「手術室や手術着は緑か青」
医療をテーマにしたドラマを見ていると、医師が青や緑の手術着を着ているシーンや、手術室の壁が青緑であることに気付きます。
青や緑の手術着が定着しつつありますが、以前、病院のシーンと言えば、白の手術着に白い壁の手術室が当たり前でした。
では、なぜ手術着や手術室の色が白から青や緑へ変わったのでしょう。
私の友人の医師は「血の色が目立たないから」と答えましたが、もっと大きな理由があります。
医師が手術中に赤い血の色を見ていると、目をそらした時に赤の補色である緑の斑点がちらついてしまいます。
実際、アメリカの病院で手術中の医師が、白い壁に緑の斑点がちらついて手術ミスをしそうになったというエピソードがあり、これを聞きつけた色彩学者が手術室の壁や手術着を青か緑にするようにアドバイスしたそうです。
補色というのは、ある色をじっと見続けた直後に、目を白い壁や紙に移すと、残像として現れてくる色の組み合わせのことです。
赤と緑、青とオレンジ、黄と紫などが補色の関係にあります。
この補色を発見したのはドイツの文学者で自然科学者でもあったゲーテです。
ゲーテの書いた「色彩論」は、色彩のバイブルであり色彩の世界を大きく開いた著書です。
アメリカでは、医療の現場でも色彩の効用を積極的に取り入れて、治療に役立てているようです。
医療の分野にとどまらず、これまでヒューマンエラー(人的なミス)として片付けられていた問題も、色彩の研究がもっと進めば解決に近づく可能性が高くなるのではないかと感じています。