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note:78 朝牛セット(並)【BreakfastNotes】
「朝食」は「朝、人を良くする」と書く。朝食のイメージに「卵」はつきものだ。朝食と言えば卵を使った料理が多い。
農家だった祖父に、朝、鶏小屋に連れて行かれ、卵をいくつか回収した思い出もあった。母の実家に泊まった時の記憶だ。まだ温かくて、それこそ生命の塊で、割ってしまわぬようにザルに入れて、台所の祖母と叔母に持って行った記憶もある。
朝からうるさい鶏小屋の、喧騒というか、卵を持って行かれまいと抵抗する鶏達も忘れられない。卵こそ何よりも朝を感じ、さらに生命の象徴な気がする。
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卵ならば、なか卯に行って卵かけご飯を食べるのが一番ダイレクトだろうけど、私の足は吉野家に向いていた。
卵を溶き、真ん中に作った穴に半分流し込んで一度ご飯としっかり混ぜる。もう一度穴を作って残りを入れてもう一度混ぜたら、アタマで蓋をする。七味を飾り程度に振って、気持ち待ってから食べ始める。
朝、全身に染み渡るように一粒一粒が行き渡るのを感じながら食べ進める。アタマの肉もよく味が染みている。あおさの味噌汁も味が濃く、休む暇もない。残りが1/3くらいで卵かけご飯に少しべに紅生姜を入れる。全身に血が通うような、目覚めるための朝食だった。
隣の若者が「牛丼並とチーズ牛丼並」を頼んでいたが気持ちがわかる。吉野家の牛丼は並がいい。並を二杯食べたい。
……私は朝食が好きだ。まだ食べれそうで、お腹が空いている錯覚がする。