#006_キャッチボールおじさん
息子とキャッチボールするのが夢だった。
昨日少年野球の練習風景を見かけておもいだした。
結婚して2年、待望の第一子を授かった。
女の子だった。
男兄弟に育った自分に女の子が育てられるだろうかと心配したが、父親の心配などどこ吹く風と健康に育ってくれた。
小学校から中学校まで野球を続けた。
ものにはならなかったが、素人よりうまいだけでも会社の草野球チームでは重宝された。
高校になっても野球を続けたいというほどの熱意はなかった。
決して強豪校ではなかったが、地方大会ではそれなりの結果を残していたこともあり、自分には無理だと決めつけたのだ。
それでも生まれてはじめてまともに練習した野球には特別な思いを持っていた。
サッカーのほうが、バスケのほうがと語る同級生には多少の反論をしたりもした。
そんな私が息子とのキャッチボールを夢見たのは必然だろう。
しかし、その夢は叶わなかった。
長女は楽器を、3歳差の次女はテニスを中学から大学まで続けた。
どちらもまともな練習相手にはなれなかったが、楽しんで続けてくれたのが何よりだ。
キャッチボールをできなかったことなんてなんでもないじゃないか。
次女のウェディングドレス姿を見て、照れながらそうおもった。