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21.私の原風景

原風景、という言葉から思い出すのは、真っ白な雪に覆われた町の風景だ。

私の育った町は豪雪地帯で、時には一日に数十センチの雪が積もることもあった。

冬は吹雪くこともしょっちゅうで、透明なビニール傘を顔の近くに持ってガードのようにしながら、必死に歩いて学校へ通ったことを思い出す。家を出て五分も経つと、頰は寒さでヒリヒリと痛んだ。

一方で、時々ハッとするほど美しい雪景色に出会うこともあった。朝のひかりに反射した積りたての雪は、何だか神々しかった。夜空からふわふわとした雪が降る時、街は独特の明るさに包まれた。

11月から3月の間、一年の約半分が冬の町。

そこで育ったことが、きっと私の人格形成に影響を与えているように思う。

なかなか外に出られなかった冬の季節、お部屋を暖かくして、好きな音楽をかけ、図書館からどっさり借りてきた本と巣ごもりのようにして過ごすことが好きだった。当時はまだ日常的にインターネットを使う環境にはいなかったから、本から得られる知識を頭の中で膨らませて、未来のことや遠い国のことをよく空想していた。

30分かかる学校までの道のりを吹雪の中歩くことは苦行のようでもあったけれど、友達とおしゃべりしながら寒さを紛らわしたり、まずは目の前の数メートルを進むことに集中してコツコツ進んだりする強さを得たように思う。

きっとこれから生まれ育った町に再び住むことはないだろう。けれど、十数年暮らした故郷の雪景色は、いつでも私の心の中にあって、不思議と冷たさではなく温かさをもたらしてくれている。2021.11.30 Tue 8:02

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