『ホラーが書けない』32.5話 四方山話(7)【Web小説】
第32.5話 霊感のない俺は今日も悩む
俺の友人に霊感があるやつがいる。
そいつの霊感はちょっと変わっていて、世間では幽霊が視えるという霊感をもつ人が多いなか、妖にふれられたり怪音を聴くなど、霊が視えること以外の経験が多い。
例えば、電車で読書していたら姿の見えないモノに腕を引っぱられたことがあったし、会社に向かっていたら急に背中にナニカが落ちてきたなどだ。
眠りにつく直前に奇妙な警報を聴いたこともあれば、急に獣臭いニオイがしたり花の香りがしたりと不思議な現象に遭遇している。
こんなふうに奇妙な体験が多いからなのか、友人にはちょっと変わった癖というか、習性のようなものがあることに気づいた。
一つは「離れた位置にいるときに後ろから声をかけてもすぐには反応しない」こと。もう一つは「目の前で人が転ぶなどのアクシデントが起きたときのリアクションが少し遅れる」ことだ。
はじめは気にならなかったけど、付き合いが長くなるにつれて、意図的なところがあるように思えてきたんだ。
そこで友人に「どうして反応が少し遅れるんだ?」と質問したことがある。すると友人は予想してなかった答えを返してきた。
一つ目に対する回答は、
「声を真似して話しかけてくる妖がたまにいるんだ。
うかつにふり向けないよ」
二つ目の答えは、
「目の前にいるヒトが実在しているのか、それとも幽霊なのか、区別できないときがある。
もし幽霊だったらほかの人には見えていない。
それなのに自分がリアクション取ると変な人になってしまう」
霊感のない俺にはまったく予想できなかった答えだった。
これは霊感がある人には「あるある」なことなのだろうか?
それとも友人だけなんだろうか?
俺の友人は霊感があること以外にもユニークなところがあるから、霊感がある人のあるあるネタなのか、個人の習性なのか、判断に困ってしまう。
あと一人、霊感のある人がいてくれたら検証できるのに……と思うのは贅沢だよなあ。
▼ 第33話 へ ▼
▼Web小説『ホラーが書けない』をまとめているマガジン
カクヨム
神無月そぞろ @coinxcastle
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?