【読書日記7】『私が鳥のときは』/平戸萌
第4回氷室冴子青春文学賞大賞受賞作品。
物語は、主人公蒼子の中3の夏休み、母が職場の同僚で余命わずかの「バナミさん」を「さらってきた」ところから始まる。一緒に暮らし始めたバナミさんのずうずうしさに悩まされながらも、受験勉強をともに励むことになる蒼子。家庭や友達、進学の問題が深刻にのしかかってくる中3生たちにバナミさんの存在が関わってくる。
シチュエーションは特異だけど、ガラスのような青春時代は誰しも同じかもしれない。キラキラしていて壊れそうで、人や自分を傷つけることもあるけど、圧倒的に美しい。磨けば光ることはわかっているが、そうは簡単にできないもどかしさ。私自身は、バナミさんに自分を投影して読んだのだが、ガラスの彼女たちを抱きしめたくなった。きっとバナミさんもそうだったのだろう。本書には、バナミさんが中学生だった頃の書き下ろし作品も収録されている。等身大で生きるバナミさんの青春時代。キラキラの時代があってよかった。読後爽やかな気持ちに満たされる本だった。
そういえば、話題の週刊文春でも作者のインタビュー記事が紹介されていた。いろんな方面で注目されていることがわかる。