さちあれ 20240314
昨日は、夫と『みなに幸あれ』という映画を観に行きました。
映画を見る前に立ち寄った古書店で、「今の時期に映画と言えば『PERFECT DAYS』でしょ?なんでホラーなん?」と、店主に呆れられました。
確かに。。
『みなに幸あれ』は、界隈ではジャパニーズホラーの新境地を切り開いたと言われてる怪作。
たしかにホラー映画なのだけど、「誰かのしあわせは、誰かの犠牲の上に成り立っている」という、この世界の残酷な真理を各場面でことごとく突きつけてくるので、ある意味では非常に哲学的な映画でした。
でも不思議と、真剣なシーンで笑えてしまう妙な表現とリズムがあって、「わたし、怖いのに笑ってる」と、愚かさに似た感情の脆さを発見したりもしました。
映画館を出たあとには、なぜか清涼感に包まれていて、おもしろかった、と素直におもいました。
古書店の店主が、「ひとを怖がらせるよりも、ひとを笑わせることの方が、はるかにむずかしいんだよ。」と煙草に火をつけながら言いました。
その言葉はなぜか、「知ることは、感じることの半分ほども重要ではない」というカーソンの言葉に重なりました。
「オレは、今目の前にいるきみの夫を笑わせる自信ないわ。」
そう言って儚げな遠い目をして、火をつけた煙草をおもむろに鼻に突っ込んだ店主を見て、わたしは簡単に大笑いしたのでした。
夫は笑うどころかキレ気味な表情で、「くだらないことしてないで映画行くぞ」とわたしの腕を引っ張りました。
その瞬間、たしかにおもったのです。
傲慢なほどにつよく、みなに幸あれ、と。
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