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忘れてしもても、ええやんか
毎日さあ、めっちゃ暑いやんか。
なんかお日さまがばーって照りつけて、がーって汗でて、血圧ぐわーって下がってしんどくなったりして。わたし、基本的に血圧が100を超えへんから、それより下がったら夏はもうつらいわ。
そんなやからさ、まあまあ夏って大変やん。
そうしたら毎年思うねんやんか、「ああ、冬のほうがええなあ」って。冬のキーンて張りつめた空気とか、首にスヌードとかマフラーとか巻いたときのふわあって優しい感じとかさ、ええもんやわーって思い出すねん。
でもな、夏が終わると不思議なもんで、この暑さを忘れてしまうんよね。目玉焼きにされるかと思うくらいびっしびしに強い日差しに、湿気むんむんの風に、ベランダにおきっぱなしやったサンダルをつっかけたときの憎たらしいくらいの熱さに。そういうもんを全部、忘れてしまうん。
で、冬になって「さっぶうー!」って肩をすくめる頃には、「あー、夏はよかったな」て思うねん。花火もしたし、スイカも食べたし、洋服はノースリーブを引っかけるだけでよかったし、夏のほうが気楽やったと思い返すんよね。冬はコート着なあかんから屋内では手荷物が増えるうえに、朝起きるんは億劫やし、気も滅入るからね。
だからさ、季節は過ぎさったあとのほうが輝いて見えると思うねん。
夏まっさかりに夏のよさを感じられるなんてことはなくて、冬の厳しさのなかで夏の輝きがぱあーっと浮かび上がるんよね。反対に、冬ならではの情緒とかほっこり感を愛おしく思えるのは、夏なんよね。
きっと人間て、なにかの最中にはその価値とか魅力を感じにくいんちゃうかなあ。
あと、夏がどんだけしんどくても、過ぎればけっこう忘れるのとおんなじように、つらい経験とか苦しんだ過去なんかもすーぐ忘れてしまうんよね。忘却は心の安全装置なんやろなあ。……って、今ちょっとええこと言うたんちがう、わたし?!
「喉もと過ぎれば熱さを忘れる」って、まるであかんことのように言われるけど、つらいことはちょっとくらい忘れてもいいと思うなあ。苦しいときに誰かから受けた恩をいつまでも忘れへん人は素晴らしいけど、そのおかげで苦しみから逃れられへんのやったら、少しくらい忘れるのもひとつの手ぇかなと思うわ。
そのかわり笑顔を忘れんと生きてたら、「愛すべき恩知らず」になれるかもしれへんやん。なんか、それもちょっとええかもね。
とりあえず、この夏をなんとか乗り切らんとね。熱中症になったらあかんから、お水ちゃんと摂ってよ? あ、おばちゃん塩飴もってるけど、要る?