春風に舞う少年 #2
月日は流れ、咲は中学二年になり
リナと美保は同じクラスになった。
春の暖かな陽気が漂う日曜の昼下がり、
テニス部の練習を見に学校でリナと美保と
待ち合わせた。
三人で恋バナに花を咲かせながら
それぞれが想いを寄せる先輩の姿を追う。
そんな時間を過ごしていたら、テニス部の
活動が終わりを告げる。
私たちは慌てて隠れるように自転車置き場で
身を隠しながら、テニス部の部室に視線をおくる。
(今日こそ八木先輩に話しかけてみよう!)
そんな話しを三人でしていた。
咲の心は騒がしかった。
それを知ってか知らずか、八木が一人で
咲たちがいる自転車置き場の前へと続く道を
こちらに向かって歩いて来た。
(どうしよう…、どうしよう…。)
リナが咲の背中を押す。
咲は押されるままに、八木の視界へと入り込む。
イヤホンを付けながら歩く八木を、緊張で
何も言えずに立ち尽くす咲を見て
『バイバイ』
一瞬、頭の中が真っ白になった。
八木の背中を見つめながら咲は固まっていた。
「『バイバイ』だってぇ~、キャー」
と近づくリナと美保に冷やかされながらも
咲の心の中は嬉しさでいっぱいだった…
それから数日した夕方、リナと美保が
慌てて咲に駆け寄って来た。
「さっき部活の先輩から聞いたんだけど…
八木先輩と詩織先輩が…
付き合ってるんだって。」
(えっ!?)
ズキンっ。
心を何かで表現したら、こんな音と傷みが
咲の中で響き、感じただろう…。
どうやって家に帰宅したかもわからないほど
ただ、涙をこらえるのに必死だった。
夕飯も早々に、暗い部屋に明るく差し込む
月明かりだけが綺麗な中で
ひとり肩を揺らし、冷たい雫が咲の腕に
つぎつぎにこぼれ落ちた…。
ここまで読んでいただき
ありがとうございます(^人^)
また次回は日を改めて投稿しますので、
しばらくお待ちください。