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Aptos: Meta「Diem」の後継ブロックチェーン?

重要なポイント
・Aptosは、分散型システムが現在直面している問題を解決するために、元Metaの社員によって開発された。
・トランザクションのブロードキャスト、ブロックデータの順序付け、データストレージを並行して処理し、時間を節約するスピード重視のアプローチでスケーラブルなシステムを提供するとしている。
・Aptosは、脆弱性をスクリーニングし、悪意あるスマートコントラクトをユーザーに警告する検出システムを用いて、より安全なスマートコントラクトエコシステムを提供する
・本格的なローンチに先立ち、Aptosはすでに多くのサポートを集め著名なVCから支援を受けていることもあり、既存のブロックチェーンネットワークと競合することが予想される

はじめに

Aptosブロックチェーンは、2022年10月17日にメインネットをローンチする以前から、すでにクリプト業界において著名な存在となっていました。「最もセキュアでスケーラブルなレイヤー1ブロックチェーン」という魅力的な宣伝文句が広まった結果、ソーシャルメディアでの存在感は高まっていて、公式Twitterのフォロワー数には既に19万人以上でした。一部では「Solana キラー」とも喧伝され、何百ものSNS投稿は数百万のインプレッションを集めており、エンゲージメントはピークに達していました。

しかし、実際のローンチその華々しさとは正反対なものとなりました。不透明なトークノミクスに加え、TPSは公式発表の16万には程遠い、ビットコインの7よりも低い4に止まるといった事実が公になってしまったのです。


にもかかわらず、Binance、OKX、Huobi、MEXCなどのトップクラスの取引所はサポートを継続し、そのネイティブコイン(APT)を同時に上場させていったのです。

さて、Aptosが上記の問題の事後解決に取り組んでいる間、Aptosとは何か、そしてAptosがなぜVCにとって次なる資金の投下先になっているのかについてみていきましょう。

Aptosとは何か?

Aptosは、「安全かつスケーラブルで、アップグレード可能なWeb3インフラ」を提供すると主張しています。単一の「完璧な」ブロックチェーンという目標を掲げる、レイヤー1ブロックチェーン競争の新しい参入者だと言えます。

完璧なブロックチェーンとは、分散性を維持し、高度なセキュリティを実現しながら、安定した高速かつ低コストな取引処理、すなわちスケーラビリティを提供することが期待されます。これはブロックチェーンのトリレンマとも呼ばれ、ほとんどはこのうちのどれか2つだけを実現し、もう1つを犠牲にしています。既存のプロジェクトらはこれを解決しようと絶えず試みており、Aptosもその現状を打破せんとするブロックチェーンの一つです。

Aptosが期待され議論の的となっているのは、それを解決しうる技術だけでなく、その背景で開発に取り組むチームのためでもあります。

Aptosの創業者

Aptosは、元Meta(旧Facebook)社員が率いるチームによって設立されました。CEOはMo Shaikh、CTOはAvery Chingです。AptosのCEOであるMo ShaikhとCTOのAvery Chingは、ユーザー体験にフォーカスしかつクリプトコミュニティないしより大きなユーザー層に利用してもらえるブロックチェーンの提供を念頭に置いて開発をスタートしました。

そのために、Aptosは既存のソリューションを最適化そしてより革新的なソリューションの導入を試みています。望ましい最終形態はというと、ダウンタイムのない、スケーラブルで分散化された、セキュリティ重視の、超安価なブロックチェーンネットワークです。

2018年から開発を開始したAptosのチームは、3年以上を費やしてコードベースを磨き、ローンチできるだけでなく、Aptosを高性能なエンタープライズレベルのブロックチェーンにするために様々な機能を構築してきました。チームは、a16zとFTX Venturesが主導する一連の投資家から、3億5,000万ドルの資金を調達しました。

出典:Houbi Research

Metaとの関連性は非常に大きな注目を集めましたが、著名ソーシャルメディア企業と直接関連する最初の暗号通貨というわけではありません。その前身であるFacebookのDiemも、この分野やそれ以外の分野で多くの波紋を呼びました。この2つにはどのような関係があるのでしょうか?

Aptos: Diemの後継者?

マーク・ザッカーバーグが金融規制という壁にぶつからなかったら、Meta(当時はFacebook)は「bank the unbanked (銀行口座を持たない人々に銀行サービスを提供する)」を掲げたプロジェクト「Diem(旧Libra)」は、統一された「パーミッションレス」な金融インフラを通じて世界中をつなぐ分散型決済システムとして大きく前進できていたことでしょう。AptosのCTOであるAvery Ching、そして当時Facebookにも関わっていたMo Shaikhは、上記を追求し構成されたチームに在籍していたのです。

ザッカーバーグのプロジェクトは、フィンテック界の大物達の参画と強力なパートナーシップにもかかわらず、厳しい金融ルールに屈してしまいました。とはいえクリプトコミュニティはそもそも、低い処理性能・中央集権性、Diemが法定通貨と債券にバックした単なるステーブルコインであることなどの欠点に関してしらけ気味だったことも確かです。

Diemは2019年から2022年Q1にかけて周知されていきましたが、実はAptosブロックチェーンの開発はそれ以前に始まっていました。Diemとは対照的に、Aptosは暗号通貨(APT)を搭載したスマートコントラクト・ブロックチェーンとして開発が進められていました。

開発チームの類似は、DiemとAptosの共通点です。Shaikh氏及びChing氏、そしてAptosに参加する他の元Meta社員は、その経験を活かして、スマートコントラクト技術による分散型アプリケーションをサポートする安価で拡張性のあるプラットフォームを成長・発展させようとしています。

Aptosブロックチェーンの仕組み

Aptosは、柔軟なプログラミング言語(Move)、データシャード技術、コンセンサスメカニズム、ステートマシンを採用し、スケーラブルで高速かつ安全なシステムの実現を目指します。

プログラミング言語Moveは、Diemチームが特別に開発したものですが、Aptosにおいても採用され、アプリの開発に使用されます。Moveは、Rust(プログラミング言語)から開発された高度なプログラミング言語で、プロトコルやアルゴリズムの開発において特別な能力を発揮します。イーサリアムブロックチェーンのSolidityのように、Aptosブロックチェーンの中核はMoveにインスパイアされたプロトコルを使って設計されています。

Aptosのステートマシンは、Move Virtual Machine(MVM)です。MVMはEthereumのEVM(Ethereum Virtual Machine)に似ており、Moveモジュール(≒Ethereumにおけるスマートコントラクト)をAptosブロックチェーンが理解できるバイトコードに変換します。Moveモジュールは、Aptosブロックチェーンへ実装命令を送るコードを指し、フリーランニング・トランザクションを秘密鍵所有者が許可要求(複数可)を承認した場合にのみ実行可能にするシステムによって、Aptosを自動販売機のようなシステムとして機能させます。

Aptosのブロックチェーン取引とチェーン分析については、Aptoscanで調べることができます。

Aptosのブロックデータの扱い方

Aptosは、Move固有の柔軟性とプロトコルに加え、メモリーライトセットを次に実行されるブロックのキャッシュとして活用するスピード重視のアプローチでブロックデータを取り扱います。これにより、俊敏なシステムの誕生が期待できます。その1つが、同時及びバッチモデルのデータ処理メカニズムです。つまりAptosは、トランザクションのブロードキャスト、ブロックデータの順序付け、データの保存をすべて同時並行で実行するため、時間を大幅に短縮することが可能となっています。これにより、理論上Aptosは他ブロックチェーンよりも少なくとも16倍高速になるといいます。

Aptosでは、トランザクションはバッチで処理されます。一連の取引は段階的にパッケージ化され、それぞれのステージ別に一度に処理されます。一定の閾値を満たせない取引(不十分な手数料など)は、条件を満たした取引がより速く実行されるように、実行キューから迅速に削除されます。

AptosはPoWまたはPoS?

AptosはProof-of-Stake (PoS)コンセンサスアルゴリズムを実装しています。PoSアルゴリズムは、スケーラビリティ重視のコンセンサスシステムとして一般的に好まれています。他のPoSブロックチェーンと同様に、Aptosネットワーク上のバリデーターはブロックチェーンに追加されたデータブロックの整合性を検証しています。バリデータは、悪意のあるデータブロックがチェーンから排除され、ネットワークの安全性が保たれることを保証します。Aptos上でバリデータノードを実行することは基本的に同じプロセスで、少なくとも所定の数のAptosトークンをステークすることです。

しかし、Aptosはこのパラダイムを特別な形へと変化させています。Aptosのノードには、フルノードとライトノードの2種類があり、どちらのノードもデータブロックの検証に参加し、チェーンの安定維持に貢献しますが、いくつかの異なる役割を担っています。

出典: Aptos ホワイトペーパー

フルノードは、比較的重度なコンピューティングタスクを実行することが要求されます。一方ライトノードはメンテナンスの役割を果たし、システムを維持するため、より軽いタスクを実行します。

フルノードはネットワーク取引全体を検証し、ネットワークのステートも確認します。フルノードはネットワークの履歴やデータブロックを切り捨てる機能を持ち、チェーンのメモリから文字列やデータを削除することが可能です。これにより、ブロックのサイズは拡張可能な範囲に保たれます。ブロックが増えるにつれてブロックチェーンが「重く」なることは、スケーラビリティ悪化の主な原因となりますが、Aptosはこのデータシャーディング技術によってこれを解決しています。

重要なのは、切り捨てられたデータは失われず、必要なときにブロックチェーンの残りの部分と同期させることができる点です。より高速で軽量なチェーンを望むユーザーは、切り捨てられたメモリを無視し、軽量でスケーラブルなチェーンで作業することができます。

バッチ取引、並列実行、機敏な合意形成メカニズム、バリデータのシャーディングがAptosの中核を成しています。しかし、以下で述べるその他複数のユニークな機能も、以上の魅力をさらに際立たせます。

Aptosのエコシステム

Aptosのエコシステムはまだ初期段階ですが、すでに多くのプロジェクトから注目され、将来への基盤が整っています。

出典:Coin98

Aptosのユニークな機能

ここでは、Aptosブロックチェーンの驚くべき特徴を紹介します。これらの機能の多くはコアプロトコルと連動していますが、他の機能はより良いユーザー体験と安全性を実現するブロックチェーン上の追加機能です。

マルチアカウントのプライバシーを移動

Aptosは、単一のアカウントでコントロールされた形で、同時に自律的な複数のアカウントを作成し、使用することができます。複数のウォレットはコントロールする元のアカウントにリンクされることはなく、オーナーは単一のコントロールポイントの痕跡を残すことなくアカウントを使用することができます。

Move Prover

スマートコントラクトは高度な計算機能であり、脆弱性を突かれる可能性があります。また、容易に完全な機能不全に陥る可能性があります。最近のスマートコントラクト流出被害の波は、効率的な監査システムがいかに重要であるかを証明しています。

Aptosブロックには、特別な監査システムが内蔵されています。その名が示すように、Move ProverはAptosブロックチェーン上に展開された移動モジュールのチェックを実行し、その信憑性を検証し、モジュールの安全性と実現可能性を証明すると同時に、これらのモジュールが本当に期待通りに機能するかどうかを確認します。

秘密鍵の委譲

何らかの理由で、一時的にでも自分のウォレットを第三者に管理させたいと思ったとき、Aptosブロックチェーンはその柔軟性を提供してくれます。秘密鍵の委任機能により、ウォレットの所有者は自分のウォレットを外部に委任することができます。委任された人はウォレットを十分にコントロールできるようになりますが、この権限は元のウォレット所有者が自由に撤回することができます。

Aptos vs Ethereum vs Solana

Aptosは、最も確立され、最も活発に開発が進むEthereumや、使用されているブロックチェーンの中で最速の1つであると宣伝されているSolanaなど、確立されたレイヤー1ブロックチェーンのリストに加わるポテンシャルを持ちます。では、Aptosはこれらの既存の競合に対しどのような優位性を持っているのでしょうか。

Aptos vs Mysten Lab's Sui

Aptosの最大の競合は既存のブロックチェーンですが、さらに近い競合としてMysten labsのSuiブロックチェーンがあります。Aptosと同じく、Suiは元Metaの創業者がプログラミング言語Moveを使って開発しており、こちらも注目のレイヤー1ブロックチェーンプロジェクトです。また、両プロジェクトとも、スケーラブルで安全な低料金ブロックチェーンという目標を追求するために、それぞれ3億ドル超の資金を調達しています。

この2つのプロジェクトの比較を見てみましょう。

APTトークノミクス

Aptosトークン(APT)は、Aptosブロックチェーンとそのエコシステムを体現するもので、ユーティリティとガバナンストークンとして機能します。

Aptosネットワークのユーティリティ・トークンとして、プラットフォーム上に構築されるプロジェクトは、APTをシステムに統合し、より多くのユーティリティを推進することが期待されます。また、Aptosはブロックチェーンのガス代としても機能し、取引手数料はAPTで請求される予定です。

また、APTは、ネットワーク上のコミュニティ貢献やバリデータのセキュリティサービスのインセンティブとして使用されます。バリデーターとして資産をステークする保有者は、ネットワーク保護の対価としてAPTで報酬を得ることになります。報酬は、APRと保有者がロックしたトークンの数に応じた額に基づいて決定されます。

APTはまた、Aptosブロックチェーンのガバナンストークンでもあります。Aptosの保有者は、改善プロポーザルについて投票できるほか、自身でプロポーザルを提出しコミュニティの決定を問うこともできます。分散型ガバナンスはAptosユーザーに権力を一部移譲することを意味しており、APTはこの目標の舵取りを担っています。

公開されたAPTトークノミクスデータによると、ローンチ時に10億(1,000,000,000)枚のAptosコインが発行されたとのことです。この供給量は、投資家、コミュニティメンバー、プロジェクトチームに配布されます。総供給量は、今後10年間で15億トークン以上に増加すると予想されています。

出典: CoinGecko Aptos(APT)トークノミクス

初期発行された10億トークンの13%はシード及びファンディングラウンドの投資家に配布され、51%はAptosコミュニティーのために確保される予定です。これらのトークンはAptos財団(同様に供給量の16%を受け取っている)が保有し、助成金やコミュニティのインセンティブに使用されるほか、グロース・イニシアティブの資金として使用される予定です。

コアチームはこの供給量の19%を受け取ります。これは1年間権利が確定し、時間の経過とともに徐々に放出される予定です。

出典:CoinGecko Aptos (APT) Tokenomics

APT トークノミクスに関する物議

実はローンチ前、APTのトークノミクスについてのニュースは一切ありませんでした。この可視性の欠如は、コミュニティの懸念を引き起こし、チームはトークノミクスを明らかにすることでそれを鎮めようとしました。結果、82%ものシェアがローンチと同時に既にステークされていた(チームや投資家などインサイダーに割り振られたもので、一部は即Unstakeかつ売却可能)ことが明らかになり、人々を驚かせました。

残念ながら、クリプトツイッターは、トークン供給の49%が投資家、コア貢献者、財団に割り当てられたことにも批判的でした。

Aptosを売買できる取引所

メインネットローンチの直後に、トップクラスの取引所と、2022年10月19日に同時にAPTを上場したBinance、Huobi Global、MEXC、OKX、FTXなど、多くの取引所がAPTを取引用に上場しています。

APTのスタートは不安定で、執筆時のピークである13.73ドルから45%以上下落し、現在(当翻訳記事執筆時点: 10月20日)は7-7.5ドル近辺を推移しています。現在CoinGeckoでは時価総額で56位にランクインしています。

Aptos対応ウォレット

APTコインをどこに保管するかについて考えているでしょうか?APTの安全な保管を行えるいくつかのウォレットを以下でご紹介します。

Pontemウォレット

Pontem Networkは、Aptosブロックチェーン上で最初のDEXと、資産管理のためのウォレットを構築しています。Pontem networkの流動スワップもウォレットアプリケーションに統合される予定です。

Petra App

PetraはAptosコインのためのウォレットを開発しています。Petraウォレットはまだ開発中であり、コア機能はまだ検証されていない。しかし、初期のテスターのためにデモモードが利用可能です。

Martianウォレット

Martian walletは、AptosコインのためのChrome拡張ウォレットで、すでに25万件以上のダウンロードを記録しています。Aptosへのゲートウェイであり、Aptosネットワーク上のWeb3インタラクションのためのデスクトップウォレットとして使用することができます。

Fewchaウォレット

FewchaウォレットはApps Cycloneによって開発されました。iOSユーザー向けに提供されており、Chrome拡張機能としても利用可能です。

MetaMaskは利用可能?

AptosブロックチェーンはEthereum Virtual Machine (EVM)と互換性がないため、MetaMaskウォレットにAptosを追加することはできません。

最終的な感想

分散型アプリケーションを構築・利用するための「頼れる」プラットフォームとなる単一のブロックチェーンを持つには、そのブロックチェーンが一般ユーザーが直面する最も重要な問題を解決する必要があります。現在のブロックチェーンは素晴らしいものですが、完璧とは程遠いものです。絶え間ない課題に直面しても、これらのブロックチェーンの開発者は、Aptosのような新進気鋭の競合に直面しながらも、改善の手を緩めようとはしていません。

Aptosは、これらの問題を一挙に解決する新しいシステムを開発しようとしています。至難の業ではありますが、技術は有望だと言えるでしょう。他のスマートコントラクト・ブロックチェーンとは異なり、Aptosは車輪の再発明をしているわけではありません。既存の技術を高度に改良したものを開発し、セキュリティ、分散化、スケーラビリティを追求する全く新しい方法を導入しているからです。

これらの技術を1つのシステムにパッケージ化したものが、答えかもしれないし、最良のステップかもしれません。いずれにせよ、この分野では正しい方向への一歩と言えるでしょう。Aptosはローンチ前から多くの注目を集めており、その結果、ローンチと同時にユーザーが殺到し、Aptosが約束するスケーラビリティとそのインフラ全体が試されることになった。

比較的印象の悪いローンチのおかげで、ややその信頼性が疑問視されていますが、時間が経過するにつれ予測不可能な技術的/エコシステムの成長が見られるかもしれません。とはいえ、Aptosのシステムはまだ開発途上であり、機能不全や脆弱性が存在する可能性があることを念頭に置くべきでしょう。一般論として、複雑なコンピューティングプロトコルを利用する際には注意が必要であり、投資の前には必ず入念な調査をすべきです。

原文執筆者:Joel Agbo







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