ダイバーシティな組織を作る上で考えるべき「体感時間」の違い
Collableの山田小百合です。今年は1年間「19日はインクルーシブデザインの日」という、19とインクルーシブを(むりやり)かけて、インクルーシブデザインの活動を継続的に実施するという取り組みを行っています。今回も11月のワークショップでのエピソードをご紹介したいと思います。
ここ数ヶ月のテーマは「障害者雇用+インクルーシブデザイン」
障害者雇用の実態はいろんな説やご意見がありますが、例えばとりあえず無難な事務作業のポジションをつくったり、「見えない人は鍼灸」みたいな固定的ポジションで雇用する以外の選択肢をつくりにくかったりしていると言われています。特例子会社(障害のある社員雇用がメインの、大企業が持っている子会社)を持てない中小企業は、数人雇用したいのだけど、そこに対するマッチングが難しく、業務と人のマッチングと法定雇用率(障害者を社員数のうち雇うべき割合)の現実の狭間でよく揺れ動いています。
障害者雇用における法律では、今年から法定雇用率も高くなり、該当する会社の規模も「従業員45.5人以上」という現実があります。(そしてこの数字の条件はどんどん厳しくなっていきます)
参考:厚生労働省「障害者の法定雇用率の引き上げについて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaisha/04.html
未達成企業は障害者雇用納付金を支払う必要があり(つまり罰金のようなもの)、そうならないために障害者雇用に意識を向ける企業も増えてきました。
そういう状況のため、特例子会社をつくれないような小さな組織は雇用のあり方を工夫しなければなりません。そこで、現在のテーマである「障害者雇用+インクルーシブデザイン」では、いきなり面接で出会って無理やり雇用するのではなく、職種業種と障害特性の掛け合わせを事前に実施していく方法として、インクルーシブデザインって使えないですかね?という取り組みです。
今回もブランディングテクノロジー株式会社のみなさんのご協力のもと、リードしてくれるのは元Collableインターンばんちゃん。現在ある企業で働いている立場として、可能な範囲で働き方の工夫などを教えてくれました。
いろいろなエピソードが見られたのですが、面白かったエピソードは、「盲学校のマニュアルでしごとをすると全然できない」ということ。盲学校の環境では、どうしても視覚障害の当事者目線でマニュアルをつくる一方、会社は様々な立場の人がチームとなり仕事をします。なので盲学校での集団の事情と会社のそれとは異なるとのこと。お互いの常識のすり合わせをどうしていくのか、という話なのかもしれません。これも、特別支援学校などの実態以外にも当てはまる、立場の違う集団との文化のすり合わせの問題だと思うと、意外と普遍的な問題ともいえそうです。
また、面白かったエピソードとして「人間は体感時間が異なるのではないか」という話。具体的には、例えばばんちゃんのような弱視のユーザーは、センター試験は1.3倍時間をかけて受験することができます。それは言い換えると、生産時間は一般の1.3倍必要な世界で生きている、ということ。
その理屈で業務時間を考えてみると、ばんちゃんのような弱視の人が8時間労働をする場合、実は平均より2.4時間の残業をしている計算になるのではないか。よって、8時間の労働がちょうどいい人達からすると、ばんちゃんのような人間は疲れやすい可能性があるということになります。これは目からウロコな指摘でした。
そんなわけで、例えばばんちゃんのような人が自社で務めてくれるとしたら何が必要か、ハードなしくみとソフトな仕組みをかんがえる、という活動を行いました。
社内コミュニケーションの仕組みや、座席のつくりかた、オフィスの構造など、出てきたアイデアは様々見られました。(ここではかなり赤裸々な話があったので割愛します)
ばんちゃんのような具体的な存在がいると、障害者雇用の実態が絵空事にならないですし、何より考えられるアイデアが、「普通に自分が社内であったら嬉しいアイデアかも‥」という当事者性が見られたのも嬉しい時間でした。
これまで1年間、ブランディングテクノロジーのみなさんのご協力で1年間共催のような形でミニワークショップを実施してきて、私たちの中でも気づきの蓄積があった1年間でした。12月19日(本日)は、来年以降どうする?という話を、継続的に参加してくれている社内外のみなさんと話せる時間にして、来年の活動のあり方を考えたいと思います。
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