ファウストと戦女神アテナ -ギリシャ神話とまほやく-
はじめに
この記事は、(株)colyより開発・配信されているスマートフォン向けアプリゲーム「魔法使いの約束」通称まほやく内の、キャラクター達のモデル・モチーフ・キャラ考察について自分なりにまとめたものです。
本文にはネタバレや、考察上省けない宗教関連への言及も含まれるため、不安な方はここでページを閉じることを推奨します。
なお筆者は、ストーリー・雑誌等を網羅しておらず、また情報精査においても素人です。なにか間違いやご指摘があれば、気軽にコメントへ。
また、他の意見を持たれている方への批判の意図は全くなく、寧ろ考えの至らない浅慮な賢者にどうかそのお知恵を授かりたい。→Wavebox
以上、読んで頂く際には、どうかご留意を。
2024.01.13 初稿
2024.01.20 動画追記
2024.05.23 タイトル改修
まほやくとギリシャ神話の関連性
本稿はファウストを中心として、ギリシャ神話における神々をモデルとした、魔法使い達を考察していきます。
ファウストについては、下記の記事と動画にてまとめている為、詳細な説明は省き、趣旨に沿った部分のみ解説します。
ギリシャ神話の神とキャラの仮定
本稿では根拠と共に、ファウストを中心とした、下記の神とキャラクターが、モデルという説を前提とした考察をしていきます。
ファウスト:アテナ
オズ:ゼウス
フィガロ:メティス(ゼウス)、ポセイドン
レノックス:ヘラクレス
アテナについて
アテナは、知恵・戦略・手工芸を司る処女神です。ギリシャの首都、アテネの守護女神でもあります。世界遺産のパルテノン神殿は、彼女を祀る神殿です。共に描かれるモチーフは、フクロウ・蛇・オリーブの木など。
ファウストとの共通点
母親なしで生まれた娘
大神ゼウスは、親であるガイアとウラノスから、海と泉の女神メーティスとの間に生まれる子供に王権を奪われるという予言を受けます。
これはフィガロ=メーティス説に関わってきますが、メーティス(Μῆτις)は、知恵の意味を持ち、神と人間の中で最も賢いとされた叡智の神です。
また、メーティスは何にでも姿を変えられる力を持っていた為、ゼウスは色々なものに変身させ感心したふりをし、最後は水に変身させ身籠ったメーティスを飲み込みました。
ですが胎児は生き続け、やがてゼウスは激しい頭痛を感じるようになります。他の神に、斧で自らの頭部を割らせると、中から出てきたのは、甲冑を纏い成人した姿のアテナでした。メーティスとの間ではなく、ゼウス自身が生んだ為、予言は成就せずゼウスの地位は揺るがぬものとなった逸話です。
ファウストは、父に捨てられ母や祖父母と育ちました。母親を知らない娘と、父親を知らない息子で、性別が逆なのは、まほやくが反転した世界だからですね。
ゼウスの最もお気に入り
ゼウスが飲み込んだ際に同化したことで、メーティスはゼウスの体内で、適切な助言をし続けることになりました。
つまり、最高神ゼウス = 魔王オズと参謀フィガロ
アテナは、最高神ゼウスの最も気に入りの娘であり、アテナに対する偏愛により、他の神々は嫉妬したとも言われています。
ファウストは、フィガロの唯一の弟子であるため特別で、ファウストへの行動はゼウスの寵愛を表しているといえます。
メーティスとアテナの反転
当時、神々に対して添名(二つ名や決まり文句のようなもの。"東の魔法使い"ファウストみたいな)をつけるのが一般的でした。アテナの最も一般的な添名は、グラウコピス( γλαυκῶπις )で、通常は「明るい目、または光る目」と訳されます。
この単語は「 γλαυκός = 輝く銀色、青緑、灰色」「 ὤψ = 目、顔」を組み合わせたものです。
灰色の輝く眼といえば…?そう、SDフィガロですね
今まで、ファウストの瞳の反転だからフィガロの瞳孔が明るいのだと思っていましたが、逆にアテナの瞳をフィガロが持ち、それを反転させたものをファウストに宛行われたのかもしれません。メーティスの瞳の色が何色かまでは分からなかったのですが、Metisはコムラサキという蝶の学名になっていたり、紫色の花の品種に名付けられています。カラーリングから部屋から寝間着まで、徹底的に反転している元師弟らしいですね。
なお、彼女らは小惑星の名前としても採用されており、それぞれ「9 Metis・2 Pallas(パラス・アテナ、アテナの別名でパラスという友人の名)・881 Athene」で、それぞれにシンボルがあります。
メーティスが星と瞳、パラスがひし形と十字、アテナがハートと十字…なのですが
ここでも、お互いの魔法陣で元師弟めちゃくちゃ反転してます。どこまで徹底的なんだcolyくんは…。
正義と戦争の女神
アテナは戦争の女神として、ギリシャ神話における様々な戦いに参加し、ギリシャの英雄たちを鼓舞して、ともに戦います。
ゼウスは、戦争の領域を特に軍神アレスとアテナに割り当てています。アレスは、単なる戦いの残忍さを代表していたのに対し、アテナは戦争の知的で文明的な側面と、正義と技術の美徳を代表していました。
戦争は良いことではありませんが、戦争にはノウハウを必要とする為、技術の進歩が加速度的に向上します。遠くの物体を探知する方法が緊急に必要となり、レーダーの開発を急いだ結果、誤って水の共振周波数を使ってしまった失敗を糧に、電子レンジが開発された例などです。アテナは、戦争におけるそういった面を担当していたということですね。
アレクの詳細な為人はまだわかりませんが、無鉄砲なアレクをいつも止めていた、とファウストは語っている為、アレス=アレク、ファウスト=アテナの意図もあるかもしれません。
アテナは王たちの福祉の守護者として、良き助言、慎重な自制心、実践的な洞察力を持つ戦争の女神だったのです。
処女にして母なる女神
処女母神といえば、日本神話のアマテラスや、キリスト教の聖母マリアが有名ですが、アテナも処女にして母とされています。
まほやく内の魔法使い達は、それぞれ一等星がモチーフに含まれていますが(詳しくは上記noteをご参照ください)、恐らくシノのモチーフに含まれているのが、エリクトニオスの活躍を元にしたぎょしゃ座の一等星。
本編2部にてシノが受けるはずの攻撃を、ファウストが代わりに受けて守護していたのは、この逸話を意識していると思われます。
ヘラクレスとの関係
また、レノックスのモデルの一部と思われる、ヘラクレスの幼児期にも、アテナが関わっています。
まほやく正史では、レノックスの方が年上な為、月花妖異譚で「ファウストに育てられたレノックスの話」が出たのずっと不思議だったのですが、ヘラクレス生誕の逸話に基づいたものだったんですね。
レノックス=ヘラクレス説の詳細は、また次の機会にするとして、ギリシャ神話では、アテナが英雄ヘラクレスを助ける姿が頻繁に描かれています。
ゼウス神殿に飾られていた、ヘラクレスの歴史を描いた12作のメトープ(大理石板に彫刻された浮き彫り額)のうち 4つにアテナは登場しており、積極的に手伝っていることが示されています。
その中で、アテナは厳しい同盟者として描かれているのと同時に、ヘラクレスの功績を穏やかに認める者でもあります。
いかにも主従のふたりを感じる関係性ですね。
なおレノックスに関しては、下記にて別途考察しています。
手工業を司る神
アテナは様々な英雄を助ける戦の女神ですが、戦いに関わる戦車や武具だけでなく、織物や陶器の発明者ともされ、技術を司る神でもあります。
糸紡ぎ、機織など羊毛を用いた女性の手仕事を守護していて、アテナ自身も機を織ります。アラクネという人間と機織り競争をした逸話も。
ファウストが自作衣服について言及する描写、スポサブ以外にもいくつかあるのですが、既製品ではなくわざわざ作ったという所も、長らく不思議に思っておりました。まさかここで繋がるとは。
ちなみに、まほやくで発明といえばムルですね。ムルの発明は別のモデルから来ていそうな気がしますが…。もしその辺りについて考察されている方がいれば読みたいです!(他力本願寺)
アイギスと魔道具の鏡
アテナは、アイギスという防具を使っていたとされています。これは、元々ゼウスの物だったのを娘のアテナに与えたもので、ありとあらゆる邪悪・災厄を払う魔除けの能力を持つと語られています。形状は楯であるとも、肩当てまたは胸当てのようなものであるとも。
ギリシャ神話においては、アイギスがアテナに与えられた後。英雄ペルセウスが、目を合わせた者を石化させてしまう魔物メドゥーサを討伐する際、彼が石化するのを防ぐため、アテナはペルセウスに、青銅鏡のように輝く楯を貸します。ペルセウスは楯を利用してメドゥーサの姿を直接見ることなく近づいたため、石化することなく首をはねることに成功しました。
魔物メドゥーサの首を持ち帰ると、アテナはその首をアイギスにはめ込んだと伝えられています。メドゥーサの持つ、目を見た相手を石化させてしまう能力は首を斬り落とされた後も残り続けており、アテナはその首をアイギスに取り付けることで、アイギスをより優れた防具にしました。
2部でファウストが、人造魔法使いを縛り付ける描写がありましたが、これはこの能力を由来にしたものと考えられます。アテナがペルセウスにアイギスを貸したように、ファウストがシノに魔道具を貸している事からも、この逸話を意識していることがわかります。
純潔の神と海神ポセイドン
なお、先の項目で登場したメドゥーサに関しては、他にもアテナに関する逸話があります。
まほやくで海神を選ぶならフィガロですが、彼をポセイドンとするには少々情報が足りていないので、それに関してはまた後日。
オリーブの木とエルダーの木
上記の逸話により、アテナの象徴となったオリーブの木ですが、これに関しても恐らくファウストへ反映されています。
まほやく上ではファウストの家にあるエルダーの木、これはセイヨウニワトコという実在する木です。
エルダーフラワーには、Sambucus nigra の学名があり「nigra=黒い」です。これは、花が咲いた後に黒色の実をつけることからです。オリーブの実も、緑から熟したものは黒くなりますよね。
また、エルダーフラワーとオリーブの花は大変似ています。
エルダーフラワーという名前については「oeld=炎」の意味を持ちます。火を起こす際に、使われる植物だったことが由来です。"黒い"と"炎"の意味を両方持つなんて、めちゃくちゃファウスト…!(個人的感想です)
ちなみにエルダーフラワーは、庶民の薬箱と呼ばれるほど万能なハーブとして有名な他、黒い女神(魔界のホレおばさん)の木として魔除けに使われたり、セイヨウニワトコ。つまり、ニワトコの杖。ジャンル外なので名言は避けますが、黒魔術にぴったりな木でもあるということですね。
追記 動画を作りました。内容は同じです。
おわりに
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。以前から、まほやくとギリシャ神話の関連性には気付いていたものの、人間関係の複雑さ・ジェンダー観・神特有のとんでも展開・ゼウスを筆頭に奔放すぎる等々の理由から、ギリシャ神話に対し、苦手意識がありました。
ですが、まほやく考察について考え始めると、どうしても避けては通れない道故に、🎉ファウストの誕生日🎊というまたとない機会の為、精一杯調べまとめさせて頂きました。
とはいえ、ギリシャ神話にはアテナが年老いた物乞いに変装するという2部で聞いた描写や、アテナが額から出てくる際に大地を揺るがす程の大きな産声をあげた=自称魔法舎一の大きい声とか、当時使われていた硬貨にはアテナと三日月が造幣されていたり、アテナは通常兜を被って描かれる=ファウストの帽子?など詳細を省いたものもあります。知れば知るほど、都志見文太先生の文章や、設定の細やかさに唸らされました。最高。
申し上げておきたいのは、まほやくは複数のキャラに、人物モデルを散らしていると考えられる為、ファウストのモデルがアテナだけとは限りませんし、アテナがファウストだけのモデルとも限りません。
アテナはフクロウと一緒に描かれることがあるのですが、これは「白樹のもとで優しく嘘を」のリケに継がれた要素じゃないかなと思います。他にも罪をしっかりと罰する要素には、リケを感じます。
個人的に、ファウストの他モデル候補は、はくちょう座の神話に出てくるネメシスです。彼女は、人間が神に働く無礼に対する、神の憤りと罰の擬人化であり、人間に幸・不幸を配分する神です。幸運操作は、ファウストの得意魔法ですね。
またフィガロに関しては、メティス(ゼウス)・アスクレピオス・ポセイドン…と、モデルになっていそうな神が多いですし、レノックス=ヘラクレスに関しても、いつか別で記事を書きたいです。
書きたいもの無限に増えていくんですが何故…?嬉しい限りです。
他にも、無知故に気付いていないモチーフがあるかもしれませんので、もしご意見ご感想があれば、お気軽にWaveboxやコメントへ。
絵文字やスキも嬉しいです。いつもありがとうございます!
2024年も、良いまほやく年になりますように。どうぞよき賢者ライフを!
2024.01.13 初稿
2024.01.20 動画追記
2024.05.23 タイトル改修
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