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農業用無人作業車R150による薬剤防除実証

一般的な果樹園での防除作業を見てみましょう

農作物を病虫害から守るため、農薬の散布はとても重要となりますが、特に果樹栽培では、この作業が一番きついと言われています。

一般の果樹農家でも多く使用されているのが、写真に写っているスピードスプレーヤ(SS)という機械。

この写真の機種では、操縦席がキャビンで覆われていますが、一般的には操縦席がむき出しになっている機種が多く、農薬の被爆が懸念されるため、真夏でも合羽・マスク・ゴーグルの3点セットが欠かせません。

重装備で長時間に渡る作業を、およそ2週間に1回ほどの頻度で、年間で約12回も実施しなければならず、きついと言われる所以はここにあります。

また、機械の価格も高額なほか、散布動力が過大な場合には、農薬のロスが生じるだけでなく、対象エリア外まで農薬が飛び散ってしまうといった課題もあります。



農業用無人作業車R150による実証を行いました!

秋田県果樹試験場では、防除作業の省力化を図るため、スマート農業技術開発・実証プロジェクトの一環として、XAG 社が開発した農業用無人作業車R150の作業実証を行いました。

この機械は、農薬散布作業をスマート制御し、正確で効率的な散布を無人・自動で実行できます。

農業シーン向けに設計されており、複雑な地形でも四輪駆動で力強く走行でき、傾斜15度の傾斜地まで作業が可能です。また、タンクの容量は100Lで、防水・防塵性能も高く、メンテナンスも簡単に行えます。

頑丈なスチールフレームで高耐久性も実現しており、機体のデザインもかっこ良く、鮮やかな赤色のボディが果樹園にとても映えていました!



現場ニーズに合わせた複数の作業モードを実装!

R150の操縦に当たっては、それぞれの現場ニーズに合わせた作業モードが選択できます。

その1 リモコンモード

リモコンを使ってR150を手動で操縦するモードで、初心者でも直感的で簡単に操作ができます。

その2 ABモード

A地点とB地点の2か所を地点登録することで、AB間を自動で往復走行でき、反復動作が必要な際には便利な機能です。

その3 追随モード

R150はリモコンの位置を感知し、オペレーターが移動しても自動で追随することができ、収穫作業等で役立つ機能です。また、オペレーターと2.5mの距離を保つようにプログラムされており、オペレーターが立ち止まるとR150も自動で停止してくれます。

その4 ルートモード

アプリで事前に作業ルートをプログラムし完全自律走行を行うこともできます。

衛星からの電波を受信して自動走行を行うので、曇天・雨天の影響を受けることがありますが、高精度で位置情報を測定できるRTK測位を利用することで、好天の時には誤差数センチ単位の正確な走行が可能です。





農薬の散布作業を紹介します!~ぶどう編~

続いて、試験場のぶどう園で実施した防除作業の実証の様子を紹介します。

ぶどう棚全体に散布できるよう、アプリで事前に散布角度等を設定して作業を開始します。最大で、上下には200度、左右には290度まで散布機を回転させることができます。

オペレータ-は、R150を自動走行させて離れた場所から作業状況を見守ります。

ジャイロセンサが内蔵されているので、現場条件が悪くても、自動的に散布角度を維持することが可能です。

また、農薬の被爆を心配せず安全に、そして軽装で快適な環境で作業が可能となります。

散布圧力はスピードスプレーヤより弱いため、ぶどうの葉で散布した薬剤がブロックされ、散布ムラが生じてしまうことが、今回の実証で分かりました。



農薬の散布作業を紹介します!~りんご編~

場所を変えて、試験場のりんご園でも作業実証を行いました。

散布圧力がスピードスプレーヤよりも弱いので片側ずつの作業となりますが、りんごの樹形や樹園地の配置に合わせて、ぶどう園の時と散布角度を変更してスタートさせました。

搭載している高速気流スプレーシステムで薬液を微粒化しつつ、現場に応じて「ポイント散布」と「全方位散布」を使い分けることができ、均一・定量・正確で、なおかつ、農薬量を節約した効率的な散布が期待されます。



ほかにも様々なシーンで活躍が期待されます!

散布作業のほかにも、荷物の運搬や牽引も無人で行うことができ、運搬であれば150kgまで、牽引であれば1tまで対応しています。

また、バッテリーを動力としていて環境に優しいのも特徴です。2本のバッテリーを搭載しており、約15分でフル充電し、最大約4時間作業を継続できます。

R150は、女性や初心者でも1人で簡単に操作が可能で、防除だけでなく様々な活用の可能性が広がる革新的な無人作業車です。

果樹試験場では、令和5年度には追随モードを利用し、おうとう・ぶどうの収穫物運搬の実証を行うなど、R150のようなスマート農業機械の生産現場への普及を目指していきます。




秋田県農林水産部公式ウェブサイト「こまちチャンネル」では、秋田県の農林水産業のフレッシュな情報を随時発信していますので、ぜひチェックしてみてください!

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