真ん中でいい幸せ
どすーん。
ソファにお尻を落としたが最後、動くのが嫌になった。
先日、次女が熱を出した。熱そのものはすぐに下がったけれど、その後の調子がよくない。幸い、はやりの病あれこれではないようだと小児科の先生は言っていた。
それでも、本人はつらそうだ。鼻をぐずぐずいわせているし、機嫌もよくない。
そういう次女の看病をしていると、ちょっと疲れる。わたしの気は長いほうだと自覚しているものの、「はよ治ってー」と言いたくなることがある。
夜、体調不良の一名を含む娘たちを寝かしつけたと思ったら、今度はわたしの体が重くなった。熱っぽい気もするが、体温を計ると平熱だ。
ソファの真ん中にどっかりと座って動かないわたしに、夫がにやっと笑いながら言った。
「めっちゃ真ん中に座ったな」
わたしはじろりと夫を一瞥してから問い返した。
「あかん? 動いたほうがいい?」
夫から返ってきた答えは「いいよ、真ん中座っとき」だった。我が家のソファは4人がけだ。わたしがだらしない姿勢で真ん中に座ってしまうと、夫の居場所がなくなる(座れないことはない)。
「ダイニングテーブルの椅子に座るから、ええよ。そこからでもテレビ見えるし」
わたしは普段からテレビを観ない。夫はそんな妻にテレビ前の特等席を譲り、斜向かいのダイニングチェアからへんな角度でテレビを観ている。
面白い人だなあ、と思う。テレビ観ないんだったらどけよ、とは言わない。ほかに座れる場所があるならそれでいいらしい。だからわたしも、夫がテレビを観ていても「うるさい」とは言わない。
少し前、娘たちに聞かれた。
「なんでパパと結婚したの? パパのどこが好きなん?」
こういうことが気になる年頃になったのかと驚き、また感慨深くもあった。しかし、気恥ずかしくてその場では答えをはぐらかしてしまった。質問にはだいたいなんでも答えようと決めているのに。
そうだ、今度、娘たちにこう答えよう。
「パパは、ママをソファの真ん中に座らせてくれるからだよ」
娘たちはきっと意味がわからないだろう。わたしも、うまくは説明できない。彼女たちの手前、丁寧に解説するよう努めたいけれど。
ただ、ソファの真ん中に居座ることを許されるのは、なんだか我が家の小さな幸せを象徴しているように思えるのだ。