ウマ娘『対落雷二層型尻尾防衛モード』―ミホノブルボン
雷が苦手で苦手で仕方がない、というウマ娘が一人いる。彼女は大雨が降り出すとそれだけで不安そうに空を眺め、そして雷が落ちると慌てて尻尾を胸に抱え込むのだ。曰く幼少期に「雷は尻尾を奪っていくぞ」と冗談を言われたのが原因らしいが、その真偽は不明である。
ある日トレーナーと二人でミーティングを行っていると、突然に雷の音が鳴り響いた。近くもないが遠くもない…程度の雷ではあったが、しかし彼女にとっては十分に恐ろしい一撃である。やや怯えた声で「落雷を確認。『尻尾防衛モード』に移行します」と宣言し、尻尾を股と腕で抱え始めてしまった。苦笑いを浮かべてカーテンを閉めるトレーナーを余所に、彼女は必死に尻尾を守る。
そんなこんなでどうにか続いていた膠着状態だが、しかし雷がトレセン学園の目の前に落ちることで、ついに恐怖が一線を越えた。即ち『尻尾防衛モード』で耐えられる限界を迎えたのだ。彼女はビクッと身体を大きく跳ねさせると同時、「ッ!…『二層型防衛姿勢』に変更します。マスター、私を尻尾ごと前方から抱きしめてください。早く」と謎の作戦を決行する。トレーナーはポカンと首を傾げるが、「早くしてください…ッ!」という彼女らしからぬ本気の勢いに押し負け、とりあえず抱きしめることにした。
大好きなトレーナーに抱きしめられたことで、『…?心拍数と体温の上昇を確認』と恋する乙女的な体調変化を感じ取るものの、あまりにも恋愛経験が不足していたため『もしやこれが尻尾喪失の兆候…っ!』と的外れな結論を出してしまい、結果「マスター、もっと強く抱いてください!防衛レベルの向上を希望します!!」と叫んでしまう致命的エラーが発生すると共に、「も、もっと強く?了解」とパニくるトレーナーのせいで、心拍数と体温がさらに上昇し「まだ不足です!もっとぎゅっとしてください!!」と無限ループバグに突入するミホノブルボン。