#02. 空き物件ツアーの下見へ
12月25日(火)15:00。来年3月に開催予定の空き物件ツアーで紹介する物件候補の下見。駒ヶ根の商店街に点在する空き物件を見て回る。
メンバーは織井不動産の織井さんと長野県建築士会上伊那支部の小林さん、下平さん。僕は店での仕事の後、途中から合流。
空き物件ツアーの候補地としてあがっていたのは飲食店向けが2件、小売店向けが2件、住居が2件の合計6件。空き物件ツアーではこれらの物件を不動産屋、建築士会の面々と一緒に回る。
今日は内見しながら、当日電気や水道が使えるか、その際、費用はだれが負担するのかなどの確認も行う。間取り図のない物件は建築士の下平さんが「こんなの鍵貸してくれりゃ、描いちゃるで!」と、ちゃきちゃきの江戸っ子のよう。
空き物件ツアーの当日は、不動産屋の視点から見た物件の見立て(建物のインフラ確認、リフォームの概算など)、建築士からの活用の提案(どんな空間になりそうか)、それにプラスしてもし事業をはじめた場合に受けられる行政からの助成金の案内などをしてゆく。
駒ヶ根の街中でなにか事業をはじめたいひとにとっては、イメージがわいたり、アイディアがひらめくことがあったらいい。また一緒にまわるツアー参加者のひとたちと感想を共有することで、起業のモチベーションが上がったり、そんな空き物件ツアーの様子を見ている物件オーナーの方々の物件活用の機運が高まるとよりいい。
空き物件を借りたいひと、空き物件を活用してもらいたいオーナーと、双方の開拓がこのツアーの目的でもある。
駒ヶ根駅前の商店街の地図を片手に街を歩くと「あれ、この建物なんだっけ?」「ここは誰の持ち物?」という会話が自然と生まれる。
この日は、工事中の物件があって通りがかりに工事をしていた業者の方に話を聞くと、焼き鳥屋くるま屋さんの移転先とのこと。
にしても駒ヶ根の商店街にある飲食店というのは、なぜ入口が狭く、窓がないのだろう。なかなか外から店内の様子を見ることもできないから、常連さんはともかく、初めての人には入りにくいつくりの建物が多い。(まぁ、僕も3階建ての雑居ビルの2階と3階で外からわかりにくい店をやってるんだけれど)
最初は関わりにくくても、打ち解けると情に厚い。シャイに見えて、一度一緒に食卓を囲んでしまうと話が弾む。冬が長く寒さに耐え忍んで生きてきた人たちの地域性でしょうか。このあたり個々の相性だから当たり外れもあるでしょうけれど、駒ヶ根を旅する際は勇気を出して一歩店に踏み込んでみることをお勧めします。思わぬ土産話が見つかるかもしれませんし、見つからなくてもファイティン!
商店街から山頂に雪が積もった中央アルプスが見える。県外からの旅行者はこの駒ヶ根の街と山との距離の近さに驚くという話を店をやっているとよく聞く。
確かに駒ヶ根はどこに住んでいても車を10分、15分走らせれば登山道の入り口にたどり着くくらい山との距離が近い。
都会に住んでいる山好きが登山しようと考えると、日程を調整して、ホテルを予約し、新幹線やバスを予約して、いざ当日になって天候が雨だと登山自体が中止せざるを得ないことがあるけれど、この土地に住んでいると、休日の朝起きて、天気がよければ山登りに行けるし、仕事終わりにちょっと眺めのよい丘へ行けば満点の星空を見ることができる。
移住の決め手のひとつに駒ヶ根の景色や自然環境をあげる人も少なくないと聞く。
開業してから3年目になるカフェ&バーSinkさんの隣は元大衆酒場「きたや」。かつては店主のおばあさんがひとりでやりくりしていた飲食店で、近くの郵便局の職員がお昼に立ち寄っていた姿があったと織井さん曰く。
そういえば駒ヶ根の街中には、さっと食べて立ち去る、都会の立ち食いそば的な飲食店は街中にない。徒歩圏内に郵便局や銀行、フィットネスクラブなど人が出入りする場所はあるから、あってもよさそうなのに。お弁当持参率が高かったり、自宅に帰って昼食をとるひとが多いからか。
昼は立ち食いソバ屋(店のつくり的に座席あるけど)、夜は安く立ち飲みできる角打ちなんてあったらいいと勝手な妄想は膨らむ。
ひとりの店主がやりくりするのにちょうどよさそうなサイズ感。こういう場所で小商いをするイメージがわく方いるでしょうか?
例えば、ひとりでこの物件を借りなくても、日替わりで入れ代わり立ち代わり定食屋さんやカレー屋さんが入ってランチを提供したり、テイクアウトをしたり、夜は居酒屋や小料理屋をしたいひとが店を出す。そういうシェアキッチンのように何人かでひとつの場所を共有して店をやるのもありだと思います。それをとりまとめる人が物件オーナーさんとちゃんと契約ができれば。そういう需要があるか空き物件ツアーでは探ってみたいところ。
いきなり自分の店を持つのは難しくても、ひとまずお試しではじめてみて、まちなかのひとたちの胃袋をつかみつつ、いつか自分の独立した店を構えるまで腕を磨き、体力をつけてゆく。そんなビジョンはどうでしょう。
商店街の表側からは想像できないくらい裏側は込み入っていて複雑。この壁がどこの物件のものなのか、この配管はどこにどうつながっているのか、このメーターは活きているのか、ひと一人通ることしかできない狭い通路は迷路のようで、どこを歩いているのか、方角がわからなくなるカオスっぷり。空き物件ツアーは表の通り側だけでなく、あえてこういう場所を歩くのもおもしろいかもしれないですね。
薄暗く狭い通路を歩いて螺旋階段を上がってくると日当たりがよい中庭のある物件が現れる。建物裏手の螺旋階段はかなり古くなっているけれど、建物自体はコンクリで固めてあってどっしりとして安心感のあるつくり。
4部屋+台所。壁紙がはがれかけていたり、床は汚れているけれど、そこそこ掃除をすればそれなりにそのままでも使えそう。もちろん、風呂場は浴槽がなかったり、窓ガラスが割れていたり、水道の配管は外から引っ張ってこないといけないけれど、まちなかにシェアハウスがあったり、会員制の子育て世代のシャアスペースがあって、子育て世代のママ、パパが気兼ねなく使えて休憩できたり、子どもとゆっくりできたり(ちっちゃな空中庭園あるからね!)、親同士の集いができたりするといいと思う。エレベーターがなくて、階段はあがってくるのがきついけれど、それは…体力づくりということで。街中にぽっと現れた秘密基地みたいでいいんじゃないでしょうか。
物件を見終わった後は、小林さんの事務所926BLDに戻り、今日の感想を踏まえて空き物件ツアーの打ち合わせ。街中でシャアハウスをやっている前田さんも合流。
まずは実際見た物件から空き物件ツアーで紹介できそうな物件をリストアップ。その後、3日間の空き家物件ツアーで開催するトークイベントの内容の検討。トークイベントのテーマ、登壇者など、いろんな可能性を探る。
同じ時期に抱き合わせで開催できそうなイベントはないか、まちなかで他の動きがあるか、地域おこし協力隊や他の団体との連携も視野に入れる。
広報用のチラシの案を検討したり、地域のフリーペーパーなどへの取材依頼などもあわせて行う。このあたり、地域密着型の不動産をしている織井さんの人脈があって電話一本で実務的な話が進んでゆく。プライスレス!
それぞれのタスクを誰がいつまでやるかを確認して解散。
この空き物件ツアーは、駒ヶ根エリアプラットフォームという市が発起人となって、地域の商店街やこまがねテラス、信州駒ケ根暮らし推進協議会、建築士会上伊那支部のメンバーで構成されている団体の社会実験としてのプロジェクト。といってもこの団体はHPもないし、SNSもないので、これまでの活動が表に発信されることはなかった。現在もないしね。
このnoteはCOLORSの活動を発信する用のものだけれど、COLORSの趣旨がこの地域で活動している人材を掘り起こし、その活動を発信して、交流が生まれることをゆるやかに目指しているので、駒ヶ根の地域で活動をする駒ヶ根エリアプラットフォームの活動の様子をアーカイブとして残していってもいいかなと思う。COLORSのイベントに参加してくれている方々の活動の場が駒ヶ根エリアプラットフォームの活動と合流することもあっていいしね。
僕はたまたまシェアハウスオーナーでこまがねテラスのメンバーでもある前田さんと友人だったし、僕が店をしている雑居ビルのとなりに小林さんの926BLDがあって移住当初から交流があったから、なんとなく声がかかり、前回くらいの打ち合わせから顔を出している。おそらくこのプロジェクトの一番外側にいて、観察している人間から見た様子を綴ってゆけたらと思う。
(室根)
【関連情報】
・建築士の小林和教さんがオーナーの926BLD(入居者募集中!)
・シェアハウスオーナーの前田智子さんが活動に携わっている子ども食堂の「駒ヶ根xWINまみーずカフェ」
・織井不動産のHP
https://www.orii-f.com/
・現在、僕がお手伝いしている移住・空き家バンク物件サイト「こまがねミッケ」