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もとから自由だったかもしれない

用事で京都を訪れ、久しぶりに河原町を通った。
人混みをさっと抜けるとき、懐かしいアミューズメント施設を見た。

京都の方ならご存じであろう、ボーリングもビリヤードも、アーケードゲームも楽しめる、あそこである。

「うっわー、懐かしい」

思わず口に出していた。

約20年前、大学時代のわたしはこのお店で何度も遊んだ。
大阪の大学に通っていたのに、親しい友人も妹も京都の大学に進学してしまったから、京都に行く機会が多かったのだ。

友人との集合場所はだいたい三条駅か、京都河原町駅。
付近をぶらぶらしているうちに相手と落ちあえるのがいつものことだった。

あるとき、妹との待ち合わせまで河原町で時間をつぶしていたら、このアミューズメント施設にたどりついた。

(まだ少し時間があるから、アーケードゲームやっていこう)

遊んだのは、『ザ・警察官』。
コナミのガンシューティングゲームで、プレイヤーは警察官になりきって拳銃(型のおもちゃ)を握り、反社会的組織を倒すために戦うのだ。

目の前の画面内に示される射撃目標に向かって発砲。
敵が反撃してきたら、画面の指示にしたがって物陰に身を隠し、拳銃の弾を装填する。

アーケードゲームのなかではわりとアクティブに遊べる機種だった。
ゲームが苦手なわたしも、体を動かしてカバーすることでじゅうぶん楽しめた。

そうやって、わたしは待ち合わせ時間まで夢中になって『ザ・警察官』で遊んでいた。

「ちょっとぉー、なにやってんのー」

背後で妹の声がした。
メールを見てやってきた彼女は、ひとりでアーケードゲームを満喫する姉に驚きつつ、少ししらけてもいたようだ。
今で言うところの「ドン引き」状態だろうか。

当時のわたしは「可愛かわゴー」と呼ばれるファッションが大好きで、巻き髪にピンヒール、ブランドバッグといういでたち。
(大学への通学には、辞書も入るヴィトンの「ドーヴィル」を使っていた)

どちらかというと派手な装いの大学生が黙々と画面に拳銃を向け、ときどきしゃがんでは身を隠す。
また立ち上がって拳銃を構えて……。
冷静になってみると、あれはけっこう奇異な光景だった気がする。

アミューズメント施設を出て歩きながら、妹は呆れたようにわたしに話しかけた。

「一人でなにやってんのー。あいかわらず自由やなあ」

あのとき、たしかに彼女はそう言った。

わたしは昔から融通が効かない性格で、もっと自由になりたいと思って生きてきた。
特に20代から30代半ばにかけては、自分をおさえこんで暮らした。
アラフォーになってずいぶん自由になれたと思っている。

でも、自由の種みたいなものは持っていたのかもしれない。
「自由じゃない」と思いこんでいたのはわたしだけで、もしかしたらいつでも自由になれたのかもしれない。

秘めた種をひとつ発見したからか、わたしはこのあいだから行きたいところにはできるだけ行くようにしている。
時間の許す限り、家族の理解が得られる限り。人に迷惑をかけない限り。

きっとたいていの場合、可能性を狭めるのは他者ではなく自分自身だ。

気持ちの赴くまま『ザ・警察官』に興じていたあの頃のわたしに、ちょっとだけ会いにいこう。


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