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超話題! 生成AIによるPARCOのキャンペーンクリエイティブ 木之村美穂さんに聞いてみた

9月にPARCOで開催された「NFFT2023 Generative AI x Fashion展」
仕掛け人である木之村美穂さんにGenerative AIの動向を取材した記事を先日アップしました。

その時に、いま日本クライアントのお仕事でGenerative AIでコマーシャルをつくっていてもうすぐローンチされる、と聞いていたので楽しみにしていました。
それがこのPARCO Happy Holidaysだった訳ですね!

https://parco.jp/happy-holidays/

ローンチ以降大変な話題になっていて、メディアでの掲載量も膨大なので、広告価値としては文句ない高さですね。
PARCO宣伝部と美穂さんにも問合せや取材が殺到していて、現在も対応に追われているようですが、そんな中、美穂さんに取材させてもらえたので、今回も早速記事にしてみます。

2023年、まだ誰も生成AIファッション広告を作っていないうちに、がポイント

今年の春頃にはPARCO宣伝部から生成AIを使ってクリスマスの広告をつくれないだろうかと相談があったそう。

今年=2023年といえば、一年前に個人向けサービスがローンチしたChat GPTが2〜3月日本で急速に話題になり一気に浸透した上に、目を見張る進化スピードで、
英語じゃないと精度が高くないみたい〜いやいや日本語版で十分になっている〜使えるプロンプト集みたいなものがどんどこ登場〜プロンプトクリエイター/ デザイナー/ エンジニアという職種が登場〜企画段階の壁打ち相手として申し分ない〜コンサルタントなんていらなくなっちゃうね〜画像もどんどこAIで作れちゃう〜
と文字通り一朝一夕に進化して、1ヶ月とかでこの感じだとさすがにちょっとこの先どうなってしまうの?と怖くなるほどのスピード感で変化が起こった年でした。

その頃にPARCOさんは美穂さんに依頼をしていたのです。
その段階でクリスマスキャンペーンを照準に、「生成AI技術を使ったPARCOの新しいクリスマスの表現」がテーマとなったそう。

しかし生成AIを使って広告をつくるー
誰もやったことがないので、クリエイターもクライアントも判断が難しかったと言います。
予算組み、ジャッジのタイミング、全制作アイテムへの対応、全てです。まず一番難しかったのが、AIを作り出すAIデジタルクリエイター探しでした。

木之村美穂さんがクリエイティブディレクターを務め、
AIデジタルクリエイターはAi-Editorial - Christian Guernelliを起用しました。
ちなみに二人のポートレイトはこちら。

木之村美穂 Miho Kinomura ( STUDIO DOG GK )
Ai-Editorial - Christian Guernelli

Ai-Editorial - Christian GuernelliはLA在住のイタリア人です。
昨年からコンタクトしていた人で、NFFT2022(2022年美穂さんキュレーションのファッションデジタル展)にも参加していました。
元々ファッションデザイナーなので、ファッションとコマーシャル両方に精通。さらにファッションの後に3DCGクリエイターとして活躍し、SHOWstudioの映像デジタルクリエイターとして参加していたというバックグラウンド。NFFT2022キュレーション時のやり取りを経て、感覚的なところ(ファッション、コマーシャル的バックグラウンド)は申し分ないし、仕事の進め方なども信頼できることがわかっていました。
今回改めて声をかけLAで本人と会って打ち合わせをしたところ、
デザイナー時代に来日経験も多く、PARCOも知っていて、「初めての生成AIファッション広告、ぜひ参加したい」と二つ返事だったとのこと。

「企画から納品まで6ヶ月もかかった」
一体なぜ??

信頼できるクリエイティブパートナーが決まったので、次は企画提案プレゼンです。
LAチームと相談しながら美穂さんが全体企画を立て、3つの方向性をプレゼンし、決まりました。

しかし撮影して進めていく訳ではないので、ここからが大変です。
どういう感じの女の子?
どんな部屋?ファッションは?
最初はなかなかプロンプトからイメージに近づけるビジュアルを作り出すことが難しく、最初のベースを作り出すまでに数週間かけているそう。
ヘア、メイク、スタイリングも、いろいろなタイプを出して行って、絞り込んでブラッシュアップして、、、
どの方向でやるかー ここの作業にとにかく時間をかけたそう。
当然途中途中でPARCO宣伝部との確認作業も入りながら進めていきました。

ちなみにプロンプトはものすごい長文の英語の専門的な文章だそうで、
ありとあらゆるデータを入れ込みます。
通常のファッションやヘア、メイク、スタイリングやモデル撮影などの、基本的な撮影技術を知らないと、データとしてプロンプトに入れられない訳です。

そして画像でグラフィックのキーイメージビジュアルが出来てきたら、次は映像制作です。
また、広告の大変なところですが、
モニターで確認できるようなサイズ感だけではありません。
B0(1456x1030mm)、B1(515×728)サイズなどの大型も多いし、紙媒体になることも多いです。
撮影データでそのぐらいの出力が予め分かっていれば、それを見越して画角を決めたりデータを用意しておきますが、
生成AIでつくったクリエイティブをそのぐらいの大きさに出力すると、
思いもよらない画像が見えてきたりもします。
例えば手の爪の先が少し欠けていたり、背景の中にイメージとは違うデザインモチーフが紛れ込んでいたり、、、など。

こんなに時間かかるの…??
通常のクリエイターだったら最後まで付き合ってもらえなかったかもしれないと美穂さんも言うほど、とにかく画像が決まった後に広告として完璧なスタイルに完成させ納品するまでは大変だったようです。
映像は最終的に日本側の編集スタジオに入り、ナレーションや音楽も生成AI技術もミックスして、15秒の映像を完成させていきました。

美穂さんによるまとめ

人間が想像できない新しいものが出現できた時の喜びと面白さ
ファッションスタイリングやアクセサリー、背景のプロップや空間作りなど、想像を超えて予想外なものが出た時は、不思議な感じ・世界観になって面白かったとのこと。
最終的に画像が決まるまでには膨大な数のビジュアルを提案して進めていきました。クライアントのPARCO宣伝部に提出した画像は200枚程でしたが、実際には制作の過程で1,000枚以上の生成AI画像を作り出しているそう。

工程の予想がつかない
一体何日ぐらいかかるのか分からない、ということです。
通常であればカンプである程度の絵は見えていて、撮影を組み、立ち合いの元撮影完了すればあとはデザインなり編集での確認、となりますが、
提案段階でおよその世界観は決まったものの、そこからはプロンプトによって生成AIが生み出していく訳ですから、どういうものが出てくるか分からない。
これなら良さそう、というものが出るまでにどれだけかかるのかー
そして「はい、OK」となるまでにまたどれだけかかるのかー
これまでのような修正という概念は無いので、クライアントとの確認が大変だった、と言います。

大前提、信頼関係
このプロジェクトは、PARCO宣伝部のスタッフの方達と一緒に作り上げた、生成AIを作り出す情熱とチーム力&チャレンジだった、と言います。
美穂さんはかつてPARCOのコマーシャルやビジュアル制作・ディレクションを海外クリエイター達と数多く制作してきた実績があったので、だからこそ実現した、と言えるそう。
いくら生成AI技術が進んでいっても、実際にプロンプトを入れてディレクションする人間がいないと出来ないことなので、海外ではAIプロンプトエンジニア・ディレクターという新しい肩書きも生まれています。

誰も見たことがないものなので、全員がトライするという熱意
どうせやるならある程度皆がやってないことにトライしようー
かつ、これだったら出すに相応しいのではないか、と言えるまで作るのに時間がかかった、と言います。
けれども見えないものに向かって進んでいくのは本当に大変だったが、
結果やって良かったと思えたし、なにより「こんなにバズるとは思ってなかった」と言うほど、予想以上の反応だったそう。

「『PARCOっぽい』と皆が思ってくれたみたいでよかった」と美穂さん。
「『AIでつくるとこうなるのかな…』と皆がなんとなく思っていたものを、こうして納得いくカタチでやったのがさすがPARCOだと思った」と周りの人に言われたのが印象的とのこと。

終わりに

こうして広告主であるPARCO、クリエイティブディレクターの木之村美穂さん、クリエイターのAi-Editorial - Christian Guernelliをはじめ、今回のプロジェクトに携わった人たちの粘り強い頑張りで今回のPARCO Happy Holidaysが完成しました。

これは日本の広告史やクリエイティブ史のひとつエポックメイキングなアーカイブになるのではないでしょうか。
日本のファッション・カルチャーを牽引してきたPARCOの最新の表現。
それまでもたくさんの広告をつくってきたベテランのクリエイティブディレクターやクリエイターにとっても初めて挑戦したクリエイティブ表現でした。

いずれは当たり前の表現、手法になるのか?
それともどんどん変わっていくのか?
いまは分かりませんが、一年後にはまた違う視点で振り返ることが出来るのでしょう。

2024年もすごいスピードでAIの進化が我々の生活を変えていくことでしょう。身近にリアルなお話を伺えるソースがあれば、また取材して記事化していきたいと思ってます。

PARCO Happy Holidaysスタッフリスト

Creative Director : 木之村美穂(STUDIO DOG GK )
AI Digital Creator : Ai-Editorial - Christian Guernelli
Production : STUDIO DOG GK / TYO Inc
Producer : 馬詰正(TYO Inc )
PM : 福家楓(TYO Inc )
Sound Design : TAITO OTANI
Post Production : Studio Interfield

木之村美穂さんプロフィール&NEWS

クリエイティブディレクター
事業内容: 広告映像プロダクション 、AI x Fashion 企画デザインプロデュース、Web 3.0 企画ディレクション、海外クリエーターキャスティング、海外撮影プロデュース
2024年2月には恒例の保護猫プロジェクト「CAT TOKYO ネコといる暮らしVol.11」を開催。今回はGenerative AI CATイベントを企画中。

Clubhouse web 3 コミュニティー「クリエイティブラウンジ」 
毎週土曜日 朝10時〜11時 
クリエイティブラウンジというルームを3年前から主催、
日本語で話をしてます

木之村美穂さんインスタグラム






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