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【育児エッセイ】小さな背中はタイムマシーン

「まもなく離陸します」
女性のアナウンスに続いて、ヒュイーンとモーター音が響く。

赤と青のランプを交互に点滅させながら、飛行機は少しずつスピードをあげて…壁に激突した。

壁に向かってなお走り続ける飛行機をみて、リビングの端っこで遊んでいた1歳半の息子がキヤッキャと笑っている。

義理の母も、自分が買い与えた飛行機のおもちゃで楽しそうに遊ぶ孫の背中をみて、微笑んでいる。

妻の実家は、僕の住む家から徒歩5分のところにあるから、土日のどちらかは僕も含めて遊びにいくことが多い。
おそらく孫のいる家の多くがそうであるように、妻の実家もたくさんのおもちゃで溢れている。
さらに、妻の実家は二世帯だから、僕の息子からみてひいじいちゃん、ひいばあちゃんまでいるので、単純計算すると2倍の量のおもちゃやら、服やらがある。

たくさん遊ぶものがあって、たくさん遊んでくれる人がいて、息子はとても楽しそうだし、なにより僕たち親としても、多少くつろぎながら息子を遠くから眺めることもできるので、本当にありがたい。

ひとり遊びができるようになった息子の背中をみて、大きくなったなぁと、しみじみ思う。

そして、こんな姿を見られるのも、いまだけなんだろうなぁとも思う。

おそらく、どこで覚えてきたかわからない言葉をしゃべり散らかすのはもうすぐだ。
幼稚園で友達をつくるのも、学校で教科書をめくるのも、恋人ができたりするのも、気づけば一瞬のうちに過ぎ去っていくんだろう。

戻りたくても、戻れない。

制服を着た数年後の息子に「頼むからハイハイしてくれ!」と頼んでも、無視されるか心配されるかのどちらかだ。
抱っこで腕が筋肉痛になった日々も、手をつないで歩いた日々も、過ぎてしまえばもう戻れないんである。

いや、まてよ。ひとつだけあるのか?
あるとすれば、それは「孫」だ。
孫は、ハイハイするし、抱っこさせてくれるし、手をつないでくれる。
それだけじゃない。自分の子どもではできなかったことも叶えられるチャンスなのだ。
はじめての子育てにはたくさんの後悔があるだろう。
数え切れないほどの「あのときこうすればよかった」が、そこにはあるはずだ。
それらを叶えさせてくれる。

ひととおり子育てを経験して、レベルMAX最強かあちゃんとして、取り戻したかったあの日々を手にすることができる。
孫はタイムマシーンなのかもしれない。

妻の実家に隙間なく並べられたおもちゃや、クローゼットから溢れた子供服、そして、小さな背中への微笑みが、この理論を裏付ける証拠であると、僕には思える。

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