宇宙の中の私とクドウさん
影絵のようにゆらゆらと鳥が飛んでるのかと思った。
昔住んでた街へ行った。
気がつけばあっという間に10年が経ってた。
困ったときにいつもお世話になってる治療院へ顔をだし、先生と出会った頃の話をした。
お互い、見た目かわってないねと笑いあった。
現在進行形で今が進んでいて、それは昔もそうだったから、ずっと今を生きていたはずなのに、あの頃はいつのまにか過去になってた。
先生と私の関係は、昔も今も変わらない。
だけど、治療院の近くのラーメン屋のメニューは変わり、友達が住んでたアパートは外壁の色が鮮やかになった。スーパーがつぶれて歯医者になってた。
よく待ち合わせで使ったコンビニは、変わらずにあった。
私も変わった。
変わらないつもりだけど、少しずつ変わった。
好きなものもきらいなものも、映画を見た本数も。
身長も少し伸びた。
あの頃大好きだった恋人とはもう会えないし、親友は結婚して引っ越していった。
新しい友達が出来たし、新しい仕事を始めて生き甲斐を感じてる。
一点だった宇宙が、ある大きな爆発が起こったことによってすごいスピードで膨らんでいる、と聞いたことがある。
いつも見上げてる空の向こうでは何が起こっているんだろう?
星が消えたり、産まれたり、しているんだろうか。
夜中、隣の部屋からお姉ちゃんの寝息が聞こえてくるのに、なぜか一人ぼっちのような気持ちになることがある。そんなときに耳に響くザワザワとした音は、もしかして空から聞こえるのだろうか。
宇宙のことを考えるとよくわからなくなる。
ここにいる私はなんなのだろう?
誰に守られて生きているんだろうか?
宇宙がなくなったらみんないなくなるのかな。
私が落ち葉を両手で拾ってみるように、私の今は、大きな誰かが拾ってくれたものなんだろうか。
綺麗な色だったら見つけやすいだろうか。
変わっていくことが切ないような気がする。
だけど、変わらないものは何一つないのだと思う。
そんなことを想い、霞む月を見ながら懐かしのコンビニに入った。
あっ!
レジに並んでビックリした。
10年前も働いてた、クドウさんがいた。
ありがとうございましたって言うとき、肩を少しあげながら手を擦り合わせるクセ、今も変わってなかった。
同じ歳くらいだと思うんだけど、少し白髪になってた。
彼は私が引っ越してからもずっとここにいたんだ。
ずっと。同じようで変わっていく、コンビニの商品に囲まれて生きてたんだ。
変わっていく私とここにいてくれたクドウさん。
なぜだかホッとした。