第43巻 修学院離宮
第43巻 「 修学院離宮」
和田邦平 著 1963年刊行
17世紀中頃、江戸幕府の治世が始まり「禁中並公家諸法度」という法律のもと皇族と公家の行動と立場が大きく制限され、尊厳を傷つけられて、突如譲位した後水尾天皇が隠棲生活のために造営した修学院離宮を細部に渡り紹介します。政治の世界から距離を置き美しい物だけに囲まれた人生を夢見て、センスの限りを尽くした美の世界は、平安から中世を経て江戸期に到る日本文化の洗練の到達点を見ることができます。
寺とは違う小さな門構えが、山荘にふさわしい風情を醸し出しています。このような美しく自然に囲まれた山荘もその造営についての背景は当時の幕府と朝廷の複雑な政治的問題から始まっています。後文では著者がわかり易く説明していますので、見学に行く際には事前によく読んでおかれることをお勧めします。
三畳の御座所の床の間の飾りと右手にあると言う琵琶床が中世の文化を残しています。貴族社会で培われた深い教養と文化を持って武家社会に静かに挑むメッセージ性があります。
霞棚は書院棚としては立体的でモダン、型破りなデザインであるとも言えます。天皇の地位を捨て解放された上皇は、世の中の嫌なことも全て忘れて自らの趣味と教養を発揮し、何者にも囚われることのないデザインの山荘造りに没頭したのではないでしょうか。
釘隠しや引き手などの細かい部分の意匠にも、洗練し尽くした拘りを発揮しています。美への執念と気迫を見る物に突きつけられているように感じます。