『ホラーが書けない』4.5話 四方山話(1)【Web小説】
第4.5話 引っぱるモノの正体はあの妖怪!?
俺の友人は姿の見えないナニカから手を引っぱられるという珍しいアプローチを受けることがある。そうだなぁ……「霊感がある人が怪異に遭遇した」って言ったほうがわかりやすいか?
ともかく、友人はいろんな奇妙な経験をしているが、腕を引かれたとき、妖の姿は見えなかったので正体は謎だった。
零感の俺はもちろん正体なんてわからないので、だんだんとその妖を気にかけることは減っていった。
忘れそうになっていたとき、有力な情報が寄せられたんだ。
「引っぱってきたナニカは、妖怪の『袖引き小僧』ではないでしょうか?」
読者さんからの情報だ。ありがとうございます!
すばらしい情報をいただいたが、俺はホラーやオカルトの知識にうとくて、「袖引き小僧」が何者なのかまったく知らない。さっそくインターネットを使って調べてみた。
「袖引き小僧」の概要
日本の妖怪
夕暮れの道中に出没する
袖を引くいたずらをする
ふむ、ふむ。……なるほど。
いろんなサイトをめぐった結果をまとめると、袖引き小僧は埼玉県にいるとされてる妖怪で、夕暮れに道を歩いていると服の袖を引っぱるらしい。
う――ん。引っかかるところがあるなぁ。
一つは「場所」だ。埼玉にいるらしいけど友人が怪異に遭遇したのは東京だ。腕を引いたのが袖引き小僧ならば東京に進出してきたのか? それとも袖引き小僧は東京にも存在しているのか?
もう一つは「行動」だ。ネットの情報だと、袖引き小僧は服を引っぱるだけのいたずら好きな妖怪といった感じだ。ところが友人にアプローチしてきた妖は腕をつかんできている。伝承の袖引き小僧とちょっと違うんだよなぁ。別の妖怪なのだろうか?
友人をナンパしたこの妖は正体不明だったので正直、忘れかけていた。読者さんから情報がこなければ、記憶の中にうずもれていただろう。しかし「日本の妖怪かもしれない」というヒントを得て、興味がわいてきた!
友人が遭遇した怪異の正体が袖引き小僧だったら、なんだか夢がある。妖怪は単なる想像で存在しないと思っていたけど、もしかしたら――。
夜に道を歩く妖を描いた『百鬼夜行之図』などを見ると、日本にはたくさんの妖がいるらしい。数の多さからおそらく名前のない妖もいそうだ。
幽霊や妖怪などの妖の存在はうやむやだ。むかしは存在を恐れていたかもしれないが、現在はいないという否定的な考えが多い。また正体が不明なため妖の詳細を知りたくても情報が足りない。
類似例を情報収集して調べていくしかないけど、奇妙な出来事だから時間がかかりそうだ。
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【参考】
✎ ネットより
百鬼夜行:
いろんな化け物が夜に列をなして練り歩くこと。
むかしの人は、百鬼夜行を見たり遭遇したりするのはよくないこととして恐れていた。百鬼夜行之図や百鬼夜行絵巻などの作品があり、そこには多くの妖が描かれている。また『大鏡』や『今昔物語』など、古い書物の中に百鬼夜行が書かれた作品もある。
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神無月そぞろ @coinxcastle
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