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ヒトトイロ5周年記念版の製作ノート

ヒトトイロ5周年記念版(以下、記念版)を2022年8月25日に発売しました。
今回は、記念版を作ろう、って話を最初あたりから出来上がりまでの話をしたいと思います。
企画メインのお話です。めっちゃ軽く読んでもらえると嬉しいです。真剣な話は……出てくるとは思いますけどw


1.企画開始

最初はいつ頃だったんだろ。
ぼんやりと考え始めたのは、2021年の春ごろじゃないかな。確か。
まだうちにあるヒトトイロ通常版の在庫が徐々に減っていて、この調子なら年内に再生産しないとなー、って考えていた時に考え付いた気がします。
とはいえ、記念版ってなんだろう? 分かんないな、で終わってました。


2.相談開始

記念版を作るにあたり、絶対お願いすることになるのがイラストレーターです。通常版に引き続き、わとさんにお願いすることにしました。
わとさんを選んだ理由は、通常版を描いていただいたこともあるんですが、それよりもわとさん自身、ゲームコレクターである、ということもあります。身内ネタみたいになっちゃいますが、積みゲーの女王っていう二つ名もありますしおすし。
また、まじめな話、〇周年記念のゲームをたくさん見たことある人がいいな、っていうのもありました。私自身の知識だけよりいいものができそう、って思ったのもあります。

昔からの知り合いっていうのもあって、簡単に経緯と着地点(いつ頃出したいとか)をお伝えして、スケジュールとかの確認だけやりました。
この時点では私側も何も決まっていないから、まだ「やりたい」以外の具体的な話は出ていませんでした。

とはいえ、すぐに「どんなのがいいかな」と双方ゲーム棚を眺める感じになりました。
ここ(パブリッシャー)はこんな感じ、このゲームはこんな感じ、これはー、とかとか。
ゲーム歴長い2人が、長年貯めてきたボドゲの記念版を引っ張り出してきては、あーだーこーだ言ってた気がします。
なんでか棚にあるんですよね。記念版。


3.試算

記念版とはいえ、ちゃんと採算が合わなくてはいけません。
また、それによってできることが決まってきます。

今回の場合、できることは増えています。簡単な例でいうと、箔押しやら特殊印刷やら。印刷所さんの名刺と共に幅や選択肢が広がっては来ているわけですが、実際に何をするか、というのは1から考える必要がありました。

でも一番最初に決めたいのは、販売価格、そこから導き出される原価です。
そうです、今回販売価格なっている2,200円はここから決まっていました。

値段を2,200円に決めたのは、昔からヒトトイロを取り扱っていただいている販売店さんや友人なんかに、相談させていただいて、参考意見をたくさん頂きました。
パワーアップしたい程度なんかからも計算して今回の価格に決めました。
※割と複合条件です。パターンをいくつも作った覚えがあります。

※※余談ですが、アーティストになってしまいますが、記念版に桐のタンスがあったり、臼があったり。自由ですよね、ほんと。(共に友人の中に所持者がいるのもあれなんですが)


4.記念版とは? 取捨と選択

さて突然ですが、ここでこれを読んでいただいている方へ質問です。

「記念版とはなんでしょう?」

どういったものがあれば記念版でしょうか?
どういった変更が入れば記念版として認識できるでしょうか?
記念版を定義することはできるでしょうか?
記念版ってなんやろか(哲学

まじめに考えると、割と難しい問いになってますね。
これは私たちも同様で、あーだ、こーだ、(×欲望のままに) 〇ユーザーのことを考えて、議論してました。
ここで一番の問題は、わとさんも私もゲームコレクターに近くて、変なこだわりが双方あるっていうね。楽しくはありましたけれど、結構いろんなところで嚙み合わなかったですw これだからマニアってやつは……

後、これは個人的なスキルアップに近い話ではあるんですが、いろんな印刷技術、加工技術を多少なりとも知ってはいたつもりですが、調べれば調べるほど出てきますねー、知らない技術。
記念版を作るにあたって、あれやこれや、TCGや書籍(っていうか同人誌)に至るまで改めて調べると出てくる出てくる。

ちなみに出てくるまでは全然いいんです。選択肢が増えるから。でもね、それのどれを選ぶのか、という立場まで行くと、その選択肢のメリット、デメリット、問題点(大体にあります)をちゃんと理解して選択する必要があって、なかなか難しいです。

そんな中で、把握できたものからできそうな組み合わせを無数に作って、取捨していくっていうことを、夏ごろずっとやってた気がします。
もちろん、別の新作の準備(この時は「仮面村ポーカー」、もちろんこのままずれ込んでいくので「モンスロート」といった検討重めのゲームたち)も並行してやっていたので、空いた時間とかにちょいちょい考える程度でした。1人でやってる個人事業主なんで、仕方ないね。
でも、気分転換になったりするから悪いことばかりじゃないんですよ。脳が徐々に狂ってきますけど。

ある程度、案がまとまったら、わとさんに相談させてもらって、「ゲームコレクター」としてどの辺が好みか、個人的な好みはどうかとかのすり合わせを行っていきました。実際は「こんなん、見たことあるー?」ってDM投げて、あったらあったで現物調べたり。「あったわー」とか、「棚にあったわー」とか。これだからコレクターは。


5.2021年末、これまでのまとめ

こうして徐々にしぼっていき、ゲムマ2021秋が終わるころには、ぼんやりと記念版の形ができてきました。

1)ゲーム的な追加が必要
ゲーム的な変更が多少あった方がいいって話になりました。
追加お題、追加ルールなんかがこれに当たります。

2)特色
金や銀、箔押しなど案が出ました。箱か、カードか。また別の何かを追加したものか。

3)特別な箱
材質も変えてしまって、ブリキ缶とか布製とか。世の中にはいろんな箱のゲームがありますし。

4)サイズアップ
手札をブリッジサイズにするとか。大きいことはいいことだ、なんて名言もありますし。迷言?

2021年冬頃ならこれくらいでしょうか。
ある程度固まったら、実際の金額とかの確認のために調べたり、どうしてもわからないときはお見積り頼んだり。
こうして、年が暮れていくのでした。

実際は、「モンスロートインハロウィン」のボリュームがすごくて、ほとんど検討している時間が取れてないんですけどねー。ほんと、すごいんだから、モンスロート。(MtGネタ


6.ヒントはおかし

さっきの章、2021年末だと言ったな、それは嘘だ。
今、メール確認したら、2022年の5月ぐらいまで(ゲムマ2022春終了後ぐらいまで)、確認や検討を続けてるわ。
モンスロートの箱も新サイズ、新中敷きであれやこれややり取りやってて、サンプル作ってもらったり、改良してもらったりしてて、最終的に今の形のお願いをしたのが5月下旬だったわ。

そんな訳で、記念版、どんなのがいいだろう、って話が5月まで続いていて、その中で、私の目に映ったのが「贈答用のおかし」です。
贈答用のお菓子は中身を如何に魅せるか、というのに注力していて、受け取ってうれしい、という感情が湧くように工夫されています。

そんなわけで、カードを立てて収納する、というアイデアが出ました。また、書いて消せるカードもこの時には採用が確定していたと思います。

これまでにたくさんのボドゲやカドゲを見てきましたが、カードを立てて収納するものは多くなく、後、熱心なプレイヤーには内箱すら捨てられることもしばしば。
※とはいえ、有名なところでいうと、ドミニオンですね。ただ、贈答用のおかしっぽいかといえば、そんな感じはしないんですが。

というわけで、今回の形の最初のモックを自分で作ってみます。(ボール紙を切ったり貼ったりして)

それをわとさんに見てもらった上、ひとまずGOサインが出ました。
そして、そんな無茶な提案を受け取ることになった箱屋さん。本当にありがとうございます。
材質やコストも含めて面倒を見ていただき、現在の形のものが出来上がりました。

ちなみに、これだけとんとんと進んでいるのは、前の章で出た案がコスト的に、技術的に、出来上がり的に(コレクター2人の心に刺さるか刺さらないとか)取捨選択がされて行っていて、このころにはこれと対案ですでに作成可能になっていたバージョンの2つのうち1つでやる、ということになっていましたと思います。

結果、こっちのができればベスト、というのが出来上がったのでこちらになったわけです。
ほんと、硬質ウレタンとかすごいものを持ち出してて来てくれた箱屋さんには感謝感謝です。
弊社がお願いしている箱屋さんは、元々、ほんとにいろんなタイプの箱を作られているところで、いつかはこういった凝った箱を作りたいなと思ってました。
これまで使っている箱をお願いして、色々話させて戴いていたこともあって、1つの集大成になったんじゃないかなと思います。


7.内容物の決定

箱の値段が決まったことで、総額に対してかけられる残金が決まって、できることの選定が始まります。
書いて消せるお題記入カードは、わとさんから出た案です。これまで答え合わせの時に覚えてるか覚えてないかで、スムーズにいかなかった、ということもあり、今回追加しました。
割とよく見る「書いて消せるカード」のこちらもCOLON ARCとしては初めて作成するもので、サンプル使ったりして確認して作りました。

すごく細かい点でのこだわりを書きますが、わとさんから出た話で「布とか消せるやつ」をそのままつけないでほしい、という話がありました。
なぜ? あったらええやん? ってなりません? そうじゃないんです。

「消した布に付着しているインクが塊になって箱の中に飛び散ったらいやややん」

うなづいた人、あなたは比較的ゲームを大事にする人で、ゲーム歴もそれなりにあるかもしれません。
ホワイトボード仕様のものを箱の中に入れると、「消した時の消しカス」のようなものが箱の中で踊って、至るものに黒い斑点を残していきます。
それが嫌だっていう話です。

私も最初、不織布とかつけようかなと思っていたんですが(物理的には多分いけそう、ってところまで行きました。コスト的には多少足が出るのですがいいかなぐらいで)、いっそつけない方がいいまである、となりました。
そんなわけで、内容物に消せるものが入っていません。不親切だと感じてたらすみません。でもそれはそれで理由があるんです。

ちなみに、このカードの説明で説明シートが1枚追加されているかと思うんですが、その注意事項欄でも怒られましたw
「耐水性がありません」ではわからないと。具体的にどうなるんだと。

これもコレクターあるあるかもしれませんが、ホワイトボードカードを「アルコールを含んだティッシュ」で吹くことはないでしょうか? そんな時に耐水性がなかったらどうなるの? っていうので。
具体的に書いたかと思いますが(手元のルールをチェックだ)、保護シートのない端から浸水する可能性があるんですね。せっかくの記念版なのにそれはいやだ、って力強い抵抗に会いました。でも「わかる」。


8.1色追加 vs 1プレイヤー追加

こちらは、主に私の中で議論対象にあった話です。
追加できるカード枚数の都合上、「各プレイヤーに1色ずつ追加して、16色にする方法」と、「プレイヤー1人分追加する方法」の2通りのいずれかが選択できました。
お題カードの追加枚数は「あって満足」となる数字をざっくり持っていて、そこから残った枚数からの計算でもあります。(余談

これについては、まず「1色追加」を考えて、追加できる色の候補をざっと出しました。とはいえ、最終的に色の追加を辞めました。
消去法みたいになってしまったけれど、1色だけ選ぶってことができませんでした。16色目って人それぞれ過ぎて、なかなか難しかったです。

そんなわけで、「1プレイヤー分を追加」で進めます。
追加されるキャラクターは何がいいかな、って話してて、「これぞ記念版!」で喜ばれるキャラクターって考えて、今回の動物たちになっています。ちなみに、この動物たちは箱のイラストからの参戦です。
本当に出るか、出せるかはわかりませんが、10周年記念版があったら、このキャラにしよう、って案も出ました。出せればいいなぁ。


9.完成!

こうして出来上がったのが今回のヒトトイロ5周年記念版になります。
出来上がりを見ても個人的にはだいぶ満足してます。
購入いただいた方からも好評をいただいていて、正直だいぶほっとしています。
箱は大きくなりましたが、遊びやすくなり、見た目もよくなりました。
とはいえ、小さいほうが好きだ! という人もいるので、今の記念版がなくなり次第、通常版に戻ります。
箱をほかのゲームと合わせて、今回より薄めの縦長にする案もあったんですが、多分そのまま正方形に戻すことになりそうです。(とはいえ、まだ検討段階です。)

今はまだ記念版はたくさんあります。
でも再生産は絶対しないので、なくなったら終わりです。
手に取りやすいときに手に入れておいてもらえるとありがたいです。

後、食品関連もそうですが、原材料の値上がりが目前に迫ってて、この値段で出せるのは今後なかなかないかも、なのです。

手に入れた人は、ぜひ追加ルールも入れて遊んでみてください。格段に難しくなりますから。
※雑に全部2のカード扱いで、2枚ずつ出すと時間がめっちゃかかるのでオススメしませんけど。。。

ゲムマ2022秋の準備も進めています。
ヒトトイロ5周年記念版でも何かしらの追加情報があるかも? 9月下旬をお楽しみに。

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