旅する日本語

「東に向かおう。行けるところまでずっと。今日のミッションだ。」
つむぎはそう言うと、自転車に乗って学校の裏門から飛び出した。かのこも置いて行かれないように、必死で自転車のペダルを漕いだ。ギラギラとした太陽が照りつけるような昼過ぎ、2人は自転車を速く走らせ、ひたすら我慢比べみたいに東へと進んだ。2時間程かかって、いくつか山道を越えたところで海が現れた。そこが目的地だったと言わんばかりに2人は騒いだ。「海だー。海に来たぞー。」とつむぎが大声で言ってかのこの方を振り返り、くしゃっとした笑顔を見せた。「やっほーい。海だー。」なんとかついて来たかのこも嬉しくなり右の拳を天に向けて差し出し、そう言った。2人は自転車のペダルを漕がずに勢いよく海沿いの坂道を下って行った。日は少し傾き、気持ちの良い風が吹き出す汗を和らげた。
それはいつかの夏の日、少し遠い街へのショートトリップだった。

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