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【インタビュー】「デザイナーでもあり、ファンでもある」新井孝徳さんが見るColorbathと、表現の可能性

NPO法人Colorbathは、国内外の様々な方々とコラボレーションしながら、「教育」「ソーシャルビジネス」の分野で、幅広い活動を行なってきました。

一人ひとりの想いに寄り添い、カタチにしていくことを大切にしてきたからこそ、伝えられる言葉があると考えています。

インタビュー企画第2弾は、チーフデザイナーとして、Colorbathの世界観作りに深く関わってきた新井孝徳さんに、お話を伺いました。

新井孝徳さん
1985年大阪生まれ。デザイン系専門学校卒業後、看板制作会社、広告企画制作会社を経てフリーランスとして独立。2019年よりColorbathのデザイナーとして各プロジェクトのロゴや広報物の制作に携わる。コーヒーと読書が好きな人。

制作に欠かせない、"肝を見抜く"チカラ

インタビュアーと、話し手。
その立場の違いを越えて話題に上がったのは、「制作物を作る中で必要となる、削ぎ落とすプロセス」のことでした。

ーーColorbathの情報発信チームでは、今後、「人に関するコンテンツ」を増やしていきたいなと思っています。一人ひとりの想いやバックグラウンドを伝えていくことで、Colorbathを多面的に理解してもらいたいなと。その方法として、このインタビュー企画やラジオを始めています。

Colorbathって、周りから見ると全体像が分かりにくい部分があるから、ラジオにしてもnoteにしても、すごくいいと思う。Colorbathにとってプラスになるなあと思って、最近見てました。毎回楽しみにしています。

ーーありがとうございます。そして新井さんには、今ちょうど、ラジオのサムネイルデザインをお願いしています。とても素敵なものを作っていただき、嬉しいです。

面白さと、難しさがあると思っています。。ラジオの雰囲気と、よっしーとむっちゃんが良いって思う雰囲気に、結構距離がある気がしていて。ラジオはわいわい楽しそうな感じだけど、サムネイルはシンプルで、淡い色味がいいという感じというのが、合わないような気もしてるので、これから二人の要望も含めてブラッシュアップしていきたいと思っています。

ごちゃごちゃして欲しくない、色はあまり付けずに、聞く人それぞれの色味で楽しんでほしいって思いが、Colorbathのデザインにはあるので、そこがちょっと難しいと感じるかな。

でも、そうやってああだこうだ言ってるプロセスも含めて、今後のラジオにとっても大事なことかなと思うので、楽しいです。


※よっしー…Colorbath CEOの吉川雄介さん
※むっちゃん…Colorbath CCOの椎木睦美さん

「よっしー」こと吉川雄介さん、「むっちゃん」こと椎木睦美さん

ーー制作の具体的なプロセスについて、お聞きしたいです。

ものによって多少の違いはあるけど、今回のサムネイルの場合は、まずラジオのコンセプトや肝になる部分のヒアリングから入りました。どういう人が使って、どういうふうに受け取ってほしいか。そういう根幹の部分から聞いて、「これで意味あってる?」みたいなやりとりをしてから、その情報を頭に入れて、鉛筆やシャーペンを使った手書きラフから始めます。それをパソコンで起こした段階で、全体の5割くらいかな。

Colorbathの制作プロセスで面白いなって思ってるのが、この5割ぐらいの段階で見てもらったときに、よっしーやむっちゃんの意見がたくさん出てきて、そこからどんどんアップデートされていく過程。ちょうど今、ラジオのサムネイルはその段階です。

ーーデザイナーさんってすごいお仕事だなって思う点があって。私も普段、Colorbathメンバーから聞いた話を記事にしていくという作業はするんですが、文章って言葉を尽くそうと思えば尽くせてしまうんですよね。究極、米印を使って補足とかも足せる。デザインの場合は、盛り込みたい思いがいっぱいあって、アートとしても1個完成させなくてはいけない中で、色々と削ぎ落とす作業が発生するんじゃないかなと思っています。

でも、文章を編集するときも、書き足せるとはいえ削ることの方が多いよね。インタビュー記事でも、その人の本当に言いたいところの本質というか、肝の部分を捉えて、それ以外を削ぎ落とさなくてはいけないと思うんだけど、デザインでもそんな感じかな。編集と一緒な気がする。

ーーなるほど。確かに編集では、人の言葉を活字に起こすという時に、肝を見て削るという作業はありますね。共通項があるのかなと思いました。

それの究極ってキャッチコピーとかだよね。10文字以内とか。コピーライターさんの技術ってすごいなといつも思うけど、やってることは同じような気もしますね。

Colorbathのデザインは、3人体制。そのプロセスが面白い。

対話の中、思わぬ形で見つかった、「文章」と「デザイン」の共通項。ただ、大変とは言いつつも、そこに楽しさを見出している自分もいます。新井さんも度々「面白い」という言葉を使われていました。その思いの真髄に、さらに迫っていきます。

ーー肝を探っていくのは、楽しい過程でもありますよね。根幹を見出すためには、相手とたくさん会話を交わさなくてはいけませんが、その中で、その人の「やりたいこと」「伝えたいこと」が明らかになってく、鮮やかになっていく気がします。

そうだね。そこが面白い。僕は吉川くんはアーティストだと思ってて、本当に芸術家的な感じで見ています。デザイン案を見せた時に出てくる意見が独特だったり、そういう目線があるのかっていうものが出てきたり。

よっしーの要望として「赤」って言ってても、本質を聞いていくと実は赤じゃなくて青だったみたいなことがあって、その変化が面白い。それで振り回されることも結構多いけど、そこはむっちゃんがサポートしてくれるっていう感じかな。

Colorbathのデザインは、僕一人でというよりは、よっしーとむっちゃんのエッセンスが加わって、3人体制完成させることが多いので、そのプロセスがすごく好きです。

ーー吉川さんの話が出ましたが、むつみさんの感性にもらしさがあって、人のこと、温かみを考えてるというイメージが個人的にはあるのですが、新井さんにとって、むつみさんのフィードバックからくる印象はどんな感じですか?

心とか人、周りのコミュニティや人の関係性にフォーカスを当てるのがむっちゃんな気がしています。自分自身を深掘りするのはよっしーみたいなイメージ。

デザイン的な考え方が、むっちゃんと僕は近いかなという感じがしています。ABCって選択肢がある時に、僕とむっちゃんはAを選ぶことが多い。で、よっしーはAとは真逆のCを選ぶことが多いかな。

ーーこの間のBGM決め(※)のときも、そうでしたね。

目の前で聞いてたんだけど、そんな綺麗にわかれるかって感じだった(笑)。あの時も、横で作業しながら、僕はむっちゃんと同じ意見だった。だからどちらかというと、感性とか選ぶものとかがむっちゃんと似ている気がします。

※おずもなラジオ第3回「仲間割れ!? 色々あったラジオのBGM会議」の収録にて。この日、二人がいた大阪オフィスを、新井さんも訪れていた。4つの候補がある中、吉川さんと椎木さんの意見が見事に食い違うという展開に。最終的に議論がどう纏まったかは、ぜひラジオをお聞きください。

社会のためになることに、デザインを使いたい

新井さんが信条としている、「社会課題解決のための、ソーシャルデザイン」。ここからは、その思いの裏側について、お聞きしていきます。話は、Colorbathとの思い出にも、及びました。

元々は、デザイン事務所に所属し、スーパーのチラシや家電カタログなど、商業的なデザインを中心に制作に取り組んでいた新井さん。終電を逃すこともあるほどのハードワークのしんどさと、「社会のためにデザインを使いたい」という思いから、フリーランスになることを決意します。

そして2〜3年、親戚の立ち上げたNPOでデザイナーとして働きました。しかし、NPOの資金繰りの難しさから、主に制作するものは他の企業のチラシやホームページ。フリーランスになる前と変わらない仕事内容に、違和感を抱くようになったそうです。

なんか違うなあってなった時に、そのNPOのつながりで吉川くんと出会って。その時はまだむっちゃんもいなかったから、一人でいろんな事業を起こしてる人がいるなぐらいの印象だった。

そのあと、僕が元々のNPOをいったん離れて自分でいろんな仕事をやっていく中で、年に1回か2回ぐらいよっしーと会う機会があって。具体的にColorbathと一緒にやりましょうってなったのは、むっちゃんが入ってきた後だから、2019年ぐらいだったかな。

出会いから長きに渡り、新井さんはColorbathの世界観づくり、クリエイティブに関わってきた新井さんですが、その制作の過程にはいつも、豊かな「対話」や「コミュニケーション」がありました。

ーーデザインを通して様々な形で関わる中で、印象的だった出来事はありましたか?

どれも印象的だったけど、二つ言わせてもらうなら、一つは「DOTS」のロゴ。Web交流をもうちょっとブランド化させてアクティブにしていきたいっていう話になった時に、ネーミングからみんなでミーティングして。

自分の世界が一気に広がるんじゃなくて、まず"点"を打ってそこに気づくみたいなそういうストーリーを絵にしていって、そこから「DOTS」になってみたいな感じでした。

もう1つの候補もある中で、みんなで投票したり意見を交えて何度も考えて、今のあのカラフルなロゴになった。このプロセスが面白かったな。

Web交流プログラム「DOTS」は、Colorbathの活動の原点とも言える活動。
日本・ネパール・マラウイという未知なる国とつながるという原体験を通して、自分自身のみえる世界(視野)を拡げるきっかけを届けてきました。

2021年に行われた、ネパールとの交流の様子。

当初は"Webコミュニケーション"を略した「WEBCO」という案も上がっていましたが、最終的に「DOTS」に決定。現在のカラフルなロゴが完成しました。

「DOTS」ロゴができるまで。新井さんが描いた数々の手書きラフ。
現在のDOTSロゴ。


もう一つ印象に残っているのが、2019年12月の「Colorbath展」。
よっしーが「Colorbathを表現する展覧会みたいなのをしたい」って言ってて、最初は正直、どういうことをやるのかよくわからなかった。でも、「パネルを飾って展示するだけじゃなくて、そこにColorbathのさまざまなプロジェクトに関わっている人がきて、コミュニケーションをする空間や空気感をつくりたい。」ていうコンセプトを聞いて、いいなあって思って。やっぱり、吉川くんはアーティストだなって。

コンセプトを聞いたのは夏ぐらいで、冬の開催に向けて動き出したのは秋過ぎてからだったかな。ここで制作したのが、水彩で優しい雰囲気のColorbathのロゴと、今はアニュアルレポートの形で冊子になっている、展示用のパネル。

僕も実際にColorbath展の会場に行って、ネパールのコーヒーを入れてもらったり、ネパールのカレーを食べたりしながら色々な人に話して。それが印象的な思い出ですね。楽しかったです。

2年前のColorbath展は、プロジェクトに関わってきたさまざまな「人の想いやつながり」を表現し、「人の展示」にこだわって開催されました。普段はオンライン上やメッセージでのやりとりでつながっていた人たちが大阪に集結し、対面でのコミュニケーションを深めていく場となりました。

2019年12月、「Colorbath展」の様子
水彩画風のロゴ。

Colorbathのデザイナーでありながら、Colorbathのファンでもある

ここからは、「Colorbathで制作をするにあたり、考えていること」について。デザイナーとして新井さんが大切にされていることや、Colorbathの見方、関わり方を深掘りました。

ーー私が個人的にも聞きたいなと思っているのが、プロジェクトメンバーではなく、現場から伝わって来たものから刺激を受けたり、情報をいただいてアウトプットする立場だからこそできることについて。抽象的な問いにはなるんですが、考えられていることってありますか?

僕はそこの立場がすごく好きというか、デザインをしてる理由も結構そこにあって。活動している人がいること、やってることが一番大事で、それを多くの人に知ってもらったりとか、共感を生み出したりすることをサポートするツールの一つとしてデザインや文章があったりするのかなって思ってます。

僕個人の性格としても、頑張っている人や良いことをやっている人を応援したいっていう思いが強いし、特にColorbathに関しては、よっしーやむっちゃんが常々取り組んでることが本当にいいなあ、世の中に広がったらいいなって、自分自身が心底共感して広めたいと思ってるから、デザイナーとして関われているのかなと思います。

ーー心底共感しているからっていうのは、私も同じです。Colorbathを知ったきっかけはDOTSでしたが、そこから全体のコンセプトにも共感するようになって、自分の強みである文章を通して関わっていきたいなと思いました。表現だからこそできることというと難しいですが、まずは自分が楽しんでいるのが大きいですね。

Colorbathのデザイナーでありながら、Colorbathの一ファンでもある立場かなって思う。

僕がよっしーは本当にアーティストだなって思うのは、よっしーは、教育のこともネパールのことも、本当に良いことと思って自信を持って取り組んでるのに、別に広まらなくてもいいみたいな発想もどこかにあって。わかる人にだけわかればいいみたいなスタンスの時がちらちらある。でも僕は、よっしーはそのスタンスでいいと思う。ひたすら、自分が立ち上げたColorbathを、チームとして、理念に沿って育てていくのでいいと思うんだけど、周りでデザインや広報を通してサポートするのであれば、一人でも多くの人に知ってもらうということができればいいんじゃないかな。

アップデートされ続ける中で…

Colorbathではよく、「4倍速の時間の流れ」という表現が使われます。3ヶ月が1年に感じられるほど濃密な経験の中、表現したものがすぐに結果に結びつくとは限りません。

それでもデザインや文章を通して世界観に向き合い、カタチにしていくことの価値ややりがい。新井さん自身は、どう捉えているのでしょうか。

ーー1人でも多くの人に知ってもらうためにデザインを考えたり、言葉を尽くしたり、届けたりっていうのは終わりも正解もないのが、難しさでもあり、楽しさでもありますね。私が情報発信に関わる中で考えているのが、Colorbathの活動を、拡声器みたいなイメージで瞬間的に誰かに伝えるだけではなく、歴史のように積み重ねていくっていうことにも価値があるんじゃないかっていうことで。心を込めて紡ぎ出されたものをストックしていくという感覚も大事にしたいなと思ってるんですよね。この辺り、新井さんはどうですか?

Colorbathは、形をどんどん変えていっている。過去に作ったデザインも、一年後見てみたら今のコンセプトや活動内容にあってないということもあるんだけど、それはColorbathが変化し続けているということで、だからこそ合わなくなってるんだなと思ってて。僕自身のデザインの技術も変化したりするから、この携わった3年だけでも、ずっとアップデートされ続けてるみたいな感じがあります。そうやってじっくり少しずつ変化を重ねながら、共感してくれる人を増やし活動のフィールドを拡大していくのがColorbathらしさであり、魅力だなと思っています。

過去に作ったものを並べてみることで、Colorbathの歴史や変化がみれるのが、面白いです。

よっしーもむっちゃんも形とかモノに拘らないところが共通してて、「本当にやりたいことができているか」「関わる人たちが生きたいように生きれているか」を考えているから、団体の在り方や捉え方、人の関わり方もどんどん変化する。いいなあ、と思う。二人のそういうところが。


ーー変化するColorbathや、吉川さんやむつみさんの人柄に魅了されている人はたくさんいますよね。私自身も、「まだまだ知らないColorbathの面がたくさんあるんだな」って思う場面が度々あります。安心感もあるけど、ワクワクドキドキもさせてもらう、そんな場所だなと感じます。

デザインを武器に、アーティスト二人のサポートをしていきたい


ーー最後に、新井さんがデザインを通して今後やっていきたいこと、Colorbathとの関わりについて、お聞きしたいなと思います。

今時点の希望というか理想としては、Colorbath自体が、よっしーとむっちゃんが作る、世の中に出す「作品」だと思っています。デザインを通して、その「作品」を世の中に広めていきたいっていうのが、僕のやりたいこと。

デザインを通してColorbathとずっと繋がっていきたいし、いつかはネパールとかマラウイにもいきたい。そこでできることはないと思うんだけど、行ったことによって、きっとアウトプットにも変化があるので、自分としてはデザインを通してアウトプットのお手伝いをしていきたい。デザイナーとして、アーティスト二人のサポートをしていきたいと思います。

編集後記

一つ一つの問いに対して、丁寧に言葉を探す新井さんの姿が、印象的なインタビューでした。そしてその姿勢は、普段の制作の過程でも貫かれており、Colorbathでのデザインの温かさや優しさ、説得力につながっているんだろうなと思います。

終盤、「今はツールやアプリが充実しているから、素人であっても、それっぽいデザインを作ることはできてしまう」という話題から、「シビアなアウトプットの世界では、努力して頑張って作っても、それよりいいものがツールによって10分でできてしまうこともあるよね」とも口にされた新井さん。

確かに、アウトプットのクオリティだけに着目すれば、そのようなことが起こりうるのだと思います。しかし、新井さんとの1時間の対話を終えた後の私は、アウトプットの裏側にあるプロセスやストーリーにも、人の心を動かす力や価値が十分に秘められていると、思うようになりました。 

デザインを考えるときも、文章を紡ぐときも。コンテンツを完成させるという目的のもと、様々な人が意見を語り合い、ときにはぶつかり、それぞれの強みを活かして一つのものを作り上げていく。その時間はとても贅沢で、わくわくが詰まっていて、この先の明るい未来につながるものだと、確信しています。

今後のColorbathが、ますます楽しみになりました!

(聞き手・文:櫻井かおり)

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