【デレマス】もう夢見りあむはおもちゃではなく「アイドル」になったんだ
こんにちは。
今回は、どうしても1人のアイドルに対してある思いが募ってきて、ここで表現したいと思って文章を書きました。
夢見りあむ。
2019年2月7日に『アイドルマスターシンデレラガールズ』に追加された瞬間から、かなり話題になったアイドル。謎に包まれたプロフィール・「めっちゃやむ」「チヤホヤされたい」といった言動・「夢見りあむ」という名前そのもの……賛否両論と思われる要素を内包したアイドル。そして、登場から数日でTLを名前やイラストで占領したアイドル。
また、第8回シンデレラガールズ総選挙で、最も注目された(されてしまった)アイドル。1人のプロデューサーの”お気持ち表明”がきっかけとなり、「りあむは許せない」「新アイドルを追加させて、既存のアイドルを無視する気か。運営何してるの」「出来レースの選挙じゃつまらない。りあむがいて面白い」など、本当に様々な意見が飛び交う環境となりました。結果的に、大きなエネルギーを受けた彼女は総選挙で全体3位という結果になりました。
当時は「五条枠」など色々な言われようをしていました。僕自身も、この結果は話題性優先だと思いましたし、本当の人気ではない要素も含まれていると思いました。しかし、SR,SSRのカードとセリフを読んでいく中で、考えが変わっていきました。
夢見りあむの「アイドルとしての物語」は、「総選挙で祭り上げられて3位になってしまったこと」がスタートラインの物語なんじゃないかと。そして、総選挙後のりあむが「共感を生める”アイドル”夢見りあむ」の物語を作り始めているんじゃないかと。
※文中での「ぼく」という表記は「夢見りあむの一人称」、「僕」という表記は「筆者の一人称」として解釈してください。
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まず、夢見りあむについてもう一度確認してみようと思います。
初期カードで示された夢見りあむの大きな個性として、『アイドルの大ファン』『自己顕示欲の塊』『自己肯定感が低いのに他人を見下す』『リアルの人間関係に恵まれていない』『やる気がない』といった面が強調されていました。
(モバマス)[無印R,R+]『はー、めっちゃやむ!外見だけはくっそ健康に見えるかもだけど心はガラスのギリ10代!学校辞めたい人生詰んでる!
そんなぼくがりあむちゃんだよ!!アイドルになったらワンチャンあるかな!?な!?』『炎上でもいい!目立ちたい!』『うわーん、人から頼りにされたいよう!怪しい勧誘以外でー!』『チヤホヤされたい…チヤホヤ…チヤホヤ…』『Pサマお願い!ぼくに人生逆転のチャンスをおくれ!あ、タダで頼む!!』『ねぇ似合ってる?これぼく似合ってる?チラッチラッ…何とか言ってよう!』『顔がいいアイドルが…しゅき…』『推し変するしオタクは信用できない!ソースはぼく!Pサマは違うよね?』『ネットで叩かないでほしい!!』『意見はマシュマロに包んでそっと投げてほしい…甘い言葉だけくれ』
(アイドルマスターシンデレラガールズwikiより引用)
(デレステ)[N,N+,]『レッスンせずに歌もダンスもできるようになりたい…お手軽に…』『特技もない!個性もない!りあむちゃんは生きのこれるのか!』『ぼくなんか…チラッ…アイドルに…チラッ…向いて…チラッチラッ』『レッスンめんどくさい…頑張りたくない…やる気なんてないよう』『あぁー、同僚の近くに置かれると自己肯定感がぐんぐん下がっていくうー』『Pサマのプロデュースがなかったら、りあむはただの痛いオタクだから!』『はー…ぼくの人生いったいこの先どうなっちゃうんだ…まぁいいか』『スケルトンくらい存在感薄い!?凹むぞ!ザコメンタルだぞ!』
(アイマス デレステ攻略まとめwikiより引用)
発言だけを見ると、はっきり言って採用担当が名前を間違えて獲ったんじゃないかレベルの発言が散見されます。「アイドルをナメるな」。そのような声が聞かれても致し方ないでしょう。
しかし、今見返すと、りあむの発言はデレマスのプレイヤーの心の声を代弁しているようにも聞こえます。少なくとも僕は今この文章を打っている段階でそう感じました。友達が少ないこと、チヤホヤされたいこと、人から頼りにされたいこと、自分を「痛いオタク」と感じていること、自分の長所が何もないと思っていること、人生が詰んでいる(ように感じる)こと……。りあむのセリフのひとつひとつが、自分の中の「見たくないところ」をつついてくるように思えたのです。
しかも巨乳だし顔が良い。努力が嫌いなのに、見た目の要素が恵まれているのもりあむです。つまり、チヤホヤされやすい要素を努力なしで手に入れているということです。おそらく、そんな彼女にコンプレックスと同族嫌悪を感じた人もいるんじゃないでしょうか。「あいつは自分と同じような考え方なのに、顔と乳は恵まれている。ずるい」みたいな。
そのことを一番わかっているのは、他ならぬ夢見りあむ自身でした。りあむはアイドル好きであり、理想像を度々語っているにも関わらず、アイドルの卵である自分へ嫌悪感を催す描写が多いです。
『アイドルになったからには尊くないとじゃん!生まれてきてくれてありがとって言われないとじゃん!?誰かに言われたい!』『顔がいいアイドルが…しゅき…』『だってまだぼくアイドルじゃない!アイドルってのは尊くないといけないんだよ!?ぼく尊いか!?』『こんなところに来ちゃって…ぼく、叩かれないかな』
明らかに理想と現実のギャップに苦しんでいます。魅力のない(と思っている)自分は、ぼくの中での”理想のアイドル”にはなれないんじゃないか。そんな自己評価だったのでしょう。
…………今思うと、総選挙前にヘイトを集めるのも当然だったのかなと思います。だって、彼女は他のアイドルが長年かけて「努力して」「積み上げてきた」推されるための魅力を、「本人の努力に関係なく」「ぽっと出で」持っていたのですから。さらに、プレイヤー自身の嫌な心の内を見透かしたような言動をしてくるのですから。
その結果が、第8回総選挙における「お気持ち表明」と超賛否両論の世論だったと思います。デレマスファンの運営に対するヘイトも溜まっていったのかなと思います。だって、(当時の)彼女は自分たちと同じ要素を持ち合わせているとはいえ、「共感しうるだけのエモさ」をまだ持ち合わせていなかったのですから。
第8回総選挙で、夢見りあむは第3位という結果になりました。あえて「勝ち取った」と書かないのは、当時の状況から見て、りあむ自身が勝ち取った高順位ではないからです。圧倒的な賛否両論の声とネット上で湧き上がったムーヴメントを受け、それに乗っかったデレマスファンと一般層の票を一気にかっさらっていったのが当時のりあむでした(僕にはそう見えました)。そして、3位という結果にもまた賛否両論が起こりました。「なんであいつが3位なんだ」という声も多く目にしました。
でも、夢見りあむにとってはこれが"アイドルとしての"スタートラインでした。灰かぶりの女の子「夢見りあむ」が、自分自身の人生を、アイドルとしての人生を逆転させる物語の始発点だったのです。それは、後々に出てくるカードを見て、強く感じました。
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ここからは、夢見りあむがどんな”アイドル”になっていったかのおはなし。
総選挙後に出た夢見りあむのカード[水着商法]と[夢見りあむは救われたい]のコメントを見てみます。まずは[水着商法]から。
[水着商法]『日陰で生きてく運命だったのに、どうしてこうなったのかな!?』『ぼく最近ちょっと大人気じゃん?そうだね自意識過剰ちゃんだよ!だってぼくの声が届いたってことじゃん?全国1000万人のやみくんやみちゃんたちが言えなかった言葉だよ!さっすがりあむちゃん新時代のアイドル!!きてる!!』『最近どこいっても見られてる気がするんだよう!こそこそ話されたりしてあー生きづらい世の中!』『ぼっちのぼくを救って!
え……ほかのアイドルと?遊べって?それはほら、ぼくオタクだし友達作るのヘタだし他人との距離感よくわかんないしガチで。
だいたいリアルにチヤホヤするのもされるのも得意じゃないんだよう!見てわかるとおり友達はネットの海の民ばっかだよ!』
(アイドルマスターシンデレラガールズwikiより引用)
まず注目したいのは、「『ぼく』の声は、『全国1000万のやみくんやみちゃん(≒オタク層)』が言えなかった言葉だ」という点です。つまり、りあむは、自分自身を過去の自分(=アイドルオタク)の代表として考えている点が挙げられます。裏を返すと、自分はオタクの代表としてここに立っているとも取れます。
『絶賛のし上がり中のりあむちゃんだよ!みんなすころう!よ!』『いやここ立たせたの誰だよみんなじゃん!?一度推したら、責任もって最後まで推そう!ぼくはおもちゃじゃないんだから!!』『えっ、ぼくホントに推されてる?Pサマ、観客サクラじゃないよね?ね!?』『この会場でぼくを推してるの、Pサマだけなんじゃないの!?』『えっ、また燃えてる?邪魔ってどういうこと!?めっちゃやむ!』『やっぱ場違いだよ、うわーん!』
もう1つ注目してほしいのは、りあむは「自分が場違いな舞台に立たされた」ことをとても理解しているということ。自分が総選挙3位になったのは、自分以外の要因が大きく、自分の実力じゃないことを誰よりも分かっていました。また、自分が「総選挙3位に値するアイドルじゃない」ことも分かっていました。だから、プロデューサー以外の人間は、自分のことを推してくれたわけではなく道具扱いしていたことにも気づいていたのです。
この時点で、泣き言は言いつつもアイドルとして舞台に立てている夢見りあむは、とても強い女の子だと思えました。りあむの性格から推測すると、このままアイドルを引退したり、自傷に走る可能性もないとは言い切れません。それでも、与えられた仕事は泣き言を言いつつもしっかりやり切る姿勢を見て、僕は「1人のオタクの同士として」りあむはとても強いなと感じました。
そのあとに出た[夢見りあむは救われたい]は、彼女の1つの到達点を表していたように思います。彼女の「アイドルとしてのスタンス」が確立されたカードでしたから。
『調子のってるって炎上しても、エンジョイしてやる!アイドルにならなきゃって思い込んでたのはぼくだった!もう怖いものなんかないぞ!オタク!全員かかってこい!』『アイドルになってすぐのよくわかんない選挙?とかでみんなが好き勝手言ってさ。ヤババって気づいたし。ぼくのこと話題にして、ぼくじゃないぼくの話をしてた。』『決めたんだ。みんなのアイドルなんかになってやらないって!ステージの上から笑ってやるって!』『アイドルって尊いよな?推せるよな?救ってほしいよな?でもぼくはそれができるほど人間できてない!尊くなんてない!だからアイドルになれない!だからアイドルにならない!』『ぼくはアイドルじゃない、りあむとしてここに立ってる!ぼくはぼくのまま、『いま』を楽しんでやるって決めたんだ!さぁ、りあむのりあむによるりあむのためのステージ、始めるぞ!』
(夢見りあむをネットでまとめるwiki様から引用)
要約すると、「どうせ自分はりあむ自身の”理想のアイドル像”にはなれないし、どうせ叩かれるぐらいなら自分が楽しいステージを演じてやる!」といったところでしょうか。
この発想の転換によって、夢見りあむは強力な「共感性を得られるアイドル」になれたように感じます。皮肉にも、総選挙で祭り上げられて、自分の中での理想像を捨てたことによって、りあむ自身が「尊い」「推せる」「誰かを救える」アイドルになった気がします。
夢見りあむは「オタクの鏡写しの姿」であることは、以前の文で説明しました。僕自身がそうなのでよくわかるのですが、自己評価が低くて人生が詰んでると思っている人間は、自己嫌悪が癖になって負のスパイラルに陥りがちです。また、僕自身、他人の目ばかり気にして好きなことができなかったり、自分の意見を言えないこともたくさんありました。明らかに、笑顔よりため息の方が多い人間でした。正直言って、そのような方は僕以外にもいるはずです。
そんな夢見りあむが、「どんなに炎上しても自分らしさを貫く」「理想の評価より、自分の意思を尊重する」という姿を見せてくれました。僕らがいくら周囲から言われたり本で読んでもたどり着けない境地に、りあむは自分でたどり着いたのです。しかも、その境地は、僕らみたいな『全国1000万のやみくんやみちゃん』が望んでも得られなかった「人生の楽しさ」「自分の意思で突き進む強さ」を内包しているものでした。
自分を出せずに苦しんでいる人、自分のことが大嫌いで今すぐ人生なんてやめちゃいたい人、人生に絶望して希望を見出せない人、誰からも愛されていないと思っている人…………。『全国1000万のやみくんやみちゃん』には、本当に人生ハードモードと思ってる人もたくさんいるはずです。自分もそうですから。
だからこそ、今の夢見りあむは尊い存在になっているんだと思います。自分と同じような境遇で、自分と同じように人生を諦めかけていた人間。いざ勇気を出して一歩踏み出してみたら、おもちゃにされた挙句ありえないほどの批判を受けた人間。そんな彼女が、「自分自身を最も優先するアイドル」になったことで、自分のやりたいこと言いたいことを尊重して生きていいんだという希望になっているはずですから。
何より、SSRの特技名は「好きなことして生きていく」なのですから。
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総選挙後もりあむの人気は衰えていません。
りあむ専用のwikiが立ち上がったり、嫁プロが出来たりしました。りあむPを名乗る方も多く見かけるようになりました。
今のりあむなら、「りあむが好き」と言うプロデューサーさんに対しても、なんだかんだ文句は言いつつも笑顔を見せてくれる気がします。
それだけ、りあむが望んでいた「責任持って最後まで推してくれるファン」が増えたことを、りあむ自身が一番わかってくれているはずですから。
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読んでいただきありがとうございました!