いろんな良いところをかわいく思いながら、イラストに表現しています。気軽に眺めて、クスッと笑って楽しんでもらえたら嬉しいです。

そして、わたしの作品を、岩首昇竜棚田のお米を食べて感動したり、佐渡島に遊びに来てもらうきっかけや、佐渡島を思い出すきっかけにしてもらえたら嬉しいです。

わたしも含め、佐渡島の人はお祭りが大好き。お祭りやアウトドアや自然が好きな方は、きっと佐渡島が好きなはず。ぜひ、新潟からフェリーに乗って、佐渡に「会い」に来てください!


米と米のまわりを伝える活動
『cometen』 owner main editor
優 / yu

<編集後記>
おがわさんが描いた、岩首昇竜棚田のイラスト……こんもりとした田んぼが連なる、なんともかわいらしいタッチで描かれていますが、実際に岩首の展望台に登って見下ろした棚田も、なんだかかわいい。くの字を描いてうねる道の間に連なる、丸っこい田んぼ。その一つ一つに人の手がかけられて、スクスクと育っている様子に、自然と「かわいい」という気持ちが湧き起こってくるのかもしれません。
イラストの作者のおがわさんが岩首に感じている、あったかい、ふるさとのような愛着。岩首昇竜棚田のことがより身近で、ずっと続いてほしい場所に思えてきます。

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