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正欲

朝井リョウさんの【正欲】を読んだ。

多様性などここ最近頻繁に耳にする言葉について、普段から抱いていた違和感を言葉にしてくれた本だと感じた。

今の多様性は、多数派にとって許容できる範囲での多様性でしかない。

多様性とは、自分の想像の外にいる人、あるいは、生理的嫌悪の対象である人をも受け入れることなのだと思う。
嫌悪の感情を抱くなというわけにはいかないけれども、少なくともあるがままに認めることなのだと思う。
とはいえ、結局、嫌悪の感情を抱かれる側からすれば、たとえ認められたところで、嫌悪感を抱かれる可能性がある以上、肩身の狭い思いをしないといけない。何も変わらないのではないか。
多様性を認めようという動きはとても前向きだなと思う。ただ、決して成功しない試みでもあるかのように感じた。

それにしても、自分は正義の側に立っている、自分が善だ、という前提で話をする人は、本当にしんどい。そういう人が、一番多様性から遠いところにいる気がしてならない。

たぶん、みんな差別してるんだと思う。それが性別に基づくものなのか、学歴に基づくものなのか、収入に基づくものなのか、思想に基づくものなのか、容姿に基づくものなのか、性格に基づくものなのかはしらないけど。
容姿による差別はダメで、性格に基づく差別が問題とならないのは何故だろう。
社会的な取扱いの差さえなくせば問題は解決するのだろうか。性根の部分での侮蔑の眼自体を消さなければ、結局、被差別者は辛い思いをすると思うのだけど。

おそらくこの本の登場人物に、いわゆる差別主義者もいなければ悪人もいなくて、ただ、全員が全員、少し想像力が足りてない。でも、それは決して彼らの落ち度ではなくて、人間の限界だと思う。

自分はダメな存在で、他人を知らぬ間に傷つけ圧迫しているという前提にまず立つことがスタートなんだと思う。

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