しみもいつか味になる
「robita」のバッグを使い始めて半年くらいになる。メッシュ状に革を編み込んだデザインが特徴的なブランドだ。20代の頃にも使っていたことがある。革の表情が気に入って購入したもので、当時も大事にしていた。購入前後のことはこちらに書いた(↓)。
お財布にノートと文庫本、家の鍵とハンカチ、iPhoneあたりを入れて、近所に出かけるための「ワンマイルバッグ」にしている。
経年変化を楽しめる革なので、月に一度、クリームを塗る。この「ひと手間感」がたまらなく好きだ。
しかし、このあいだから立て続けにバッグ前面にしみをつくってしまった。コロナ禍以降、どこにでも置いてあるアルコール消毒液。あれが勢い余ってバッグにもかかってしまったのだ。革製品にアルコールは禁物なのに。
こんな感じで、けっこう目立つ。
そういえば、若い頃にrobitaを使っていたときもしみをつけてしまい、何度か落ち込んだことがある。せっかくかわいいバッグを買ったのに、汚してしまったとしょんぼり。そのしみは、なんだか取り返しがつかないものの象徴のように見えて仕方なかった。
でも、今はもう慌てない。このしみも、わたしのバッグだという証の一つに思えるからだ。
わたし自身、しょーもない失敗をたくさん重ねてきたし、恥もうんざりするほどかいてきた。「あのときああしていれば……」と悔やんだことなんて、数えきれないほどある。
けれど、いつのまにか失敗も恥もわたしの「味」なのかもしれないと思えるようになった。若い頃にした失敗から得た教訓もあるし、苦い経験をしたからこそ理解できるようになったこともある。どれも、今のわたしをつくってくれた一部に違いない。
バッグについたしみも、年を経るとともに味に変わるはず。そう思うとアルコール消毒液の跡が愛おしく映るほどだ。それに、取り返しのつかないことなんて、人生にほとんどないような気がする。
いつか味に変わるから。約40年生きてきて、そんなふうに考えられるようになった。いろいろしみはあるけれど、ちょっとは強くなったのだと思っている。
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メディアパルさんの企画「#わたしのかばん」に参加させていただきました。参加されているみなさんの「かばんストーリー」、楽しくて読みごたえがありすぎます!