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夏のアート鑑賞 ~フィンランド・グラスアート
はじめに
この記事は、ネットラジオ・ゆめのたね放送局「Colourful Days」(水曜13時~レッドchannel)で8/16(再放送8/23)にお話した内容のまとめです。
夏涼みのアート鑑賞・第二弾は、東京都庭園美術館で開催されている「フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン」です。
フィンランドを代表する8名のデザイナーのグラス・アート約140点が出展されています。そのうち、特に印象に残った4名を中心に、1930年代以降の作品を写真とともに紹介していきます。
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アルヴァ・アアルト(1898-1976)/アイノ・アアルト(1894-1949) 夫妻
20世紀を代表する建築家でもあるアルヴァ・アアルト。生涯200もの建築物をデザインした巨匠は、ジャンルを超えて、家具やガラス作品も発表しています。ここでは彼らの代表グラスアート2点をご紹介します。
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手前「サヴォイ」(1937年) 高さ140 幅206㎜ 同年のパリ万国博覧会にも出品。名前は、ヘルシンキ中心街のレストラン「ザヴォイ」に飾られたことよる。
奥「フィンランディア」(1937年) 高さ603 幅320㎜ サヴォイを踏襲しつつ背が高めに。イッタラ社から1989年製品化され現在も販売されている。
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同年のニューヨーク万国博覧会フィンランド館のためにデザインされたもの
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器・鉢・ボウルを重ねると花形のようになる
グンネル・ニューマン(1909-1948)
私が今回の美術展で、一番感銘を受けたのが、グンネル・ニューマンの作品たちです。その中でも最も印象にのこったデザインをご紹介。
ガラスの透明性と透過性を最大限に活かしたミニマムでフェミニンな作品が特徴的。39歳という若さで亡くなったのが残念で仕方がないです。
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ストックホルムで開催された「北欧応用美術展」のためにデザインされたもの。名前は植物のカラーより。この作品でニューマンはフィンランドを代表するガラスデザイナーとして認知された。
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個人的に最も感動した作品。シンプルなデザインのなかに洗練された美しさが際立つ。
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特殊な金型を用いて、ガラスの間に気泡による微細な網目模様が施されている。何と繊細なこと!
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1951年ミラノ・トリエンナーレに出品。
内側にあるリボンのようなクルクルデザインが何ともユニークで面白い!
カイ・フランク(1911-1989)
「フィンランド・デザインの良心」といわれるフィンランドを代表するデザイナー。
第二次世界大戦前後に、陶器ブランド・アラビア社(イッタラ)に入社。これまでの高級なテーブルウェアの概念を、連続生産を利用して手軽に購入できる日用品へと変換させた立役者。
彼がデザインした「イーマ」と「カルティオ」はイッタラ社でいまもロングセラーとなっています。
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*ユニークピースとは、一点物の意
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ヴェネツィアの伝統技法として名高い「フィリグリー・グラス(レースグラス)」を採用。右の瓶は、伝統技法とバブルグラスとの組み合せ。
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タピオ・ヴィルッカラ(1915-1985)
グラスアートのみならず、家具や彫刻、紙幣のデザインまで、幅広く活躍するフィンランドを代表するデザイナー。自国の自然をモチーフにデザインした作品が多い。
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フィンランドの森林に自生している食用キノコをデザイン
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日本のうすはりグラスのような繊細さ!
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ヴェネツィア・ムラーノ島のヴェニーニ社へデザインを提供
イッタラ社との関係
8名のデザイナーのうちの半数が、あのイッタラ社にデザインを提供しており、その影響力には改めて驚かされます。こちらの記事で紹介した4名のううち、グンネル・ニューマン以外の3名が提供!
昨秋の記事でご紹介した、Bunkamuraで行われたイッタラ展を見た方は、フィンランドのグラスアートの歴史、イコール、ほぼイッタラ社の歴史ということが良くおわかりかと思います。
【11/2放送】芸術の秋 ~この秋、気になる展覧会!イッタラ展
施設建物の美しさ
1933年(昭和8年)に朝香宮邸として建てられ、1983年(昭和58年)に美術館として生まれ変わった東京都庭園美術館。時代がトリップしたかのような非日常の空間。アールデコ様式による装飾は、目の保養になります。
かくいう私は、アールデコ、特にルネ・ラリック大好き!!な人間です。ゆっくりうっとり館内を見渡しながら(傍から見たらちょっと挙動不審かも!?)空間も堪能しました。
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さいごに
1155年以降はスウェーデンの支配下に、1809年には隣接するロシアに併合されるなど、自国文化が常に脅かされていた歴史を持つフィンランド。
1917年にロシアから独立した後は、アイデンティティを取り戻す事は喫緊の課題でした。その復興に大きな役割を果たしたのが、グラスアートでした。
国際的な展示会に次々と作品を出品し賞を獲得、フィンランドのグラスアートは世界的に高い評価を得て、現在に至ります。
全ての作品ではありませんが、デザイナーが一点物の作品として世に出すのではなく、鋳型を作って職人と協業し量産体制を作り上げているのは素晴らしい事だと思います。
現代の私たちが、イッタラ社を通して、アルヴァ・アアルトのベースを購入できるのも、こうした仕組みがあればこそです。
フィンランドのデザイン性、グラスアートが、時代を超えて現代の私たちにも愛されて続けている理由が、わかったような気がしました。
◆開催概要
グラスアートの展示は、夏に涼みにいくのに最適なテーマでした!
残念ながら、東京での開催は昨日終了しましたが、全国巡回展がありますので、お近くの方は行かれてみてはいかがでしょうか。
【会期終了】
フィンランド・グラスアート ~輝きと彩りのモダンデザイン
2023年6月24日(土)–9月3日(日)
東京都庭園美術館
東京都港区白金台5-21-9
【今後の巡回展情報】
2023年9月16日(土)-12月3日(日) 山口県立萩美術館・浦上記念館
2023年12月16日(土)-2024年3月3日(日)岐阜県現代陶芸美術館
2024年3月16日(土)-5月26日(日) 兵庫陶芸美術館
◇出品作家
アルヴァ&アイノ・アアルト(Alvar&Aino Aalto)
グンネル・ニューマン(Gunnel Nyman)
カイ・フランク(Kaj Franck)
タピオ・ヴィルッカラ(Tapio Wirkkala)
ティモ・サルパネヴァ(Timo Sarpaneva)
オイヴァ・トイッカ(Oiva Toikka)
マルック・サロ(Markku Salo)
ヨーナス・ラークソ(Joonas Laakso)