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インボイス制度とサラリーマン、の話。

最初に断っておきますが、私は脱サラ組の個人事業主ですし、専門家ではありません。一介の、経理も自分のとこなら多少できる個人事業主が、調べている範囲内でのインボイス制度とサラリーマンが受ける影響の話をしたいだけです。

後、消費税を払っていない個人事業主が、「脱税だ!」って感じることは理解しますが、消費税の歴史も割と見てもらえるといいかなと思っています。その辺の話もします。

1.インボイス制度が始まるとどうなるの?

もう、こういうのにアレルギーが出ている人もいるでしょう。っていうかタイトルの時点で読まないでしょうか。経理大嫌い。数字なんて見たくない、っていう個人事業主は割と見ます。
私は全く逆で、数字を見るのは割と好きですし、グラフは嫌いです。数字のられる、数字がずらっとならんだエクセル表なんかを見るのが好きです。
多分、サラリーマン時代の環境が強く影響していると思いますが、おそらくあんまり一般的ではないかもしれません。(でも会社はこんな人たちばかりでした。)

今回はそんな数字ばっかりの話じゃなくて、「数字いや! 見たくもない! 確定申告大嫌い!」って人、「経理なんてやったことないよ。サラリーマンだもの」って人のために、この記事の結論を最初に書いておきます。
学生はどうしようか。働いてからの方が現実味があるからなぁ。ま、参考までに、ぐらいで。


さて、インボイス制度が始まるとどうなるのでしょうか? まずは私の話の結論を3つ書きます。推測ですけどね。

1)同人誌や同人ゲームをショップで購入できなくなります。
2)購入物の価格が上がります。個人はもちろん、消費税を払っている企業のもです。大体1-2割上がると思います。
3)同人活動など、創作に関する副業では追加で税金がかかります。

多分、っていうか、まー、そうなるよね。って感じです。
余談ですが、「かも」ではなく、「確定」だと思います。もちろん、別の業態や法律ができれば別ですが、現状だと確定じゃないかな。その辺の理由を次から書いていきます。


2.とはいえ、インボイス制度って何?

※超重要なことを書きますが、まったく知らない人、例えば中学生にもわかるように砕いて書くので実際とは若干表現が異なっていたり、詳細を省いています。なんか、アバウトすぎて分からねぇ、って人はちょっとググればすぐに出てきます。
こいつ知らんのやな、って思うのは勝手ですが、意図があって書いていると優しく接してくれるとありがたいです。

具体的に言うと、消費税の税の支払いを変えよう、という制度です。
消費税って、どうやって国に対して企業が払っているかというと、

売った商品の消費税から、仕入れの消費税を引いた「差額」を支払います。

で、インボイス制度で変わるのが「仕入れの消費税」として、カウントできないものが出てくる、ということです。
それが「消費税を納めていない業者・個人」からの仕入れ分です。
なぜなら仕入れまでの消費税が収められていないためです。

ので、新しい計算式ができすので、対応してね。っていうのがインボイス制度です。新しい計算式は、

売った商品の消費税から、「消費税を納税している仕入れ業者から」仕入れの消費税を引いた「差額」を支払います。


3.・・・つまり?

消費税を払っていない業者からの仕入れを行うと、消費税をこれまで以上に支払う必要があります。
仕入れ業者の10%が消費税を払っていないなら、10%分の仕入れの消費税を追加で払うことになります。いわゆる「損」ですね。


4.っていうか、消費税払ってないって、脱税じゃないの?

「支払っていないのは法律違反なのでは?」と思う人もいると思います。答えは「合法」です。そして、国が決めた仕組みです。
これは消費税の歴史を見ないといけないのでちょっと書きます。興味ない人は次に進んでくださいね。

では、少しだけ歴史の授業です。
消費税導入当初、つまり1989年にさかのぼります。
これを読んでいる人の中には生まれていない人もいるかと思います。私は小学生でした。駄菓子屋なんか行って、なけなしのお小遣いでおかしを買っても消費税なんか払ったことはありませんでした。
これが今なら「異常」って捉えられるかもしれませんが、当時は「普通」だったんですけどねぇ……

さて、導入前の話です。すごくわかりやすく言えば、消費税の導入、これは「増税」です。しかも、一律に3%追加で要求される、国が持っていく、ということに国民は反発していました。
今みたいに、8%が10%に上がって「仕方ないな」って雰囲気にはなりません。日本人はほんと無頓着になったな、と当時の記事を見ると思います。お金なんてどうでもよくなったんかなぁ、って思うこともあります。

そんなこんなで、政府は3000万円以下の売上であれば、消費税は納税しなくてOKということにしました。
これが、2003年に1000万以下になりました。段階的に消費税の特別措置をなくす、という話です。

そんなこんなで現在に至るわけです。
ちなみに税金を上げるとどうなるかというと、収入が減って困窮するのは収入が少ないところなので、そういう措置です。


5-1.同人における影響

さて、では具体的に1)から見ていきましょう。
同人誌は、割といろんな人が作ってたり、購入したりしています。
購入する場所は、イベントだったり、ショップだったりですね。

さて、同人誌を作成している人は、消費税を納めているでしょうか?
同人誌や同人ボドゲを作っているのは誰でしょうか?

私はサラリーマンが多いのではないかなと予想します。(残念ながらエビデンスはありませんけど、周りの創作者のほぼ9割強はサラリーマンです。)
会社に副業申請を出して、確定申告を出しているんだから、消費税を納税してるんじゃないの? というのはサラリーマンからいえば想像の範囲かもしれません。

ほとんどの場合は、NOです。そのため、先ほど書いた「損」になります。会社としては扱いたくない商品、となります。
そうなると、小売店はどうするでしょうか。同人誌や同人ボドゲは減るのを予想するのは簡単です。
最終的にはショップ委託はなくなる、と予想するのも簡単です。


ちなみに消費税の支払いは「課税事業者」となって、番号を取り、支払う必要があります。逆に申請を出さなければ、「免税事業者」に自動的になります。(もちろん、脱税云々はおいといて)
ので、確定申告だけをやっている場合は消費税を支払っていません。
ってことで、支払っていない人が多いと予想してます。


5-2.価格が上がります

さて、価格が上がります。とだけ書くと、「免税事業者のだけなんでしょ? ほかになんかあんの?」となりますが、1つの商品に置いて、免税事業者がいずれかを作っている、もしくは関わっていると、その部分が課税事業者になったために、消費税分上がる、もしくは業者が変更により上がることがあります。

「そんなもの、たくさんあるの?」って思うかもしれませんが、小売り、製造、原料だけでなく、運送や管理に至って考えると割とどこかで当たることがあります。

例えば、ボードゲームを1つ作るとします。
カードとボード、サイコロと木のコマが入っています。
カードを作成するには、紙業者から卸売り、倉庫、物流があり、印刷や加工業者、さらに別の物流、倉庫があります。
ボード、サイコロに至っても同じですし、海外から購入していれば、輸入業者、倉庫、物流の業者が入ることもあります。

たった1つのボドゲでもかかわっている業者は20は下らないんじゃないかな。切り出しからゲムマでの販売までを1人でやってる人もいるかもですけれど。

さて、では別の角度で見てみましょう。
免税事業者をそのまま使うこともできる、と考える人もいると思います。
その消費税分を免税事業者の先の業者が高く売るようにすれば、消費税分を賄えるんじゃ、と考える人もいるでしょう。
消費税分を損ととらえるなら、別で補填すればいい、という話ですね。

さて、こちらを手計算でやった感じ、補填するのが小売りを例にすると、1000円でイベントで売っていた同人誌は、小売りでは(委託料も含めて)大体1700~1800円ぐらいです。2倍弱上がります。
これを支払うのは、消費者となるため、こちらでも値段が上がるんですね。

※一応書いておきますが、時間経過の軽減措置で「すぐには」そうならないじゃん。って言いたい人もいるでしょうけれど、今、軽減措置の話をしても意味ないです。結局数年したらなくなるんだもの。今の消費税みたいに0%>3%>5%>8%>10%と。年間200万使ってたら、20万も余分にお金減ってるってことなんですよね。


5-3.副業で追加の税金がかかるかも?

これは「かかります」とはまだ言えません。というのは、どの業界も「本気でやるの?」と感じてしまうぐらい、どうなるのか、不安定な状態にあります。(2022年12月だと)
特に「まだ得意先から連絡が来ていない」とする個人事業主や副業サラリーマンはたくさんいると思います。
実際どうなるのか、本当に現段階では何とも言えません。

そのため、ここでの話は「そうなるだろうな」って話で進めます。
サラリーマンが副業を(こっそりであれ、了解の上であれ)やっている場合、確定申告では所得税を、課税事業者登録して、消費税を支払わなければ、「小売りや卸業者と取引できない」可能性があります。
そうなると、課税事業者に登録すると、1000万円以下の免税事業者であるにも関わらず、消費税を支払うことになります。
もちろん、青色申告よりも詳細に明細を管理する必要があります。


6.まとめと雑談

そんなわけで、主にサラリーマンがどの辺でインボイス制度にかかわってくるのか、という点を中心に書きました。
個人的には、すぐとは言いませんが、同人誌のショップ販売は形態を変えてくると思います。具体的に見えているものは、メインとなるのがPixiv Boothのように、個人間取引に代わるのかな、と思っています。

個別の送料が痛くなければ、あんまり変わらないかもしれません。
もちろん、作者側がショップ委託が多ければ、売れる数量は減るし、減るということは印刷単価が上がって、同人誌自体の価格は上がると思います。もちろん、イベントで買った段階で、です。印刷が減れば、また印刷所が減るんでしょうね。

私のよく知るエリアとなる同人ボドゲも、ショップ委託は減るでしょうし、イベントに行かないと手に入らない大手のゲーム、というのも割と出てくることになりそうな気がします。
東京近辺に住んでいれば、大して変わらない感覚かもしれませんが、離れた地域に住まわれている方のゲームはより手に入りにくくなりそうな気がします。

今回のインボイス制度については、特に「一部の得している人たちが正しく払うようになる」って認識が強い気がしますね。
割と一番影響の大きいサラリーマンが全く何も気にしていないというか、徴収されて当然とされているのが、私目線だと「ええんや、それで」って思うところではあります。
政府は政府で、知識のない人からどんどん税金を集めよう、って政策が多すぎて嫌気が大分さすようになりました。裏返すと、知識によってすり抜ける人が多いからそうやってるんでしょうけれど。

ま、愚痴みたいな雑談は置いときましょう。なんか、放っておくと永遠といいそうで。

そんなこんなで、今後は同人ショップが減って、個人間取引が増えて、送料だけが増していく、っていうのがスタンダードになりそうな気がします。
みんな、イベント行こうぜ!


7.余談(インボイス制度に興味がある人へ、の話。)

インボイス制度を受けて、課税事業者にならないと、と考えている人向けの話を少しだけ書いておきます。

インボイス制度の開始は9月からとなっていますが、課税事業者への登録期限は3月末です。
通常であれば、1-2か月で課税事業者になれる、ということですが、今回のインボイス制度開始によって多くの課税事業者が生まれるということで、早めに設定されています。
簡易課税制度利用者も含めると、もう動いてないと危ないかもしれません。確定申告もあるので、早め早めがおすすめです。

ちなみに課税事業者から免税事業者の変更は「めっちゃ時間かかるうえ、制限もある」から、ちゃんと自分で調べてください。

また、無料セミナーもちょいちょいやっているので、行ってみた方がいいです。なぜなら、知らない「特例」の話が出てきます。いや、公開はされてるんでしょうけれど、私もセミナーに行って、聞いて、初めて知った話も割とありました。

また、段階を取ってやる、ということになっていますので、すぐに取引がなくなる、というパターンは多くはないと思いますが、免税事業者に対してはあまり知らない会社、あまり知らない経理担当もいますので、通常とは異なる取引条件が発生することもあります。
なんにせよ、早めに構えておくことがよさそうです。

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