調整出来たら満足(分かる)

BARKS: 【俺の楽器・私の愛機】665「もうドストライクなストラト」.

ストラトキャスターというのはこの世で最もポピュラーなギターである。

「の一つ」と付けなくてもいいレベルで。

初心者向けなイメージと玄人好みなイメージの両方があるというのは凄い。

人気があるから人気があるというループに入ってるし、何も考えずに買おうとした時に「目を瞑って」一本掴むとストラトというぐらいストラト(と、そのパクり)は世に出回っている。

ここが初心者向けかつ玄人好みという事になる理由でもあるが、エレキギター黎明期そのままの楽器でもあり、最新のパーツ諸々が載った最新のギターとしても存在する。

まあ言ってみれば、ボルトオンネックでアームが付いてるあらゆるエレキギターのルーツなんだから、時々来るレスポールの人気が高い時期を除くとエレキギターとは「ストラトとストラトのようなもの」といってしまえそうな気すらする。

黎明期そのままのギターかつ最新のギターというのはつまり、ストラトはなんとでもイジれる…イジりやすいという意味であり、リプレイスメントパーツがやたら豊富という事であるし、パーツは変更せずともその調整の幅がやたら広い。

例えばそれは、ストラトフリーク同士のブリッジ「フローティング派」と「ベタ付け派」がほっぺたをつねり合う事すらままあるレベル。

ストラトはブリッジを留めているビスの締め具合で変貌したりする。

ネックジョイントのビスの締め具合でも変貌したりする。

ネックジョイントの方はストラトに限った話じゃなく、ボルトオンネックならどんなギターでもそうなんだが、そんなところで宙を睨んでうなっているのは専業リペアマンを除くとストラト使いぐらいな気がする。

まあそんなこんなでストラト使いはストラトを弾き続けていると一定の確率で調整にハマる。

そしてその分弾かなくなるw

ギター本体の価格の意味が薄れるか、症状が重いと意味自体なくなり、掘り出し物を求めて安物を物色しだすし、ジャンクギターコーナーが部品売り場に見えるようになる。

「これ元は結構良いギターなんですけど、状態がこういう感じなんで…」

と、申し訳無さそうに言われると喜ぶ。

で、各所をイジり、「見てみろ!値段ではない!ストラトはそもそも安物構造である事が定義なのだ!カスタムショップ最高!なんつーのは、高いからそれなり以上に調整されたものを弾いているからだ!一般に個体差と言われるものも大概そういうとこだ!」などと吠える。

序盤からある程度調整が進むまでの間は、RPG序盤のようにサクサクレベルが上がり、彼らは世界を救う自身に満ちている。

問題は、彼らの調整技術が上がってそのギターにやれる事をやり尽くした時にある。

そいつの底が見える。
「きっちり調整された安物」を持っている事に気付くのだ。
いや、多分安物じゃなくても「なるほど、私の求めるギターは他にあるという事か」ってなる。
ドラクエ2でレベル上限が99ではない事に気付くのが、無駄にレベルを上げようとするヤリコマーであるように。

この時、彼の演奏技術は全盛期のそれに及ばない。

弾く時間が減っているから当然だ。

お手々の調整しろよ!w

である。

そういうわけで、調整が済むと満足するというのは物凄く分かる。

全盛期ほど弾きたくないけど、ギターには興味があるから触っていたいという。

それは坊主頭にはちみつレモンを与える事に喜びを感じる心境に近いものなのかもしれない。

ストラト調整おっさんに、坊主頭ギタリストを巡り合わせると「ドクとマーティ」なコンビが結成されそうにも思えるが、これがなかなか現実にはそうならない。

坊主頭ギタリストはストラト調整おっさんが好きではない。

しかし、彼は後にストラト調整おっさんになる可能性を秘めている。

なんでしょうね。

プラモって、最初は「キットがあるからそのように作る」で、次に「気に入らないところは改造する」になり、その次は「作りたいものがあるから自作するし、そのキットが出てれば利用する」になる。

みたいなもんかな。

ゲームって、ルールがあってクリアがあるけど、やり込みゲーマーは縛りプレイのためにそれに適したゲームを探す。

だとか。

坊主頭ギタリストがストラト調整おっさんを好きじゃないのは、そのおっさんらがイマイチだからで、本当に優れた調整おっさんはもうそこを越えてギター作る方に回ってるんだろうな。

そんでその、優れた調整おっさんが少なからずいるから、そいつらの作った「ストラトのようなもの」が出回りまくっている…あっ!(察し)




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