コンパクトリュックにもさよならを
2年ほど愛用したリュックにしばらくお別れするかもしれない。
双子を産んでから数年間、登山に持っていくような大型のナイロンリュックを使っていた。乳児期は哺乳瓶と粉ミルクのほか、おむつやおしり拭き、ちょっとしたシート類などを入れる必要があったから、容量は大きいほうがありがたかった。
それに、同月齢の子どもを二人連れて歩くには、絶対に両手の塞がるバッグは持てない。
よって、外出時のバッグは大型リュック一択だった。ベビーカーのハンドルに引っかけることもできる、便利なあの子はずっとわたしの相棒だった。
しかし、「登山リュック」が不要になる時期がやってきた。娘たちが幼稚園に上がってしばらく経ち、哺乳瓶も、おむつもおしり拭きも、持ち歩かなくてよくなったからだ。
そうしてわたしは、2年前、リュックをコンパクトなタイプへと買い替えた。革製のちょっとシックなものへ。
そのころ5歳になっていた娘たちは、言い聞かせればわたしのそばをぴったり離れずに歩いてくれるようになっていた。それでも、やっぱり万が一に備えてリュックを選んだ。彼女たちが急に走り出すかもしれないし、ふらふらと歩道から出てしまうかもしれない。そんなときのために、両手は空けておきたかった。
双子の娘たちは今年で7歳になった。
「スーパーで買い忘れたものがあるから、いっしょに買いに行ってよ」
自宅に二人だけ残していくわけにはいかないので、娘たちによくそうやって声をかける。以前なら二人を連れてスーパーマーケットまで行くときは、コンパクトリュックを背負って歩いていた。けれど、最近はひょいとふだんづかいのハンドバッグを提げていくだけで済む。
そう、もうリュックスタイルに縛られる必要がなくなったのだ。彼女たちは道のはしっこを歩くし、危ない行動もとらない。一人ひとりとがっちり手をつながなくても安全な歩行ができるようになった。
わたしはもともとインドア派、かつカジュアルな装いをしないほうなので、子を持つまでリュックを使う習慣がなかった。そのスタイルに回帰できそうな気配である。
ただ、ちょっと寂しくもある。リュックとともに過ごした7年間は新鮮で、大変で、にぎやかで、楽しかった。
「ちょっと、ちゃんと手をつないで歩いてってば!」
歩きながら彼女たちに小うるさく声をかけることも減るだろう。
今どきの成人年齢は18歳だから、わたしが大手を振って保護者として振る舞えるのはあと11年。案外時間は少ない。
やっぱり育児の「今」をぎゅうっと噛みしめ、味わいつくそうと思う。