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久米 真弓 『あなたは本当に猫ですか?』 (長崎県大村市)

やっぱり猫が好き。猫が好きなひとも好き。かく言うわたしも猫が好き。10年くらい前『アトム』という名前の猫を恋人と一緒に飼い始めた。猫を飼うために豪徳寺駅のペット可のアパートへふたりで引っ越した。仕事から帰ると、主人の帰りを待ち侘びた子猫アトムが窓のそばに駆け寄ってくる。音で気づくのか、においで気づくのか、気配で気づくのか不思議なものだなあと。『主人』という言葉を使うと、主人は私だと、もうひとりの飼い主が言う。アトムの成長とともに恋人同士だったふたりも成長し、夫婦となる。アトムもずいぶん(でっぷりと)大きくなったから、小さな部屋では運動不足になってしまうしかわいそうだと、もう少しだけ広いアパートへ引っ越した。

妻の妊娠と同時にアトムの癌が発覚する。

妻のお腹は膨らみ、アトムはどんどん痩せていく。とにかく栄養を、と、ふたりの医師に言われる。アトムの通院にかかる費用と子供のためにかかる費用と主人は頭を抱える。手術をすれば生存率は50%、費用は50万円。手術中に体が持たず絶命の可能性80%。このまま通院するだけでは100%死を迎える。その時ふたりは手術をしてあげれなかった。

アトムのために借りたアパートに、娘がやってきた。アトムがいたずらしたらどうしようって思ったけどそんな心配はいらなかった。アトムにはもういたずらする力は残っていなくて、すやすやと眠る娘の横で、アトムはふたりの主人に抱かれながら死んだ。涙は出なくて、お腹がすいたのを覚えてる。火葬場の帰り、中華屋でいつもよりたくさん食べた。

『あなたは本当に猫だったのですか?』

帰り道、娘を抱きながら、ふと。

久米真弓さんによる ZINE『あなたは本当に猫ですか?』を読んでいたら他人ごととは思えず、じんわりと幸せな時間を思い出していました。あなたは本当に猫ですか? と思う瞬間のこと、猫を飼ってるひとは一度くらいは思うはず。ぼくもあの時、アトムの姿を記録しておけばよかったとこの ZINE に触れて強く思いました。後悔。

自分が飼ってる猫をまとめるのに ZINE ってすごくいいなって思う。スマホに保存された愛猫の写真を見せられても『かわいい』と言いながらも『どうでもいい』という感覚がまさってしまうのがわたしの本音。けれどこうしてしっかりセレクトされた写真がコンセプトごとに並べられて『デザインされた』記録を見てると、それで『愛』に変わっていくような気がする。記録することで『愛』を表明する。意思表示する。これは ZINE の重要な役割のひとつではないかと思う。

ちくわよ、お願いだからずっとずっと長く生きておくれ。

ダリもピカソもカーロもウォーホールも。アラーキーも藤田嗣治も。横尾忠則も伊丹十三も。ぼくがすきなひとはみんな猫が好き。

犬はそんなに好きじゃない。

ー Written by 加藤 淳也(PARK GALLERY)

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エントリー 長崎県

久米 真弓 / Mayumi Kume

グラフィックデザイナー & 幼児絵画講師

「楽しく生きる」がモットー。どうせ生きるなら楽しく、と毎日暮らしています。グラフィックデザインを主に、幼児絵画講師、地元大村市情報 WEB マガジン発信など何でもやりたがり人間です。

好きなモノを ZINE に!ってことで我が家の猫のコトを愛情を込めて面白可笑しく表現しました。プププと笑っていただけましたら光栄です。
ー 久米 真弓

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