スモールビジネスをするために、敢えて資本主義についてから考える・後編
「事業活動を自分らしく」という勉強会をやってます。地域おこし協力隊としてのミッションの一つである「創業支援」の文脈です。主に個人事業主などの小規模事業者を対象にしています。
まだテストケースという感じですが、面白いメンバーが集まってきています。世間の「こうあるべきだ」から自由になって、自分らしい形や内容でやっていきたいという志があるのが共通点です。
その趣旨などの紹介は、またの機会に改めて書きます。今回は、その勉強会の中で扱った、あるトピックをまとめてみました。
それは「資本主義とは」です。前編では、なぜこのトピックを扱うのかについて。僕の考えを書きました。今回は、実際に扱った内容になります。
▼前編はこちら
資本主義とは
幸か不幸か分かりませんが。「資本主義とは〇〇である」とシンプルに言い切れないところがあります。そのため、「こういう特徴が資本主義にはあるよね」という進め方をしていきます。そこから、全体像を掴んでいってもらえればというものです。
では、各トピックについてご紹介します。ちなみに、特に順番に意図はありません。
繰り返しになっているかもしれませんが、ここではできるだけ客観視してファクトとして扱うようにしています。資本主義をやめるべきだ、という主張ではありません。
市場にとって、良いとされていることにしか目が向いていない、インセンティブがない
要は儲かるか儲からないかで決まってしまうという。儲かれば良いので、環境が破壊されるのも厭わないということも起きるし、リーマンショックを招いたようなマネーゲームが横行してしまった過去もあります。
例えば、大規模なインフラ事業があったとします。鉄道を敷くためにトンネルを掘るとか。地域住民は「何百年も受け継がれてきた湧き水が枯れる」などの理由で反対します。ただ、トンネルを掘る側は、「この鉄道が開通することで、どれだけ経済効果があるか」、「黒字になるかどうか」の指標しか持っていないため、「湧き水が~」という意見に対して評価することができないわけです。
持続的成長は生産人口に比例する
まず、持続的な成長を是としています。それは生産人口に比例する。だから日本が経験した高度経済成長期は、生産人口がうまい具合に右肩上がりになったから実現できたという側面が大きい。もちろん、当時の人たちの多大なる努力の賜物でもありますが。
ところが、日本の現状を見渡してみると、日本は明らかに人口減少フェーズに入っちゃっています。2023年は80万人減ってます。山梨県の人口が80万人なので、山梨県が消えてるとも言える。もう、止めようがないフェーズに入っているのもあって。
だから、「生産性を上げよう」なんて旗を振ったり、少子化が問題として挙げられている。その背景は持続的成長を求めるところにあります。本当に、人口が減ることが悪なのでしょうか?という問いを持つ必要があるのではないかと考えています。
▼そのまんまストレートなタイトルの本もあります
期待値を定量化できるが、お金の期待値しか定量化されていない。
定量化だから測定できる状態になります。こういう効果が期待できるよねと数値化できる。ところが、今のところ資本主義社会においては、お金しか定量化の手段がないのが実情です。定量化できないことにはなかなか手がつかないんですね。
例えばミュージシャンみたいな仕事。「不安定な仕事はやめろ」みたいに、ずっと周囲に反対されている人が、僕の知り合いにもいます。ミュージシャンのようなものでなくても、「収入が読めないから、やりたいことを諦める」みたいな場面は、至る所で見ることができます。でも、お金以外で期待値の定量化ができれば、評価が全く違ってくる可能性があります。
全ての所有者が明確に決められている
これは実施場所が、トカイナカ・寄居町だったからこそ加えてみました。厳密には資本主義ではなく、民主主義の要素ほうが強いトピックかもしれませんが。
(とは言っても、資本主義と民主主義は、互いに関連しあってもいますね)
例えば土地。どこからどこまでを、誰が持ってるとか決まっている。個人ではなく法人や行政の時もありますが。
このことも、だいぶ限界来ています。相続で親から山を受け継いだけど、どうすんのこれみたいな。国に返すとか自治体に寄付するとかしたいけど、それもままならなかったり。「じゃあ、管理どうするんだ」などと、この辺りも、資本主義のあり方に疑問を呈しています。
とはいえ、これもやっぱり良いところもあったわけです。昔は、王様がいた時代とかは、王様の所有で、それに対して我々庶民が入っていって、畑を耕すとか、牛とかを育てるとかそういうのをやっていた。これが、自分たちのものではなかったという点では、前進しているとも言えます。
責任の所在が明確になっている点ではメリットです。その反面、自己責任という考え方が強くなって追い詰められる人がいる。責任を分散させて、大勢で所有するということが難しくなっている。
ファクトとして。ただ、見るところから
とりあえず今回は資本主義とはとういことで4つの側面を取り上げてみました。もっと別の側面も切り出せるのですが、とりあえずこの場の趣旨に合わせたものをピックアップしたかたちです。時間の関係もあり。
現段階では、何が言いたいわけではありません。まずはただ、「こういうもんだな」というふうに、客観的に見ていこうというのが今回の狙いです。
ここからは僕の所感も入ってきますが、以上から考えるのは、これでは経済的な格差が広がりやすいし、何より私たちが幸せになるのか?という疑問が湧いてきます。
特に環境破壊は深刻になっています。環境が破壊されたら、私たち人類も存続できませんね。
たまたま読んだ本(下にリンクを貼ります)では、2017年に発表されたドイツでの研究が紹介されていました。ドイツにある自然公園で、生息する昆虫の生態調査をしてたらしいんですよ。25年やってみたら、その間に公園内に生息する昆虫が3分の1まで減ってたというデータでした。だいぶ追い詰められているのが分かります。
別に悲観的になりたくて、この話をしてるわけではありません。僕らは、この状況があったからこそ、大切なものに気づくことができます。そうすれば、それが実現するような動き方に変えていくことができます。今回は、その最初の一歩という位置付けです。
これを知って、敢えて、現行の資本主義に合わせにいくのもアリだと思いますし、価値の無くなってきた側面をリニューアルしていこうという動きに出るのでも良いと思います。
いただいた感想
一通り聞いてもらって、参加者の皆さんから感想などをいただきました。
ちょっと前に『ブルシット・ジョブ』って本が出てますね。直訳すると「しょうもねぇ仕事」って意味ですけど、そのまんまですね。
最後に
勉強会で扱った資本主義についてを、この場でまとめてみました。
これまでを否定するでも無いですが、個人的には「ここはアップデートしていきたいですよね」って考えています。
この勉強会に参加している皆さんは、どこかのタイミングで「こういう生き方が大事だ」と決めて進んできたが、気がついたら「このままじゃ人生がバグる」「この先に自分にとっての幸せはないことだけは分かった」ってなっている方々です。
資本主義の考え方が、私たち個人の考え方に影響されています。それに呼応して生き方を選んだが、どういうわけかバグってしまった。
外側と内側で分けることを今回が試みましたが、実際は互いに関連はし合っています。
「世の中ってこうなっているから、こうすべきだよね」みたいなのは、多かれ少なかれ、誰にでもあります。ただ、その反応の仕方とか、どの側面から捉えるかは、やっぱり人によって違ったりします。そこは内側の世界が関わっているなという感じです。
ここでは、まずは「現状から始める」ということで、現在地が、こういう状態であるっていうところを見ていきました。
この後は、そこから生まれてくる理想のゴールを探っていくこと。そして、そのギャップを埋めていくことになります。ギャップがあると、どうしてもモヤるところではあります。でもこのギャップが無かったら、動こうっていう気持ちも起きない。この「落差エネルギー」を活用しよう、活力にしようというのがあります。
付記
今回の内容は、元々、僕自身が5~6年前からポスト資本主義的な動きに着目してきたところがベースにあります。
その上で、次のPodcastの内容を大いに参考にさせてもらいました。今回、敢えて外している内容もありますので、興味がある方は、ぜひ聞いてみてください。僕は運転中や家事をしながら聞いています。
(本記事の内容に関しては、僕自身の力量によるものなので、間違い等があれば、僕の責任になります)
参考図書
今回はポスト資本主義に関するトピックでした。
このスタディ・グループで扱うと良さそうな関連書籍も挙げておきます。