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着物を巡るアレコレ:着物警察
リアルでつながりのある方はご存じですが、着物好きです。
着物を着るようになって、17年くらいになりますが、17年くらい前の第一次着物ブームの時は、色々集めたものの着ていくところがなく、箪笥の肥やしにしてしまいました。
8年ほど前から、和のお稽古を始め、また、「日常の着物、カジュアル着物」というジャンルが着物好きの間で定着したため、今では年に100回ほど着物を着ています。
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聞いたことがあるかも知れませんが、着物界隈では、「着物警察」と呼ばれる人がいます。残念ながら(?)私は遭遇したことがありませんが、いわゆる正統的な着こなしをしていないと、馬鹿にされたり、たしなめられたり、いきなり着付けを直されたりすることがあるようです。
すごく不思議なのは、洋服で歩いている人には、そんなことする人いませんよね。もちろん、眉をひそめている人はいますけど、直接馬鹿にしたりたしなめたり、着方を直されたりするようなことはない。そんなことをしたらむしろ、かなり大騒ぎになりそうな気すらします。
でも、なぜ着物だとやっちゃうのか?
なお、私は着物警察に遭遇したことがないのですが、それは自分が超ベリーショートに眼鏡で体格もしっかりしているためで、何か言ったら倍返しされそうに思われるからではないかと思います(苦笑)。
狙われやすいのは、若い人とか、小柄な人とか、物静かな感じの人みたい。
これ、今話題の体当たりおじさんっと一緒やないかい!
最近読んだマンガの中に、象徴的なシーンがありました。
私と同じく普段着の着物好きな女性(Aさんとしましょう)、彼女はアンティーク着物が好きで、脇はちょっとだぶついていて、半襟と帯揚げをたっぷり見せるのが好き。なので、帯は若干下目に締めているようです。休日、やはり着物好きな職場の年上の女性と遭遇すると、職場の女性はお茶のお稽古に行く途中で、やはり着物姿。
その職場の女性は「いいわねー」と言いつつ、手際よくAさんの着物を「正統派」の着付けに直していく(苦笑)。それに対して、Aさんは心の中でめちゃめちゃ憤慨するんですよね(笑)。
ああ、着物が「晴れ着」になってしまって日常着ではなくなっているんだな、と思わせるシーン。そして、着物警察の人たちの心情の一端を知ることができる、秀逸な逸話だと思いました。
そもそも、着物は着物=着るもの。昭和の前半までは、着物で生活している人がたくさんいました。それが当たり前。その時には、持っている着物にも色々な種類があったでしょう。
生活のための着物。
ちょっとおめかしのための着物。
冠婚葬祭のための着物、などなど。
それが、人が着物を日常的に着なくなって、太物(綿など)がどんどん減って、高価な正絹の着物が「着物」になっていくうちに、着物はある人たちにとってのステイタスシンボルになってしまったのだと思います。
もちろん、カジュアル着物にだって、特別感はありますよ。
そこは、否定しません。
しかしそれは、ファッションの1つとしての特別感。
ブランドに特別感を感じる人がいるように、着物に特別感を感じる人がいるって言うだけの話。
でも、左前や冠婚葬祭など以外は、着物は自由であるべき。
洋服だろうが着物だろうが、T.P.Oを意識しないとならないのは同じでしょう。
正統的な着こなしをしたい人は、そうすればいい。
和洋ミックスが好きなら、それも良し。
襟をどのくらい抜くかも、人の好み。
他人の着こなしを笑うな。
それが例え善意からだったとしても、大きなお世話ですよね。
だって、着物も所詮着るものなんだから。