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カビが大敵! きものお手入れはカビ対策

 全国的に梅雨入り。鬱陶しい季節。今年はコロナにより、不快感が一層強くなることでしょう。この季節はおきものにとっても厄介な季節。今回は管理とお手入れについてのお話を少々。

■現代の家屋は湿度が高い

 絹(きぬ)は、カイコの繭からとった動物繊維で、カイコが体内で作り出すタンパク質を主成分としています。人の肌にも多く含まれる体に優しい生地ですが、同時にカビ特に白カビが付きやすい生地でもあるのです。白カビが一番好むものは湿気、押し入れやたんすは特に注意が必要です。
 現在の住宅は戸建、マンションを問わず昔の家と比べると、密封度が高く暖かいですよね。又家のお風呂も当たり前、洗濯機や衣類乾燥機、食洗器さらには加湿器等湿気を発生させる家電も揃っています。つまり家の中の湿度は昔より高くなっていて、カビが発生しやすい条件が揃っているんです。特に冬場窓ガラスが結露する戸建やマンションは要注意です。
 大切なおきものに一度カビが付いてしまうと取り返しのつかない場合もあります。表面上だけの比較的カビがついて日が浅い場合はさほど問題ありませんが、生地の内部に浸透しタンパク質と絡み合った場合、洗い張りしても最悪数年後に再び顔を出す場合も。また厄介なのは他のおきものにも移ってしまう事。最近あまりお召しになっていないおきものもこれを機に点検してみてはいかがでしょうか?

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■きものにおけるカビ対策

分かりやすいように箇条書きで書きます。又あくまで一般的な地域視点で書いてます。海や川の近くや、昔田んぼだったところに建てられたマンションや戸建てにお住まいの方は更に注意が必要です。

①きものを保管する部屋は極力お風呂場やキッチンから離れた部屋で
 きもののたんすを置く部屋は湿気が発生しやすい所から離れた部屋が理想
 的。一戸建ての場合2階の一室で。お召しになった後の陰干している着物
 も早めにしまいましょう。干す部屋も湿度が低いお部屋で。
②数日好天が続いた湿度が低い日中にたんすの引き出しを開けて換気
 
気象庁から異常乾燥注意報が出ている日等湿度が低い日に、引き出しを開
 けましょう。空気清浄機能付きの除湿器を使うとより効果的。2時間~3時
 間くらいでOKです。
③たとう紙も管理 たとう紙がカビ移りを防いでくれます
 
カビ移りをたとう紙が防いでくれます。破れたり黄色く変色しているたと
 う紙は早めに取り換えましょう。黄変しているたとう紙はカビの可能性も
 あります。
④除湿剤をいれて、定期的に交換
 
市販されている除湿剤も効果的です。きもの用でなくても引き出し用
 でもOK、使用方法に従って取替えくださいね。
⑤喪服や黒留袖は要注意
 
喪服や黒留袖は特に要注意。使用頻度も低くたんすに眠ったままの方も
 多いでしょう。黒地の為白カビが見えやすくもあります。たまには湿度
 が低い日たとう紙から出してみてください。
 又本場大島紬もカビの相談を多く受けます。理由はよくわかりません
 が、黒地ものが多いからでしょうか? 言い換えれば濃い色のおきものは
 見つけやすいが薄色のおきものは、見つけくい可能性もあります。
⑥カビ臭がしたりカビを発見した場合速やかに呉服店や悉皆屋さんに
 ご相談を
 
もしきものにカビを発見したら速やかにお買い求めの呉服店や悉皆屋
 (しっかいや)さんにご相談ください。その時他のおきものに移っていない
 か点検して下さい。

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■きものお手入れにおいて勘違いが多い事

①絹のきものに直接虫はつかない
 半世紀以上前ウールのきものが全盛だった頃、ウールについた虫が絹のきものに虫喰い穴をあけることがあり、ナフタリンや樟脳の防虫剤をたんすに沢山入れている方が多くいました。ウールのきものを見なくなった現在は虫喰いの心配は少ないです。ただ、まだたんすにウールのきものが入っている方、絹のきものと一緒に入れるのはお避け下さい。
②桐のたんすについて
 総桐たんすは「我が身を焼いて、中身を救う」との言葉あるように火事に強いものでした。その特徴は引き出しの一つを最後まで入れると違う引き出しが出てくるところです。密閉度が高く、もちろんカビにも強いです。このような商品は国産の桐の一枚板を職人の技で作り上げたもので伝統工芸品として扱われ一竿100万円くらいします。今安価に出回っている桐のたんすや桐の箱は中国産の桐を使っているものが多く、お求めやすい価格ではありますが過信は禁物です。実際に桐のたんすにに入れていたが、カビが付いたというご相談も数件受けいています。すべての桐のたんすや桐箱がカビに強いわけではありません。
 

■今後きものとカビのバトルは激しさを増していく

 地球温暖化が言われて久しい現代、カビの問題は増していくと思います。より良い防カビ剤は出てきてはいますが、きものにどこまで安全に使えるか疑問が残ります。ゲリラ豪雨、線状降水帯と気象の変化が激しく日本中が亜熱帯化している今、過去のお手入れとは違うお手入れが必要になります。
 エアコンをかけて除湿したつもりでも、定期的に内部清掃していないと逆にカビの胞子を振りまいています。きものたんすを開けたとき常にカビ臭がしないか注意を払って下さい。コロナ過で家で過ごす時間が増えた方、一度たんすの中の点検をしてみてはいかがでしょうか。
 
 今回も最後までお読みいただきありがとうございました。30年以上おきものに携わる仕事をし、そこからの経験や知識をこれからも書いて行きます。よろしくお願いいたします。

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