人と交流するためのツール。【ビブ人名鑑#19:上和田真由子さん】
ビブリオバトル普及委員会で活躍中の方(ビブ人)へのインタビュー企画、「ビブ人名鑑」。
今回のゲストは、鹿児島で小学校の司書をしつつ、「椋鳩十記念館」などでビブリオバトルを主催する上和田真由子さん。
地元に根づいた活動をされる上和田さんに、主催に込める思いや、「Bib-1グランプリ」に出場しようと思ったきっかけ、活動の目標をお伺いしました。
人との繋がりで始めたビブリオバトル
― 上和田さんは、ビブリオバトルとどのように関わられていますか?
「椋鳩十文学記念館」「鹿児島県立図書館」で、主催かつバトラーとして活動しています。
まだ多くの参加者を集められていないので、自分で主催しつつ、バトラーとして一緒に楽しんでいます。
また、鹿児島の「知覧武家屋敷」という観光名所で開催されたビブリオバトルにもバトラーとして参加しました。
最近では、「鹿児島市立図書館」で開催された「初めてのビブリオバトル体験教室」という小学生対象のイベントに、大人も参戦していいとのことだったので、参加しました。
― ビブリオバトルと出会ったきっかけを教えてください。
私は小学校の学校司書なのですが、私が務めている地区にある霧島中学校で開催されたビブリオバトルを見学したのがきっかけです。
その時は「ビブリオバトル」という名前だけ知っていて、実際に見たことはありませんでした。
ですが、職場で自分が関わった子どもたちが出場するということを聞き、興味を持ちました。
それが2015年頃なので、ビブリオバトルと出会って6年ぐらいになりますね。
― それが昨年から「主催」をするようになったとのことで、きっかけは何でしょうか?
「霧島でもビブリオバトルを盛り上げたいから、一緒に主催をやらない?」と声をかけてくれた友人がいたんです。
私も開催してみたい気持ちはありましたが、実際のやり方や広告の仕方もわからないのが実情でした。
なので、最初は2人で主催を行いつつ、今は1人で運営しています。
― ビブリオバトル普及委員会にはどのような流れで入会されたのでしょうか?
自分で初めてビブリオバトルを主催した際に、同じく鹿児島で活動されている峯苫幸多さんに出会ったんです。
初めての主催ということでいろいろレクチャーをしてもらう中で、ビブリオバトル普及委員会というものを教えてもらいました。
― 峯苫さんは以前ビブ人名鑑でも、お話を伺いしました。とてもアクティブに活動されていますよね。
先程言った「知覧武家屋敷」でのビブリオバトルは、実は峯苫さんが主催だったので参戦しました。
私が主催するビブリオバトルにもよく参戦していただき、知人が開催する読書会に峯苫さんは顔を出されるので、よく交流させていただいています。
― 「知覧武家屋敷」でのビブリオバトルの様子はいかがでしたか?
武家屋敷のひとつをお借りして、テーマ「フリー」と「知覧」の2ゲームが実施され、私は「フリー」で参加しました。
峯苫さん含めてお2人が主催だったのですが、2人とも人脈が広いようで、10名ほどが集まり、お屋敷ということもあってかアットホームでゆったりとお話できたのが印象的でした。
ゲームの後は武家屋敷内の案内もあるはずだったのですが、時間の都合上できなくなってしまったのが心残りです。
― 「武家屋敷」は観光地なので、県外の方も楽しめる場所として最適ですね。
そうですね。
霧島と知覧は少し距離があるので、私も久々に武家屋敷に来たのですが、とても楽しかったです。
2回目が開催される予定だったのですが、まん延防止等重点措置の期間に入ってしまい、延期になってしまいました。
中止ではないとのことなので、開催される際はぜひまた参戦したいですね。
「チャンスだ」と飛び込んだ「Bib-1グランプリ」
― 今までで一番印象に残っているビブリオバトルは何でしょうか?
2、3年前に観覧した「鹿児島県 高校生ビブリオバトル」です。
高校生たちが本当に楽しそうに本の紹介をする姿が、とても印象的でした。
一番心に残っているのは、大島高校の生徒が発表していた「流星コーリング」という本です。
すごい勢いで本について語りつつ、本にまつわる体験や面白いとおもったポイントをしっかり抑えて話をしていて、本の面白さをどうにか観客に伝えたいという熱意が伝わってきました。
たしかその本がチャンプ本に選ばれたと思うのですが、情熱的な発表でした。
― 「情熱的」ですか!
それを見て、「本当の本好きが集まって語り合うのがビブリオバトルなんだ」と強く感じました。
それ以降、高校生大会を追いかけるようにしています。
コロナ禍でオンラインになっているので、実際に会場で見る雰囲気とは違う感覚を楽しんでいます。
― オンラインでのビブリオバトルについてはどのような印象をお持ちですか?
実は、今回の「Bib-1グランプリ」が初めてのオンライン参加で、最初は周りの反応が見えないのではないかとドキドキです。
私の主催するビブリオバトルは、実際に会場に集まる形式でしか行ったことがないんです。
私の話に相槌を打ってくれている姿を見て、「共感してもらえた」と、いつも安心していました。
― 「Bib-1グランプリ」の出場を決めたきっかけは何だったのでしょうか?
2020年7月に入会したばかりで、普及委員会で知っている方は峯苫さんしかいなかったんです。
なので、全国の人と交流できると聞き、「そんな面白そうなことがあるんだ」と興味を惹かれました。
あと、オンラインの度胸試しですね。
これを逃したら他の普及委員の方とも交流する機会もあまり無いため、「今しかない!」と思ったんです。
私は結構人見知りをしてしまうタイプで、かなりの勇気が必要だったのですが、これは良いチャンスだと申込みをしました。
小学校で「ビブリオバトル」を行う土壌を作る
― 上和田さんは、どのような思いでビブリオバトルを主催されているのでしょうか?
「椋鳩十文学記念館」が鹿児島の人にもあまり知られていないということもあり、まずは地元の場所を知ってほしいという気持ちで開催しています。
違う場所でも開催したいのですが、金銭的な負担がかかると参加のハードルが上がってしまうと思い、できるだけ無料で部屋を貸し出してくれる場所を選んでいます。
ビブリオバトルが初めての人にも気軽に参加してほしいと考えているので、友達や司書仲間などに積極的に声をかけています。
一緒に立ち上げた知人も交友関係が広い方なので、いろいろなところに声をかけてもらい、伝手を借りて人を呼んでいます。
なので、身内感があるのが特徴ですね。
今後の目標は、中学生や高校生などの学生さんなどにも来てもらうことです。
ですが、なかなかできていないので、どうアピールしていこうかと考えています。
ここで中高生にビブリオバトルに目覚めてもらい、本への興味を示してもらうのが大きな目標です。
― 他にも、これからの「野望」はありますか?
まだ、自分の職場である小学校で、ビブリオバトルを開催できていないんです。
私の職場は全校児童23名なのですが、本は好きだけど「まとめて話す」ことが苦手な児童が多いんです。
なので、まずは読書会を開き、本の紹介や面白さを人に伝える練習を行っています。
そこからビブリオバトルに発展させて、視野を広げる意味で多くの本を知ってもらいたいです。
そして、ゆくゆくはオンライン開催を勉強して慣れていき、自分の職場の小学生だけでなく、他の小学生の子とも交流していけたらいいなと思っています。
大人も子どももビブリオバトルを通して、言葉を伝えるのが上手になっていけたら良いですね。
― 上和田さんを中心に、鹿児島全土の小学校がビブリオバトルを通じてつながったら素敵です。
まだまだ難しいと思っていますが…。
感想が「面白かった」で終わってしまう子どもたちに、
「どこの場面で面白いと思った?」
「どの場面が好きだった?」
「どの登場人物に共感した?」
と聞き、少しずつ言葉を引き出してあげるようにしています。
子どもたち自身が、どこにどう面白さを感じたのか表現できるように、丁寧に接しています。
― 表現できるようにする、というのが大事なんですね。
「私が育てたんだぞ!」と言えたら嬉しいです(笑)
― では最後に、上和田さんにとってのビブリオバトルとは何でしょうか?
私にとってのビブリオバトルは、人と交流するためのツールです。
ビブリオバトルを通して
「本好きの人って、こんなにいるんだ!」
と、
「こんなにみんな語りたがるんだ!」
ということがわかりました。
いろいろな人の違う一面を知れたんです。
私にとって人とコミュニケーションを取れる、1つの形です。
― ありがとうございました!
「ビブ人名鑑」シリーズでは、ビブリオバトル普及委員会で活躍されている方々のインタビュー記事を不定期に掲載していきます。
どうぞお楽しみに!
お読みいただき、ありがとうございました。
インタビュー:高橋一彰
取材日・場所:2021年10月8日 Zoomにて
執筆:榎村真由
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