『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』
アフロディーテ、アテナそしてアルテミスに愛された、ひとりのスコットランド女王メアリー。
彼女は若く、美しくそして知性に溢れた女性であった。
一方、イングランドの女王、名はエリザベス。
彼女はニケに愛された。
そして、世界に冠たる大英帝国を築き上げた女王として、その名を今日まで轟かせている。
私たちは、このふたりの女王を通して一体何を知る事ができるのだろうか?
国のために命を捧げた彼女たちに思いを馳せ、「いつの世も生きづらい女性たち」といった風な憐憫のレッテルを手向けるのだろうか?
いや、断頭台を前にしたメアリー、そして、彼女の処刑承認書を前にしたエリザベスの姿を一度でも見たら、そんな事は出来ないのではないだろうか。
なぜなら、いつの世であっても、「ひと」は生きづらく、愛おしい生き物であるかだ。
そこにわざわざ「セックス」を持ち出すなんて、まさに無粋、としか言いようがないのではないだろうか、と。
最後に、彼女たちはこの映画の中で、対極に位置する存在(少なくとも表面上において)として終始描かれてきた。
しかしながら、一つだけ共通点があるのではないだろうか?
彼女たちは、ヘラに愛されることはなかったのだ。