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【インタビュー】命も環境も、やりたいことも。全てを選んだからこそ辿り着いた、色鮮やかな未来。

こんにちは、Colorbathの櫻井です。

今回から、Colorbathのプロジェクトにまつわるメンバーの思い、人生を深掘りする記事を掲載していきます。

第1回目は、ソーラーボイラープロジェクト担当の、べっきーさんこと池邉佳織さん。

看護師を志した理由から、マラウイでの活動経験、「自分を見つめ直す」時期に考えたこと、Colorbathでの活動にかける思いまで...たっぷり語っていただきました。

池邉佳織さん
鳥取県出身。看護師として勤務後、JICA青年海外協力隊やNPO法人ISAPHのメンバーとして、5年間マラウイで公衆衛生などに取り組む。現在は、Colorbathで「ソーラーボイラープロジェクト」を担当。現地との橋渡しを担っている。また、ダイビングショップのスタッフとしての顔もあり、海や自然をこよなく愛する。


ソーラーボイラープロジェクト
「太陽の力で、命と地球を守る」をコンセプトとして活動。
太陽光のエネルギーでお湯が沸かせる「ソーラーボイラー」の普及を通して、マラウイの衛生環境の向上・環境保全に取り組む。
詳しくはこちらをチェック↓
http://color-bath.jp/projects/solar-boiler/

2019年、ソーラーボイラーをマラウイに設置。

「自分の人生だからやりたいことをやろう」

池邉さんが看護師を志したのは、高校生のとき。恋愛で振られたことをきっかけに、生きる意味を考え直していた時期でした。

アフリカの医療が整わない地域で、日本では助かるような病気で子供が亡くなってしまうのを目にして...、こういうところで働けたら、生きる意味があるかも知れない、この人たちのために何かしたいと思った。

あと、自分は日本で恵まれた環境で生きてきたことに気づいて、ハッとして。普通の暮らしがすごく幸せなことだったんだなと気づいた。

愛に包まれた環境にみんなが生きて、笑顔になれる。そんな世界になったらいいなと思って、医療系の仕事として、看護師を選びました。

看護師の資格を取得後、消化器外科で働き始めた池邉さん。がんの患者さんが多い場所で、亡くなる方もいたそうです。そんな中、ある患者さんからかけられた言葉に、心を動かされました。

「動けるうちにやりたいことやっておいた方がいいよ」と言われて。病気になって死と向き合った人の言葉だから、すごく印象に残っている。その時に、「アフリカで人の役に立ちたい」という目標を改めて思い出して、それが動くきっかけになった。

あと、うちのおじいちゃんが、元々は戦争の経験もあって外国に不信感もあったけれど、最終的には応援してくれて。

それで、「自分の人生だからやりたいことをやろう」って思えたのかな。

池邉さんは、自分の行動のエネルギーについて、こう語りました。

やりたいと思うなら動いてみよう。動けないなら、それほどじゃないんだなって思う。やりたいと思うならやりなよ!って、自分で自分に言っている感じ。

動きたい!と思った時は、自分の内側でも外側でも、その準備が整っているということ。だから、安心して一歩を踏み出していい。温かくも力強いメッセージが、心に響きました。

「なぜそれをやるのか」

3年間看護師として働いた後、「英語を学び海外生活に慣れるために」オーストラリアに渡航。

オーストラリアではダイビングと出会って。元々好きだったけれど、より海の中を知れた。色々な人と英語で話せるという体験も貴重だったし、あと、「自分がこうできたらいいな、こうなれたらいいな」を実現している人たちがたくさんいて。海外に出たからこそ、そういう経験ができたのはすごくよかったと思う。

刺激に満ちた海外生活から帰国し、池邉さんは「JICA青年海外協力隊」に応募しました。医療に貢献したいという思いに加えて、ヒップホップやレゲエなどの黒人文化にも興味があったそう。アフリカ行きへ強い意志がありました。

派遣内容には色々あったんだけど、私は実際に暮らしている人のところに行って、病気になる前の予防方法を教えたい。現地の人が自分の住んでいる地域で、普段の生活を続けられるような支援がしたいと思っていて。そうして選んでいったら、マラウイがあったっていう感じかな。

マラウイでは、ヘルスセンターでの乳幼児健診と栄養失調児の治療プログラム、そして学校保健に取り組みました。

ヘルスセンターでの活動では、健診や予防接種がきちんと行われるために、スタッフに「なぜそれをやるのか」を伝え、指導を行ったそうです。また
、お母さんたちに対しても、栄養状態改善のためのレクチャーを実施しました。

学校保健分野での活動では、HIVの予防・マラリアの予防・栄養知識・日本紹介の4つをテーマに、色々な学校を回って授業を行うというものでした。

JICA青年海外協力隊の活動中に

これらは、もちろん医療活動でもありますが、「人を育てる」という分野でもあります。コミュニケーションの難しさを感じた場面もあったそうです。

一番難しかったのは、協力してくれる人を見つけるっていうことかな。彼らにも自分達の生活や都合があるから...。自分が日本の当たり前を持ち込んでしまったり、彼ら目線で考えられていない場面もあった。

「本当に同じ世界なの?」

2年半の活動を終え、日本に帰国した池邉さん。その時の気持ちについて、こう語ります。

マラウイでは、医療、教育、インフラとか、色々な問題を見てきて。でも、帰ってきたら、日本にはそれが全てある。違和感があったし、本当に同じ世界なの?って思った。

マラウイでさまざまな問題を目にした自分と、便利な生活にすぐに馴染めてしまう自分。そのギャップに、戸惑いを覚えたそうです。

そして、知っているなら行動を起こしたいと、思うようになります。そんな時に声をかけてくれたのが、前職(NPO法人ISAPH)のメンバーだったそうです。マラウイ滞在中に住んでいたマニャムラという地域でプロジェクトをやると聞き、池邉さんは再びの渡航を決意します。

自分の住んでいたところでできるなら、もう一回やりたい!と思った。あと、日本で生活していると、アフリカの360度の景色とか、子供たちの笑顔とか、お母さんたちのエネルギッシュな感じとかをすごい思い出して。住んでいた地域の人の為にもう一度働きたいと思った。

忘れられなかった、子どもたちの笑顔

行動しなければという責任感に加えて、マラウイでの色鮮やかな生活の記憶に背中を押され、帰国後わずか7ヶ月で、再び現地に戻りました。

2回目の渡航では、妊婦さんに対する支援と、栄養改善に取り組んだそうです。より現地の生活に根ざした活動ができたことに、手応えがあったと語ってくれました。

栄養バランスの観点から、これを食べるといいよという話をしても、そもそもそれがない、買えないということがある。それが課題だなって、協力隊の時は思っていた。でも今回は農業と医療を合わせたプロジェクトだから、ないと言われたものについては自家栽培したり、家庭菜園を通して収入向上をしたりして、栄養価のあるものを手に入れられる状態にできた。農業を通すと男性たちも興味を持ってくれたり、栄養失調の深刻さを理解してもらえたり、さらに深く関われる流れが作れたのは、成果だったと思う。

ISAPHメンバーとして活動中に

「1年ぐらいは自分が何をしたいのか、わからなかった」

合計5年間の活動を終え、日本に帰国。

池邉さんは、「自分が本当に何をしたいのか」見つめ直す時間を過ごしました。

足が向いたのは、やはり大好きな海。

とりあえず海に行こうと思って、沖縄でダイビングしたり素潜りしたり。ますます海に引き込まれていったし、海を通してゴミ問題や森林など、地球全体のこと、環境問題にも関心を持つようになった。

でも、結局1年ぐらいは自分が何をしたいのか、わからなかったかな。マラウイに関わりたい気もするけど、地元で落ち着きたい気もするし...。悩んで、自分と向き合う時期にした。

海が好きな気持ち、アフリカでの活動したいという思い、環境問題に対する興味...。気持ちが揺れ動く中、ダイビングショップのオーナーに一緒に働くことを誘われたそうです。

ダイビングで海に関わったら、環境問題にも範囲を広げられる。でも、アフリカにも関わりたい。そこにもアンテナを広げようと思ってて。

ダイビング中の1枚

やっぱり、マラウイに行きたい。自分と向き合い、一つ一つ選択する中で、あらためて自分の気持ちに気づいた池邉さん。その思いを、友人二人に宣言します。そのうちの一人が、協力隊をきっかけに知り合った、Colorbathの椎木睦美さんでした。

マラウイはもういいやってなっていたけど、もう一回マラウイに行きたいっていう思いが、自分と向き合ううちに出てきて。その時に、むっちゃん(椎木さん)と友達もう一人に、私やっぱりアフリカと関わりたい!これから探していきたい!っていう宣言をしたんだよね。そしたらむっちゃんが、じゃあ一緒にやろうよ!って声をかけてくれた。

Colorbathがソーラーボイラーをマラウイに設置した2019年、ちょうど2回目の渡航で現地で活動していた池邉さん。「命と地球を守る」ソーラーボイラープロジェクトに共感していたこともあり、Colorbathに参画することが決まりました。

左端が池邊さん、左から二番目がColorbath代表の吉川さん、右から四番目が椎木さん

Colorbathでの仕事はオンラインでさせてもらえるし、むっちゃんたちもダイビングしながらでもいいよと、私のやりたい事も応援してくれて。そしたら途上国のことも環境のことも、地元にいながら全部できるじゃん!って思えた。すーって繋がった感じかな。

地元で家族や愛猫たちとの時間を楽しみながら、「やりたいこと」であるダイビングや環境問題、マラウイでの活動に取り組む。

充実した生活を送る池邉さんの笑顔が、とても印象的でした。

「橋渡しとなることで信頼感ややる気につなげられればいいな」

ソーラーボイラープロジェクトにおいて、池邉さんがまず取り組んだのは、「人脈作り」。

まずは、今まで5年間で築いてきたマラウイでの人脈を、全てColorbathにつなげること。私は現地の知り合いも多いし、言葉も喋れるし、橋渡しとなることで信頼感ややる気につなげられればいいなと思ってる。

これから色々な活動をして、未来をデザインしていけると思うけど、そのスタートを広げられるっていうところがやりがい。色々なことができるんだろうなっていうワクワク感がある。

2021年11月には、Colorbathメンバーとしてマラウイに渡航。池邉さんにとっては3回目ですが、さらに視野が広がる経験があったそうです。

(エネルギー源のための)薪を作る人をみたときに、その人たちも環境破壊をしているけど、そうするしかないという現状があるんだなって。

今までは、みんながソーラーボイラー使えばいいじゃんって、それが100%良いこと!みたいに思ってたけど、それでお金を作って、生活を支えている人もいる。

薪の生産がなくなったら、その人たちの生活も変わってしまう。

(森林の伐採が環境破壊につながると)知っててもやらざるを得ないって、自分だったら辛いだろうなぁって。

そういう思いを知れたのは、視点がすごく広がった経験だった。

マラウイでは、エネルギー源の90%を薪に依存している

そして、もう一つ発見がありました。

現地の人が、環境問題を真剣に捉えてくれていて、ボイラーの導入に対しても前向きだったのが印象的だった。

こういう途上国支援、国際協力とかって、こっちの理想をあっちに置いていくみたいな...向こうの現地の人が本当に望んでいるかにかかわらず進んでしまうことがある。

でも今回はちゃんと問題意識が伝わって共有できているのが本当に嬉しくて、モチベーションにもなった。

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ムジンバの県病院にて。右から三番目が池邊さん。

2022年1月には、ソーラーボイラーを開発した方を訪ねるため、姫路へ。

福寿さん(ボイラー開発者)の思いを知れてよかった。人生のことや、熱いところに直接触れられたから、その思いも大切に今後活動していきたい

ソーラーボイラーの構造を細かい部分まで教えてもらえて、これでマラウイ側にもより効果的な使い方を教えられる。

段ボールに部品を詰めて送るときにも、福寿さんはさまざまな工夫をされていて、それを知ったら、ソーラーボイラーにも、送ってきてくれる箱にすら、愛着が湧いた。

ボイラー開発者の福寿さん。姫路にて。

「Colorbathは、人生の中の『わくわくパート』」

今後のソーラーボイラープロジェクトについて、池邉さんは様々な可能性を思い描いています。

ヘルスセンターでの医療器具の煮沸に使えたら、新しい分野だなと思う。確かな需要があるから、実際に稼働するのがとても楽しみ。

コミュニティにおいても、ボイラーを使って色々な料理を作っていけたら面白い。レシピを考える人がいて、ボイラーを使って色々なところで実演したり、それがテレビやラジオを通してマラウイ中に広がったり...。可能性がたくさんあるなって思う。

そしていつか、マラウイの人たちが薪をとらずに済むようになったら嬉しい。薪の生産で生計を立てている人たちも、ボイラー導入してよかったって言ってくれたら.....その状態がどんなのかはまだわからないけど。そう言ってもらえる未来を見たいな。

そして、ソーラーボイラーを通して伝えていきたいことについては、こう話してくれました。

自分が中学生とか高校生の時は、途上国のことも全然知らなかった。色々な世界があること、そして、自分が動いたら、自分がやりたかったことに近づけること、可能性がたくさんあるんだよっていうことを伝えたい。さまざまなことに興味を持ってほしいし、視野が広がるきっかけになってほしい。

これまでも、 中高生とマラウイについて対話したり、バーチャルツアーで日本の子どもたちがマラウイを知るきっかけを作ったりと、「伝える」活動に取り組んできた池邉さん。

真っ直ぐに「やりたいこと」に向き合うその姿勢は、これからもたくさんの人の心を動かしていくと思います。

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中学生との交流会にて。

最後に、池邉さんの人生にとって、Colorbathとはどんな存在か、聞いてみました。

人生の中のわくわくパート。Colorbathの名の通り、人生を色鮮やかにさせてくれる存在だなって思う。

編集後記

今回、池邉さんの原点から、マラウイでの経験、ソーラーボイラープロジェクトにかける思いまで、じっくりとインタビューさせていただきました。

温かい人柄で、いつもColorbathメンバーの心を照らしてくれている池邉さん。その背景には、マラウイの人々の生活や医療と真摯に向き合った日々と、自身の人生や考え方にも丁寧に向き合う姿勢がありました。

「自分の人生だからやりたいことをやろう」という前向きな力強さに、私も心から励まされました。

ソーラーボイラープロジェクトも、池邉さんの人生も、これからどんどんカラフルになっていくことと思います。

その様子をみなさんにお届けできるよう、私も頑張っていきます!

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

また次回のnoteでお会いしましょう!

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