供養:僕の体験した怖い話 #2

今まで他の名義で書いていたブログを畳むことにしたので
(改名してリサイクルすることにしたので)
個人的に、消したくない記事を移動するやつ

* * *

ホラーものには物心ついた頃から興味があったけれども
残念なことに、僕自身には霊感がない。

幼い頃、夜トイレに目を覚まして寝室を出たら、二階に上がる階段の途中が妙に明るくて、そこに人影が二つ並んでいるのが見えたとか。
(たぶん、寝ぼけていただけ)

風邪をひいて寝込んでいた夜に、並んだふたつの目玉に足と羽が生えたような生き物が何匹も寝室を飛び回っているのを見たとか。
(それはどう考えても、ただの悪い夢)

あとは、何日かおきに同じ夢を見て、少しずつ話が展開していく・・・
なんてこともあったけれども。

12歳になるまでに体験した不思議な出来事が、せいぜい
そんな程度だったので
自分には、そういったセンスが全くないのだと
子どもながらに思っていた。

しかし、他の誰かと一緒に体験をした時には
自分自身には霊感がないと思っていても
「やはり、そういうものなのか」と妙に納得してしまう。

中学生の時の話。

ある日、同じ部活の友人たちとIちゃんという女の子の家に遊びに行った。
Iちゃんはひとりっ子で、お母さんと二人暮らしをしている。

僕たちの中では、わりと背格好のいい方で、メイクやファッションに詳しいイケてるギャルの一人だった。普段から“霊感がある”という話をしていて、部活仲間でこっくりさんをやった時にも
男の人(兵隊さん?)の足だけが教室の隅にいるのが見えるとか、
何かにひっぱられたり呼ばれたりするとか・・・
そういうようなことを言っていた。
それくらいのことは、同年代の子どもの中では"あるある"だったので、
Iちゃんの言っていることは、嘘だとも思っていなかったけれど
あまり信じてもいなかった。

みんなで家に遊びに行った時には、ただ好きな男の子や先生の話をしたり、
ファッション誌を見ながらあれこれ言い合ったりしていたと思う。

帰る間際まで、何も不思議なことはなかった。

帰る直前になって誰かが、Iちゃんの部屋にある縦型の姿見の下の方に
赤ちゃんがつけたような小さい手あとを発見した。

床から20cmくらいの高さにあったと思う。
小さい、でも明らかに人間の手の形の白っぽいあとがあった。
(そんな小さなサイズの手の持ち主は、その場にいなかった。)

Iちゃんは「ああ、またついてる」と言っていた。
聞けば、最近よくこの小さな手あとが鏡についているのだという。

僕たちが驚いたのは、それを発見する以前に
それぞれが、鏡のキレイな状態を見ていたからだ。

ハッキリとIちゃんに「見て」と言われて見たわけではないけれど、
話をしている途中、それぞれの視界に長方形の姿見が入る瞬間があって
みんながみんな「こんな手あと、ついていなかった」と口をそろえた。

僕たちはずっと同じ部屋にいて話をしていたし、
途中でIちゃんが一人になることもなかった。

Iちゃんには、イタコの血筋だという
昔 巫女をやっていたおばあちゃんだかおばちゃんがいるのだという。
ママに言って、その人に見てもらうって
その時 言っていたような気がする。

それを聞いて僕は、はじめて「そういうこともあるのか」と
納得してしまった。

僕が体験した話は以上。

当時 僕らが通っていた中学校には、しっかり曰くつきの怪談があった。
(以下の追記は、怖い話が平気な方だけ どうぞ)

☆和田文庫とそれにまつわる話

僕らが通っていた青森県青森市のM中学校の図書室には、
『和田文庫』というものがあった。

昔 和田君という生徒が在籍していたのだが、彼は臨海学校中に海で亡くなってしまったのだそう。その後 和田君のご両親が学校へ寄贈したという本は『和田文庫』と名付けられ、その経緯を記した張り紙といっしょに図書室に置かれている。

その『和田文庫』自体には、何の怖い話もないのだけれども
学校の中で、和田君が見える…という噂があった。

M中学校の校舎には大きな階段が二つある。
玄関から入ってすぐ正面に一つと、校舎の裏手に近い方、体育館側に一つ。それぞれ、1階から2階へ上がる踊り場の壁が
一面大きな鏡張りになっている。

・・・なっているはずなのだが、一見すると鏡があるようには見えない。
階段の踊り場の壁は、いつかの生徒たちの卒業制作だという
絵画の描かれた大きなベニヤ板で、その全面がおおわれているのだ。

ベニヤ板の隙間を覗くと、かろうじてその下に鏡があるらしいとわかる。

その鏡に、和田君が写るのだという。

学校の噂話や怪談なんてそんなものだろうけど、
和田君が映るから鏡を隠したんだとか
あのベニヤ板の隙間を覗くと和田君が見える、とか…

僕らが生徒として在籍している頃には もう、鏡を隠したのが先なのか
和田君が見えたのが先だったのか、わからなかった。

ただ僕らの時代でも時々 誰かが、全身ずぶ濡れの男の子を目撃した…
という話は出ていた。

それから、学校の三階のトイレ周りでは
よく、「誰もいないはずなのに水の音がする」とか
そこでもやはり、誰かの人影が見えるとか、
鏡を見ると、後ろに誰かがいる……なんていう話もあった。


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小町
おいしいものを食べたいと思います。あとは、本を買います。