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技術の進歩と「障害」の変化

*この記事は連続インタビューの第3回です。

みんなちがってみんないい、んだっけ?
第1回  「障害があるから」で生まれる歪な関係
第2回  障害受容のコミュニケーション
第3回  技術の進歩と「障害」の変化
第4回  公平を目指せば、理解も受容もいらなくなるかもしれない

第1回では「障害がある」という事実ではなく、そこに紐づく意識がコミュニケーションの阻害になるということ、第2回では障害受容によって、自分のためではなく他人のためということを考えられるようになるということについて話しました。

どちらの話も、関係性やコミュニケーションにおける現状や課題についてフォーカスしてきました。

今回の記事ではそこから少し離れて、「障害が障害じゃなくなる」という未来について考えてみます。

話し手はご自身も障害当事者でありながら発信している、一般社団法人Plus-handicap (プラスハンディキャップ)代表の佐々木さん、聞き手はNPO法人Collable代表の山田です。

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ツールの発達で障害は障害じゃなくなる

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佐々木
身体障害の場合だと、コミュニケーションって障害配慮の話ではない。だって「俺義足なんだよね。でも、空気読めないんだよね」っていうのは、つじつまがあってないってなりますよね。

そうなってくると、障害に関する配慮の問題が限定的な話になってくると今度は思うんです。精神・発達系の障害だと、コミュニケーション上の難しさが生まれてくるから、そこに関しては配慮が必要だよねってなるし、そういう人たちにはリードユーザーは担えないかもしれないよね、みたいなことは色々考えられるとは思います。

でも、この考え方でいくと少なくとも、身体障害者の400万人弱くらいは対象外になります。実は3年前くらいに、もう身体障害者の問題考えるのやめましょうって、一時期ずっと言ってたんですよね。もう物理的障壁くらいしかなくて、あとは体調管理くらいでしょ。もう医学の進歩待つくらいしかないなと。

もう基本はバリアフリーのための予算を割くか、めっちゃお金出してIPS細胞の研究進めてもらうか(笑)、もう身体障害者の未来はこの二択にかかっているって言っていた時期あったの。あとは攻殻機動隊的なSFの世界。そういうメカができあがる。でも、この三つがクリアされるとさ、攻殻機動隊の話は過去に記事で書いたけど、もう身体障害者が身体障害じゃなくなるんですよね。

山田
最近は義足のかっこいいやつとか出てきましたしね。

佐々木
そうそう。だからもう、あとは精神・知的・発達障害のために時間を割こうよ、みたいな。オリンピックがくるときにバリアフリー的な動線どうするんだみたいなこと、色々みんな言っているけどなんとかしようと動いてる。とやかく言わんでも。もう精神・知的・発達障害に予算と時間割いたらいいやん?みたいな。

山田
障害者雇用の話も身体の人たちって、基本そこはクリアしてきましたもんね。必要な機器とかもまだ高いけど、用意しようと思えば用意できるし。

佐々木
以前、聴覚障害の方に「手話って伝統芸能ですよね」って言ったら、すごく怒られたんですよね。今、思うと、単なる無礼千万なんだけど(笑)。なんで僕らは手話求められるんですか、チャットでいいじゃないですか、みたいなことを言っていたら「いや、手話は」みたいな感じで怒られた。でもツールの発達ってそういうもんやん。多分今まで使ってたものが使わない状況になるし。

山田
まさに。点字を読む人が減ってきているのもそういうのですよね。

佐々木
煽り運転だって、自動運転化が進めばなくなるでしょ。自動運転にしてるのに、煽り運転モードに入れるとか、これもう確信犯ですよ(笑)。テクノロジーで解決できるものっていっぱいあって。

山田
結局人間は便利な方にいくので、便利な方によっていけば、今までの古いアナログなものは消えていくんですよね。

佐々木
それをウジウジ言っていたり、エモっぽく(感情的に)言ってみたところでなんとかなるでしょと。

山田
見えない若い子達は少なくとも点字で本読んでないですしね。点字図書館とかもなくなるかもしれない。

佐々木
だって実際音声読み上げでいいじゃん。

山田
そう。PDFで読み込んでくれますしね、今は。


アプリのように「考え方を再インストール」する

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佐々木
今個人的に面白いなって思っているのは、精神知的発達系の人たちに、考え方とか思考の癖とかっていうのは、再インストールできないのかって考えています。過去を完了させないと前に進めないのは事実だと思うんだけど、人間ってアプリみたいなもんだと思っていて。

山田
アプリみたいなもの?

佐々木
要は、この考え方をアプリみたいに入れたら実行できるっていう。その発想になったらウジウジ考えなくていいんじゃないのって。仕事の仕方とかそうじゃないですか。会社に入社して「こうやってやるんだよ」ってことを上司や先輩に言われたら、そんなこと考えたことないとか、やったことないとか言っても、とりあえずやってみたらできるようになったりする。

新卒で営業をやっていたときに先輩から「商談の最初の3分か5分を動画で考えられたらうまくいくよ」って言われたんです。入ってきて、名刺交換して、最初に何を話して、何を切り出すかって、相手がこういうこと言えば笑いそうだなとか。そういう動画のサンプルとかが一個できればいい。それが3つとか4つとかあればそれだけ選択が生まれる。

だからそのイメージができているかがすごく大事だよってアドバイスされたんです。あと、本当に他人に興味持たないと数字取れないよって言われたのは今でも心に残ってる。でも、最初は意味がわからなかった。自分の今まで生きてきた道の中では考えたことがなかったものが入ってきて。だけどそれを癖づけしていくと、すごくよくなった。

山田
ちゃんと成果が出たんですね。

佐々木
相手のことをいかに考えるか、何に困っているんだろうとか、普段どういうことコミュニケーションの人と関わっているんだろうとか。っていうことをどれだけ想像するか、洞察するかっていうのは必要になってくる。

こうした考え方ってさ、社会人になってから初めて知るわけですよ。もっというと、先輩に色々言われても、「いや俺大学の学生団体のリーダーとかやってましたし」みたいなプライドとか持っていたりする。そんなプライドをけちょんけちょんにされた上で、新しい追加情報をインプットするわけよね。これ、スマホと一緒ですよね。

山田
なるほど、これがアプリと一緒ってことですね。

佐々木
そう。過去のデータを消しました、新しいアプリを入れます、アップロードをします、って考えたら別に一緒やん?って。

自分の障害が原因でつまずくことがあっても、新しい考え方をインストールしたらなんとかなるんじゃないかって。ここが今ちょっとわからなくて。なんとかなるんだったら、障害があるとかって別に大きく関係ないなと。

障害によってはIQの話とかもあるから難しいかもしれないけど、将来的にはなんとかなるようになるかもなと。だから、障害者のキャリア教育的なことが大事なんじゃないかって思って新しいことを準備しています。もう障害を受容も理解もしなくていいかもしれない。

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ツールの発達で障害が障害じゃなくなる。
アプリのように「考え方を再インストール」する。

今回は技術の進歩と障害について考えました。
障害は環境やツールが変わることで障害じゃなくなる。昔は目が悪いことも障害でしたが、メガネというツールによって障害ではなくなりました。これから技術の進歩により、障害ではなくなるものも出てくるでしょう。

そして、その先には障害需要も障害理解もいらなくなるかもしれません。
そうしたときに公平性とは一体何をさすのか。
次回、連続インタビューのラストは公平性について考えます。

佐々木さん

佐々木一成(ささきかずなり)
1985年福岡県生まれ。生きづらさをテーマにしたwebマガジンPlus-handicap編集長。生まれつき両足と右手が不自由な義足ユーザー。障害があっても楽しく人生を送るひと・そうでないひとの違いや境目を研究中。

(聞き手:山田、文・写真・編集:栗野)

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【NPO法人Collableとは?】
「ために」から「ともに」へを合言葉に、障害のある人たちや多様な人との共創の場づくりを実現させるために活動するNPO法人です。
インクルーシブデザインの普及や、実践研究活動、その方法を活用した様々なプロジェクトを、おとなからこどもまで展開中。

Web: http://collable.org/
FB: https://www.facebook.com/collable/


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