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映画(ホラー以外)

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明滅する光と闇の記憶装置に関するてきとうな感想を、それっぽく書いているだけです。
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#アニメ

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』 絶望の時代には、それ以上の絶望を

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(2012年/庵野秀明、摩砂雪、前田真宏、鶴巻和哉) 【あらすじ】 目が覚めたらみんなめっちゃ怖い 新エヴァで唯一繰り返し観ているほど好きなのが『Q』。その理由はまず、旧エヴァ特有の病み感、真っ黒なドロドロ感、居心地の悪さみたいな鬱屈したヤバイ感覚に、本作が最も近いからなのだと思う。 あともう一つの理由としては、単純に作画のレベルがシリーズで最も高い。死ぬほど画が美しいアニメーション。 『破』でせっかく新しいことをしたのに結局鬱アニメに戻

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』 この時は、まさか完結まで14年掛かるとは思いもしなかったよ、綾波ィ!

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(2007年/庵野秀明、摩砂雪、鶴巻和哉) 【あらすじ】 エヴァの作画が変わる 『序』に関しては、めちゃくちゃグラフィックの美しさが向上したのは確かだけれど、テレビシリーズ及びヤシマ作戦までの総集編という印象が個人的にはどうしても強かった。 仮にも、旧エヴァを認知していない人にとって、『序』は一本の映画として歪な作品になっているはずだよなー、くらいには思っていた(ストーリーテリングとして)。劇場鑑賞時も「おさらいあざっす、で、破の予告早く

『劇場版 シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』 モノは買うな!作れ!そして家族も作れ!という超過激クリエイト主義の怪作

『劇場版 シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』(2023年/小中和哉) 【あらすじ】 ミッドサマーみたいな村で娘がお母さんへのプレゼントを熟考する 激DIY創作推奨映画かつ反資本主義映画。でありながら、ほとんど宗教的とも揶揄できるファミリー大賛美映画でもある。クライマックスなんか統一教会かよと感じた(褒めています)。結婚最高、夫婦最高、家庭最高、親最高、子は親を崇めよ、そんな思想で埋め尽くされたシルバニア村は必ず「二人身」以上のコミュニティとして機能していて、夫

『バンビ』 生存本能というバイオレンスと、とんすけというチャーミング

『バンビ』(1942年/デイヴィッド・ハンド) 【あらすじ】 森は楽しいなあー、みんな優しいなあー、とか言ってたら戦うことになる 寓話的バイオレンス映画。ひとりの少年が外界から侵入してきた理不尽な暴力に直面することによって、暴力を獲得し、やがては力の象徴として君臨するまでの話。 それこそが自然界そのものであり、同時に社会もそんなもんだよなという。 森の動物たちが繁殖期になり、至る所でフェロモンもんもん、交尾の地と化すシークエンスは、オスの魅力=強さへと帰結する。 セック