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いつだって光に包まれている

ここ数年、大きな変化の中にいる。

父が天国へ旅立ち、しばらくして子どもを授かり、私自身が母となった。

そして、今月、家族が実家を手放すことになった。
7歳から18歳までの時間を過ごした特別な場所。
その実家への最後の帰省の中、この文章を書いている。

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故郷へ向かう道。遠くにニセコ連峰が見える。


いつも、北海道の故郷へ帰省するときは待ち遠しくてたまらなくなる。

けれど、今回は、その日が来て欲しいような来て欲しくないような、不思議な感覚だった。

大切な場所に、これが最後だと思いながら向かうなんて人生の中でなかなかないことだろう。

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実家に足を踏み入れた時の、からだがふわーっとゆるむ感覚は、言葉であらわすことが難しい。

窓から入ってくるひんやりとした空気と、土の匂い。
お風呂の檜の香り。
大きな窓から入ってくる陽のひかり。
床のつるつるとした感触。
家族の笑い声。
小鳥のさえずり。
お花の形をしたレトロな照明。

さらさら、ふかふかした布団に入ると、どこよりも深い安心感に包まれて眠ることができる。

実家は、どこまでも実家なのだった。

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写真の整理のため、母が古いアルバムをまとめて置いておいてくれた。

一冊一冊、すこしずつページをめくっていく。

これまで何度も眺めたことがあるはずなのだけれど、今回は特別に心に沁み入る感覚があった。

子どもの頃の自分を、愛おしそうに抱きしめてくれている人たちの姿がそこにある。

そして、その様子を写真に収めてくれた人たちの優しいまなざしも、伝わってくるように感じた。

月並みな表現かもしれないけれど、こんなにも愛情を注がれて歩んできたのかと思った。

アルバムの表紙になっていた
セーラームーンのお絵描き。

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生きていると、ふと深い孤独を感じる夜もある。

心の中にスースー風が吹き抜けて、何だか心もとなくて、自分がここにこうしている意味はあるのだろうか、という問いがわいてくるような夜。

それでも、何とか歩んでこられたのは、心の奥底の見えない場所から、これまで受け取った愛情が星のように光を放っていてくれたからなのだろうと、写真を眺めながらしみじみと感じていた。

思い出は記憶からこぼれ落ちてしまったとしても、受け取った愛情は決して消えることがなく、この世界は優しい場所だとささやいてくれている。

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ポスターと写真、時計の日焼けの跡が
残る壁紙。


あっという間に数日が過ぎ、実家を出て埼玉に戻ってきた。

これが最後だと思うとやっぱり離れがたくて、何枚も写真を撮ったり、古くなった壁紙を撫でたりした。

見送ってくれた母と祖母の姿に、涙が出そうになった。

車窓から大好きな故郷の町と山並みを眺める。
少しずつ風景が移り変わっていく。

故郷が遠ざかるごとに、感傷的な気持ちがゆっくりと色を変え、実家が私にエールを送ってくれているような感覚になる。

「あなたが受け取ったように、たくさんの愛情を大切な人たちに届けてね。私はいつでも見守っているよ」と。

もう訪れることはできない場所。
これからは、私の心の中にずっとある。

このnoteは、7/1〜7/25 にて実施される アドベントカレンダー夏2023「星座のアドベント〜人生の点と線〜」の 6日目です💫

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